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バルコニーへエスコートされ、二人きりになった途端、思わずため息がでた。


「疲れたかな?…さっきのことは気にしなくていいからね」


気遣うようにカイト様は優しく笑う。星空の下、金髪碧眼の美青年の微笑みはきらきらと眩しいくらいだ。


「でも、やっぱり略奪だと思う方が多いようですね。…理不尽な気もしますが」


やってないのに…。無実の罪だよ。


「ではその一部でも真実にしてはどうですか?」


「…というと?」


「略奪ではないですが、俺との婚約は事実にしてもいいのでは?」


「…何度もそう言って下さいますね。………ずっと聞きたかったのですが、私と結婚することで何かメリットがあるんですか?」


初めて会った時からこの人は私と結婚したいと言っている。それは、嬉しいところでもあるんだけど。

でも何故なのか、理由がわからない。

伯爵であるカイト様と子爵の娘の私とでは、レイ様の言う通り全く釣り合いが取れない。

正直、逆の立場なら私はカイト様に求婚はしないと思う。

なのに、この人は私を妻に望んでくれる。

その理由を知らないと、私はこの結婚を考えることはできない。


カイト様を見つめると、彼もじっと私を見つめ返す。

見つめ合うこと、暫し。

先に動いたのはカイト様だった。


「…ここでする話ではないかな。…部屋に移動しても?」


「わかりました」


頷くとカイト様はにこりと笑ってバルコニーからホールへ戻り、私を自室へとエスコートしてくれた。







カイト様の自室へ入るのは初めてだ。

白色と茶色を基調にした室内にアクセントカラーのような紺色の一面壁が映える。

地味じゃないけど、下品に派手じゃない、素敵な部屋だ。

その部屋の紺色のソファーへ座ると、その横にカイト様も腰を下ろした。


「…俺が君を知ったのは2年前のことなんだ」


2年前。つまり、16才の時か。

………ん?会ったことないよね?


「…お会いしたことは…なかったように思うのですが…」


こんなイケメン見たら覚えてる筈。

でも記憶にないってことは会ってないと思うんだけどな…。


「そうだね。直接会ったのはこの前のヘーゼルの屋敷が初めてだよ」


うん?じゃあ、なんで知ってるの?

顔に出ていたようで、カイト様は続ける。


「…2年前、エマの家の領地に避暑に行ったことがある。その時エマを見た」


「…見ただけですか?」


話しかけたりとかは…?しなかったんだよね?だって私は知らないんだし。でも…なんだろう、違和感があるなぁー。

だって今までの感じからしたら、直ぐに話しかけたりしそうなんだけどな。初対面で求婚したくらい直情的な人なんだし。


「本当はその時に話しかけるつもりだったんだ」


あ、やっぱり。うん、その勢いの良い感じ、カイト様っぽい。


「エマ、2年前商店で姓無しだった子供を庇っただろう?」


「……え!?あの時いらしたんですか!?」


私が姓無しの子供を庇ったのは一度だけだ。あの時の子供は今、我が家の下働きの小僧になっている。

商店で揉めたことは直ぐに家族に伝わり、帰ってから母親にめちゃくちゃ怒られた。

『あの店主は大人しく引き下がってくれたから良かったけれど、そうじゃなかったらどうなっていたか、よく考えなさい』とそれはもう…家族全員が引く程、母親はぶちギレだった。

母親の心配は有難いし、納得もできたけど、そのあと暫く外出禁止令が出されたのには辟易もした。

そんなあんまり思い出したくない出来事なのだけど。


「あのあと、母にとても怒られました。危険なことはしないようにきつく言われて、外出禁止令まで出されました」


「…母君の気持ちもわかるね。でも、その姿を見て、俺は君を好きになった」

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