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17 番外編

番外編なので読み飛ばしてもらっても大丈夫です。

アーモンド伯爵令嬢のエマに対する言動をリリースは冷めた目で眺めていた。

助けに入る程の騒ぎではないし、エマの対応で十分だろう。

エマの鈍感な態度は貴族からすれば図々しくも見える。

空気を読んで嫌味を含んだ物言いで会話する令嬢達からすれば、エマがグイグイ迫ってくるのに辟易するのも無理はない。

アーモンド伯爵令嬢はその辺り、直接エマに言ってもいいと思うが、生粋の伯爵令嬢は一歩ずつ近づくエマに恐怖を感じたのかもしれない。

その割には、いやだからこそ、アーモンド伯爵令嬢はカイトのところまで苦情を言いにいった。想定外だったが、なかなか根性と知恵がある、と変に感心してしまう。

カイトは早々に話を切り上げてエマのところへ向かって行った。ちゃっかりエマの腰に手を回してバルコニーへと消えて行く。

その姿を見てくるりとヘーゼルを振り向いた。


「…もういいのか?」


こくりとヘーゼルに頷く。

もう帰るという意思は見事に伝わっている。


「カイトとエマには言わなくていいか。ハケンに伝えていこう」


再びヘーゼルに頷くと、エスコートされてホールの出口へと進んでいった。

途中よく知らない人間から声をかけられたが、私が喋ることはない。

何故なら箝口令がカイトとヘーゼルからしかれているから。

昔、貴族になったばかりの頃、他の貴族と話して大騒ぎになったからだ。

最初は不便にも思ったが、馴れれば変に気を使うこともなく、愛想笑いもしなくていいから楽なものだ。

ヘーゼルもしくはカイトの後ろでやり過ごすようにしていたら、大人しい深窓の令嬢と評価されるようになった。勿論眠れる赤バラの異名も忘れ去られることなく噂されているけれど。

ヘーゼルの後ろで大人しく口を閉じていると、話が終わったのか再び出口へとエスコートされる。

されるがまま、出口へとたどり着き馬車に乗り込むと漸く喋ることができる。


「あー…疲れた!相変わらず面倒臭いな!」


「…何もしてないだろう」


「あんなとこいるだけで疲れる。…エマは大丈夫かな…」


あの少女は反応が鈍いというか、ぼーっとしているというか…なんというか、暴言に対して怒らなさそうな雰囲気がある。

それが貴族の中では侮られる要因になるだろう。

カイトがいるからそれほど心配は必要ないとは思うが、なんとなく気になる。

うーん、と唸るとヘーゼルが呆れたようにため息をつく。


「人の心配もいいが、自分の心配もするんだな」


「…は?心配することなんてないだろ?もう夜会から帰ってるんだから」


「お前はもう少し男と二人きりだということを覚えておいた方がいい」


「……へ?」


ガタ、と馬車が揺れる。

目の前に座っていたヘーゼルが真横に移動したからだ。


「…おい、何する気だ?」


ギシ、と押し倒されそうになる。

その迫ってくる肩口を両手で押し返しヘーゼルを睨むと、鼻で笑われた。


「…ハッ。勝てると思ってるのか?」


悪役か!

イラッとしながら押し返す手に力を込める。


「ふざけんな」


「別にふざけてはないがな」


押し返す手にヘーゼルの唇が触れる。


「…ひっ…」


思わぬ反撃に手を引こうとするが、がっちりと掴まれていて手は離れない。そこにもう一度キスが落ちる。

柔らかな唇がチュッと小さな音をたてる。


「…っ!?なに…」


何する、と言うつもりの声は途中で途切れる。

あっという間に引き寄せられて、噛みつくように唇にキスされる。


「……んぅっ…」


角度を変えて何度も落とされるキスに何も考えられない。

いつの間にか押し返していた筈の手はしがみつくようにヘーゼルの服を握る。

のし掛かる重さに不服を唱えるつもりでしがみついていた手を離しヘーゼルの胸を叩く。

が、思ったより固い胸板はびくともしなかった。


「…っ、も…」


もういいー!!

苦しい!

バシバシと叩くと漸くヘーゼルは離れていった。


「…ふ、赤いな」


にやりと笑う顔のムカつくこと。

お前のせいでこんなことになってるんだ!

怒りのままに手を振り上げるとバシーンと小気味いい音が響いた。


「この…バカ!」


ジロリと睨むもヘーゼルは余裕綽々に笑うだけだった。

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