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カイト様の用意してくれた、そしてアンナの見立てによるワンピースを着て私はカイト様のいる扉をノックした。


「…どうぞ」


「…失礼致します」


扉を開けてそろりと中に入ると、カイト様は大きな机の前で書類に埋もれながらもにっこりと微笑んでくれた。

1日経ってもやっぱりイッケメーン!


「その服、よく似合ってるね」


「ありがとうございます。沢山ご用意していただいて…」


あ、今なら言える!


「夜会用のドレスもご用意いただきまして…本当に有難いですが、事前にご連絡して欲しかったです」


「……え?何を?」


何を、じゃないわ!この大ボケがぁ!


「夜会があるなんて聞いておりません」


むっとしながら言うと、カイト様は不思議そうに首を傾げた。


「…聞いてない?お父上には連絡してある筈だけど…」


……え?なんだって?


「事前の手紙にも書いたし、お父上からは出席する旨のお返事も貰っているよ」


…え、マジか…!

あんのタヌキ親父め…!

きっと先に話したら私が行かないと言い張ると思って黙っていたに違いない。

父の想像通り、事前に知っていたら、来なかったのに…!

ってことは…


「…あの、父は洋服のことも…?」


「夜会用のドレスはご用意すると伝えてあるよ」


はぁー?なんて図々しいの…!泊まるだけじゃなく、洋服まで用意してもらうなんて…!これだから商売人は!『貰えるものは遠慮なく貰う』の精神は商売人としては間違ってないかもしれないけど、うちは確かに貴族といえども端くれの貴族だけども!貴族として、これは図々しい以外の表現はない。きっと母が知っていたら止めていただろうから、これは父の一存だろう。

私の驚愕をよそにカイト様は口を開いた。


「…明日は楽しみだな。エマのドレス姿はきっと美しいだろうね」


にっこりとカイト様は笑う。

あぁ、笑顔が眩しい…!

多分多量のドレスの値段など気にも止めていない。だってその笑顔…。

そんな期待に満ちた顔は止めてほしい。

私、前世より確かに可愛い顔で生まれたと思うけど、それは人よりちょっと可愛いくらいなんだって!

大人気イケメン伯爵の隣じゃ、映えないよー!


「…そろそろ出発しようか。昼食は ヘーゼルの屋敷の庭でピクニック風に食べる予定なんだ。その後、話題のカフェに行くつもりなんだけど、それでいいかな?」


「…お任せします」


 予定については特に異論もないので頷いた。

 うん、流されてるー!







カフェのお土産を差し出すとアンナは嬉しそうに笑った。

 今日はリリース様達と最近流行りのカフェに行ったのだ。


「いいの!?えー、嬉しい!」


素直にお土産を受け取りアンナはいそいそとお茶を用意し始めた。

夕飯前なんだけど…。まぁ、お腹も空いてるし、いいかな!


「ねぇねぇ、赤バラ様ってどんな方だった?やっぱり素敵?」


「リリース様?……えっと…とっても男らしい方かな。うん、素敵な方よ」


リリース様を思い出して答えると、耳元で声がした。


「それは俺よりもかな?」


「!?えっ?」


驚いて振り向いたが、声の主、カイト様はいない。

アンナにも声は聞こえたのか、ちゃっかりお茶の用意を整えて席についていた彼女は、思わず立ち上がった。


「申し訳ございません!」


「あぁ、アンナはエマとは幼なじみなんだろう?この場は幼なじみとしての立場を優先して構わないよ」


メイドとしてはあるまじき行動と態度のアンナをカイト様は不問にするらしい。まぁ、私も今さらアンナにメイドらしく敬語なんて使ってほしくないから調度いいんだけど。

っていうか、普通に話してるけど、この現象は普通のことなの?

どこから喋ってるの?気になるんですけど…?


「エマ、クローゼットの横の鏡面台の引出しを開けて。…中に青い宝石のついた首飾りがあるだろう?」


言われた通り引出しの中には綺麗な青い宝石のついた首飾りがある。

高そうだなぁ…

因みに引出しの中にはそれ以外にも沢山宝飾品がある。


「それが通信機になるんだ。魔力で作ったものだけど、肌身離さず持っていて」


えっ!?それ、通信機っていうか、盗聴機じゃない?

勝手に内容聞かれてるんだよね…?

えぇ……怖いんだけど…。


「…これはカイト様の意思だけで通信できるのですか?」


「うん、そうだね」


そうだね、じゃないわ!束縛くんか!


「お断り致します」


「えっ?」


「勝手に話を聞かれるのは不愉快です。私には言論の自由もありますし、カイト様に聞かれたくない話だってする時もあります。通信機なら聞かれたくない時はシャットアウトできるのですよね?できない場合は所持致しません」


電源オフだ!

電話みたいに相手の同意がなくちゃ使えないものでないと困る。

断固とした口調で言うとカイト様は首飾りの向こうで笑った。


「…確かにその通りだね。それじゃ、要望通りに改良するよ。後で持ってきてくれるかな?」


「わかりました。宜しくお願い致します」


首飾りは夕飯時に持っていき、直接手渡した。

その場であっという間に改良された首飾りのおかげで難を逃れることを私はまだ知らなかった。

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