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荷物の整理をしながら事情を、勿論リリース様とヘーゼル様がお付き合いされているのはふせて、説明するとアンナはふぅーん、とつまらなそうに声をあげた。


「なーんだ。略奪したわけじゃないのね。…ゴシップじゃないなんて…つっまんないわぁ…」


「でも、やっぱりそう見えるよね……あぁ……困ったなぁ…」


ふぅ、と深いため息をつくとアンナはカラカラと笑った。


「御愁傷様。まー、せいぜい旦那様に守ってもらったら?」


「………守る?」


守られるようなこと、ある?

そんな恐ろしい事件の前触れじゃあるまいし…


「そりゃ、男の甲斐性でしょ?あんた、これからありもしない噂流されるわよー」


「え?そうなの…?」


「そうよ。王都の女はゴシップが好きなのよ。貴族の華やかな笑顔の裏でドロドロの愛憎劇………しびれるわぁ…!」


……面白がってるじゃん。

っていうか


「…なんでそんな事知ってるの…?」


アンナ貴族じゃないよね。

ただのメイドなのに…。


「だって、あたしゴシップ好きなんだもん。…あ、そうだ。あんた、あたしの事バラさないでよね。あたし、王都で洗練された女になって金持ちと結婚するんだから!邪魔したら承知しないわよ」


「…えぇ?なにそれ…?」


ありがちな野望だなぁ…


「まー、その分ここにいる間は協力するから。…明後日の夜会、一緒に参加するんでしょ?」


………ん?

 明後日?なんだって?

やかい…ヤカイ…夜、会…?


「……なんのこと?」


眉間に皺が寄っているのが自分でもわかる。不信な顔をしているだろう私にアンナは首を傾げた。


「……は?あんたこそなに言ってんの?…だって明後日、ここで夜会があるから来たんでしょ?」


「…………聞いてないけど…。夜会って…パーティーの?」


「そりゃ、夜会パーティーでしょ。…聞いてないの?」


アンナは気の毒そうな視線を寄越す。こくりと頷くと、アンナは嫌そうな顔をしてみせた。


「旦那様に聞いてないのね?……ないわぁ…なんて駄目な男…」


「あ、でも…その前に私が帰るなら関係ないよね」


「え?帰んないでしょ?だって私、あんたは暫くここに滞在するって聞いてるわよ?それで執事長にも確認したら『暫くというのは、多分短くて一週間、長くて1ヶ月以上』だって聞いたもん」


えぇぇぇぇ?

いや、確かに暫く滞在して構わないとは言われたけど…

でもそれはこっちの都合でいつ帰ってもいい、って意味じゃないの?

何で一週間はいることになってるの?

っていうか、じゃあ、夜会出るの?

なんの準備もしてないけど…?

あ、夜会用のパーティードレスも持ってきてない…


「……大丈夫?……あたしもう一回聞いてこようか?」


フリーズした私を覗き込み、アンナは首を傾げた。

…なんか昔を思い出すなぁ…

アンナって確かにいじめっ子だし、言葉キツいし怖いんだけど、でもお人好しでお節介なとこ、あるんだよなぁー…

だから憎めないというか…いじめっ子の割りに人望があったんだよね…


「…アンナ、変わらないねぇ…」


しみじみと呟くとアンナは嫌そうに顔をしかめた。


「あんた、人の話聞いてた?…その答えがズレてるところ、あんたも変わってないわよ。それで、どうするの?あたし聞いてきた方がいい?」


「…ううん、自分で聞く」


言いたいこともあるし。

そういつまでも黙って言うこと聞いてなんていないんだから!


「わかった。じゃあ、そろそろご飯の準備もできてるだろうし、行きましょ。ダイニングまで案内するわ」


アンナは扉を開けて顎で廊下を示す。

…よし!絶対文句言ってやる!






ダイニングにつくと、カイト様は既に席について待っていた。

伯爵を待たせるなんて失礼なことをしちゃったと思うけど、それとこれとは話が別。

きっちり文句は聞いてもらわないと。


「…カイト様!お話が…」


「アンデルセン子爵令嬢様、お席はこちらでございます」


え?食い込んでくるじゃん…

私の話をぶった切ったのは、執事のハケンさんだ。

いや、椅子引いて待っててくれてるけど…その前に私は言いたいことが…


「その前に…」


「お座り下さいませ。夕食の準備は整っております」


……圧がすごいな…

またしても私の言葉を遮り、ハケンさんは椅子を示す。

出鼻、完全に挫かれた…

渋々椅子に座ると、好好爺はベルを鳴らす。

その音を合図に食事が運ばれ始めた。





夕食はフルコースだった…。

結婚式か!ってくらい豪華なヤツだった…。

田舎で育ってきた私の家の夕食は平民のものとほぼ変わらない。

フルコースなんて食べたのは、前世で結婚式に参列した時くらい。

正直………めっちゃ美味しかった。

美味しくて一口食べたら、文句もぶっ飛んだ。

完食しちゃってお腹一杯だ!


そう、結局文句は言えなかった。

あの美味しい料理を前に、文句なんて…!出てこない!


料理を完食し、流れるままにあてがわれた客室に案内され、シャワーを浴びたら、あとはもう…ベッドにダイブ一択でしょう!


私はその夜、満腹で気分良くそうそうに瞼を下ろしたのだった。

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