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レーニン伯爵邸からそれほど離れていない場所にモーガン伯爵邸はある。

本宅はもっと郊外にあるらしいので、ここは王都にある別邸ということになるらしい。

主に歴代の伯爵が王都で仕事をする為に使う屋敷とのことだ。

王都に別邸て…どんだけだよ。

やっぱり伯爵ともなれば、それだけ責任も重いけど収入も多いんだな。

大体別邸なのに我が家よりでかい。

モーガン伯爵、改めカイト様は長い廊下でくるりと振り返った。


「今日は急にすまない。疲れただろう?」


「そうですね。でも楽しかったです」


リリース様とも少しは仲良くなれたような気がする。

明日の予定もリリース様が王都で話題のカフェを案内してくれると約束してくれた。

最初予定が決まっていないと話した時には物凄く驚かれたけれど。

まぁ、私もカイト様が少しくらい考えてくれていると思っていたけれど、全くそんなことはなかったことに若干呆れた。

王都観光の名目で誘ったんじゃないんかい!と心の中で突っ込んだことは秘密だ。


「客室はこちらでございます。旦那様、アンデルセン子爵令嬢様にはメイドのアンナをお付けする予定ですが宜しいですか?」


カイト様より先立って案内してくれたこの別邸の執事長、ハケンは扉の前で立ち止まり、カイト様と私に尋ねる。

カイト様は執事長の白髪の老人を信用しているらしくこくりと頷いた。


「ハケンが決めたのなら文句はないよ」


「畏まりました。…アンデルセン子爵令嬢様、お部屋にメイドのアンナというものがおります。ご用の際には遠慮なくお申し付け下さいませ」


「お心遣いに感謝致します。宜しくお願い致します」


この温厚そうな好好爺はにっこりと笑うと重そうな扉を開けた。




部屋の中はレーニン伯爵邸の客室に負けず劣らず広い。

香を炊いていてくれたようで柔らかく落ち着く匂いがする。

部屋は可愛らしい小花柄の調度品が設えられた内装だ。


「…素敵なお部屋ですね」


「ありがとう。メイド達が頑張ったようだね。…あぁ、アンナ。ご苦労様」


中で待っているとの言葉通り、部屋には一人のメイドが控えている。

彼女がアンナなのだろう。

栗毛の長い髪をひっつめて黒淵の眼鏡をかけている。

彼女、アンナは深々と一礼した。


「おかえりなさいませ、旦那様。そして、アンデルセン子爵令嬢様。本日からお世話係を拝命しました、アンナでございます」


「宜しくお願い致します。エマ・アンデルセンと申します」


「存じ上げております。お食事はお召し上がりになりますか?」


おぅ……愛想ない感じですね…

見た目の雰囲気とも合わさって、ちょっと怖いんですが…


「あぁ、食事はダイニングで一緒に頂くつもりだよ。…構わないかな?」


「あ、はい。では、そうさせて頂きます」


食事については考えてなかったけど、カイト様が一緒にというならそれで良しとしよう。

あぁー、ご飯って聞いたらお腹空いてきた…!

何が出てくるのかなー?楽しみだなー!


「畏まりました。それでは食事の前にお荷物の整理をお手伝い致します

。…殿方にはご退出をお願い致します」


アンナさんはそういってカイト様と執事を部屋から追い出した。

パタンと扉を閉めてくるりと振り返った。


「…ねぇ、どうやってあの方、落としたの?」


……え?急に態度違いすぎない?

眼鏡がギラギラ光って見えるんだけど……怖…。


「ちょっと聞いてる?…相変わらずボケーっとしてんのね」


いや、辛辣じゃない?

初対面の人に向かってそんな事言う?

……あれ?今『相変わらず』って言った?

んん?


「…あの、以前にお会いしていましたか?」


「はぁぁー?!覚えてないの?失礼すぎない?」


「……全く記憶にないんですが…」


会った事ないと思う…んだけど…


「ありえない!私よ!アンナ・ハロッズ!あんたと同郷で小さい頃一緒に遊んだことあるでしょ!」


「……アンナ・ハロッズ…?え?あのいじめっ子だった…?あのアンナ…?」


アンナ・ハロッズは覚えてる。

そう確かに同郷の、幼なじみと呼べなくもない少女だった。

…いじめっ子だったけど…

一緒に遊んだっていうか…いじめられたっていうか…


「いっ、いじめてなんかないわよ!…ちょっと…おもちゃ取り上げたり、ボール当てたりしたことはあったけど…」


いじめっ子じゃん。

あ、思い出してきた。

確かダンと同い年で、何度か一緒に遊んだことがあった気がする。

小さい頃だったから2才の差は大きくて、おもちゃを取られたり、叩かれたり、押されたり…

あの傍若無人なアンナ…

確かに栗毛だったし、声もこんな感じだったけど…


「眼鏡、いつかけたの?目、悪かった?っていうか、なんか顔も違う気が…」


もっと丸い感じじゃなかった?


「あんたのそういうとこが嫌いなのよ!痩せたの!ダイエットしたのよ!」


「あ、そうよね。だって昔はもっと太ってたもの」


「うるさいわ!…もう、なんなのよ!なんであんたがここの旦那様に求婚されてるの?!赤バラのリリース様と婚約予定だったんじゃないわけ?略奪したの!?」


おお…このマシンガントーク、覚えてる。

そうだ、アンナってこういう感じだった。

歯に衣着せぬ物言いでズバズバ言うから怖いんだよね…

でも話すと長いし…まずは荷物の整理して落ち着きたい。


「えっと……取り敢えず、荷物の整理してもいい?」


「あんた、あたしの話聞いてた?!説明しなさいよぉ!?」


ガクガクと揺すられて、あぁ、やっぱりアンナは変わってないと思った…。

作品を評価して頂いた方、ブックマークして頂いた方、ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます!評価平均が5になっていて嬉しかったので、調子に乗ってもう一話投稿しました!今後も読んでもらえると嬉しいです!

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