1
お手柔らかに見て頂けますと幸いです。
漫画かアニメで見た金髪碧眼の美男子が跪いている。
さながら、物語の求婚シーンだ。
「…美しい人。結婚して下さい」
…………なんて…?
「………いや、おかしいよね…?」
私の呆然とした声は彼に届いたのか、そうでないのか…
バターンと、頭の上で音がして私は気を失った。
タンバリン王国。
緑豊かな剣と魔法が当たり前にあるこの国に、私は転生した。
……流行ってたから。
なんか皆、転生して楽しそうな人生送ってそうだったから。
私こと、斎藤恵麻は享年30歳。
死んだら転生できるとか、全く思ってませんでしたが、何故か転生できました。
…あれ?
でも、姿形が違うから転生でなくて生まれ変わり?
意識としては斎藤恵麻だけど、今はエマ・アンデルセン。
このタンバリン王国の成金貴族の娘の私は、桃色の髪にエメラルドグリーンの瞳の、自分で言っちゃうのもなんだけど、まぁまぁ可愛い少女。
ついでに歳は18歳!
若い!ビバ肌艶!
この国では結婚適齢期を迎え始めた、今夜漸く貴族社会にデビューした小娘である。
そう、この小娘の私、今夜求婚されました。
相手は27歳のあの金髪碧眼の美男子、宮廷魔術師のカイト・モーガン様。
モーガン家とは代々宮廷魔術師を勤める由緒正しい家系で、私のような成金貴族とは本来喋ることもない。
そのモーガン家の家督を既に継いだカイト伯爵様は夢のお告げで言われたそう。
『…今夜現れる桃色の髪の乙女が、そなたの生涯の伴侶となろう』
………お告げて…。
しかもピンクの髪の女の子、他にもいるし。
そんなんで決めていいのか?
が、カイト・モーガン様は少々空気が読めないらしい。
求婚された私の直ぐ後ろには彼の婚約者候補の筆頭令嬢、リリース・マグダリアン様がいらっしゃる。
…そんな状況で求婚て…。
私の、この成金貴族のポッと出てきた小娘に、リリース様の目の前で求婚て……。
あな、おそろしや…。
と、冷静になって考えても恐怖が押し寄せてくる。
幸か不幸か、求婚された直後、私はリリース様の持っていたお盆が脳天を直撃し、気を失うことができた。
お盆直撃で気を失える貴族クオリティ。
…まぁ、貴族だから。前世?とは違ってお嬢様の私だから。
そんな私は今夜のパーティーの主催者であるレーニン伯爵邸の客室で、ベッドに横になり、迎えを待っているという状況なのだった。
お読み頂きありがとうございました!