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21話 朝の教室

「――それで母ちゃん最初、俺が隆平に何かしたんじゃないかと思ってて、すっげぇ機嫌悪くなってんの」

 朝の教室で、圭太は昨晩の出来事について愚痴をこぼした。


 昨晩、自宅に隆平の母親から電話がかかってきた。受けたのは圭太の母だった。

 事情もわからないうちから「お宅の息子を二度とうちの隆平に近づけないでください」などとまくし立てられ、圭太の母は混乱したという。

 とにかく相手の剣幕から推し量るに、自分の息子が何か無礼をはたらいたのだろう。そう判断した母から、圭太は厳しく追及されたのだった。

 ありのままを話し、最後には母も納得してくれたが、圭太自身は釈然としなかった。友人を訪ねただけで、どうしてここまで責められなければならないのか。


「俺んちにも電話あったよ」

 祥吾がさらりと言う。


「やっぱりそうか。で、どうなった?」

「お母さんが応じてた」

「違う、その後だよ。やっぱり祥吾の母ちゃんも機嫌悪くなった?」


 祥吾もまた、昨晩の自分のように母親から厳しく当たられたのだろうか。


「いいや、別に」

「え、そうなの?」

「うん、お母さん基本的に怒ったりしない人だし」

「うわあ、くそ羨ましい」

「うちの場合、ちょっとおっとりしすぎな気もするけどね」


「いやいや、俺んちと違って、祥吾は親から信頼されてるんだって」

 いいなあと、圭太は歯ぎしりした。


「そうだ、哲朗の連絡先はわかった?」

 祥吾が話題を変える。


「だめだった」

 圭太は頭を振った。

「とりあえず仲いい先輩たちに訊いてみたけど、やっぱり誰も哲朗とは繋がりないみたい。母ちゃんのほうも、哲朗の親とは付き合いなかったから知らないって」


「そうか……」

「望のほうは?」

「ああ、そっちは大丈夫。すぐに連絡先わかったよ。電話しても出なかったから、メッセしといた。呪いが発動するかもしれないって」

「うん」

「それで、昨日あれから考えてみたんだ」

「哲朗の連絡先を調べるのに?」

「違う、バケモノのことだよ。まずはさ、色々と知るべきだと思うんだ。元凶を知れば、呪いを解くヒントが見つかるかもしれない。あのバケモノは一体なんなんだろう」

「なんだろうって……バケモノはバケモノなんじゃねえの? 違うの?」

「背景を知りたいんだよ。例えば、バケモノはいつからあの土地にいる? どうして棲みついている?」


 疑問を投げかけながら、祥吾にはすでに答えを導き出している気配があった。

「さあ」


 首を傾げ、圭太は続きを促す。

「どうして?」


「バケモノは、ずっと昔からあの土地にいたんじゃないかと思うんだ。ほら、視影が無人になったのは、過去に住民の不審死が続いたからだろう?」

 祥吾は視影が忌み地となった経緯を、圭太から聞き知っている。圭太自身は祖父の口から聞いた。

「不審死の原因は、あのバケモノの呪いだったと考えられないかな」


「え……?」

 圭太は息を呑んだ。一瞬、教室の喧騒が遠のき、周囲が無音に閉ざされたような感覚がした。

「そ、それじゃあ俺たちから奪ってやるっていうあの呪いの言葉は、命を指してるの? 俺たちこれから死ぬの? 命を奪われるの? 視影に住んでいた人たちみたいに?」

 自然と声が大きくなる。近くにいたクラスメイトが、怪訝な顔で圭太を見た。

 慌てて声を落とす。

「バケモノの呪いは、そんなに強力なの?」


「そうかもしれない」

 祥吾が顎を引いた。

「だから急いで呪いを解かないと」

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