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世界が続く  作者: ダンヴィル
異世界へ
5/8

勇者の闘い


カードゲームの後アイちゃんが部屋から出てこないというトラブルが起き、アイちゃんの鉄壁の守りが勝利する形となりアイちゃん抜きでやっと玉座の間に来た。


「嫌に決まってるじゃん。メンドウクサイ」


そこで偉そうでながったるい説明を受けての私の返答はコレ。


名前覚える気が無いから頭の中でデッキ構築を考えていたら「魔王を倒せ」という言葉が耳に入って出た言葉がコレ。

いや、魔王討伐って話は予め聞いてたけど別に魔王討伐をするなんて了承はしてなかったよ?


「貴様!いくら勇者とはいえ無礼なッ!!」

「ちょっとミューズ?気持ちは分かるけどそれは流石に敵作りすぎじゃない?」

「頼むから俺を巻き込まないでくれ……」

「面白くなってきたな」


なんか騎士が怒鳴り、周囲の偉そうな人達もザワザワする中で三人が好き勝手に口にする。


達哉は単純に戦える力が無いため。

ベルナドットはミューズの強さを察しており見れるかもという期待から。

エミリーは競技ならともかく暴力という行為そのものをあまり良い物と思っていないため出た言葉。


「大丈夫だよ、私とっても強いもん」


けれど自信に満ち溢れたミューズは意図をあえて無視してウインクしつつそう答えて一歩前に出る。

ミューズ自身むやみやたらに暴力を振るうのは好きではないのだが、今回ミューズは怒っていた。


「そもそも、なんで私達が貴方達に従うと思ったの?

あんな欠陥まみれな召喚魔法陣で呼び出された私達が?」


「何!?」


「何じゃなくて、あんな人の形に化けていればアイスドラゴンのアイちゃんだって呼んじゃう魔法陣のどの辺が完成されたものなの?

ドラゴンって基本的に縄張り意識強くていきなり呼び出されたら怒るし、自分の縄張りが見つからないってなったらたぶんこの城を自分の縄張りにするよ?

良いの?城乗っ取られても?というかもう一室マーキング終えて好き勝手にしちゃってるじゃん」



この場にカルラが居ない理由は正にそれ。

一室どころか廊下まで氷に覆われてしまい生半可な力を持つ生き物では氷に触れただけで一瞬で氷付いてしまう。

既に被害者も出ていて誰も近付けない状態になっている。

カルラがそんな事してる理由は邪魔されずサモンモンスターのアニメや試合を見ていたいからであって、サモンモンスターの話題で盛り上がれ、友達であるミューズとエミリーは例外的に氷の影響を受けない調整となっている。


呼び出されたのは朝だったのに一度流す事になって日が沈む少し前にようやく開いた結果が今なのだけれど、既にアイちゃんがこんな大問題を起こしてるのに私達が素直に従うと本気で思っているの?


「それにアイちゃんはまだ優しいでしょ。

人種なんて小石程度にしか思わないけど、気に入った人は話し相手くらいとしてなら認識してくれる。

だからまだまだマシだって。

なんせあの魔方陣、種族どころか実力の許容量すら無視で人格だって無視じゃん。

仮にドラゴンすら簡単に殺す英雄なんて言われてる人を召喚できたとして、実はその英雄がとんでもない快楽殺人鬼な人だったとか、そんなの呼んじゃったらどうする気なの?」


「黙れ黙れ!神より授かった神聖な魔方陣を侮辱するなど、いくら勇者とは言え最早許せん!」


私が丁寧に説明している中でも合いの手のように「黙れ!」とか言っていた騎士の人。


その騎士が私の知覚できる速度を越えて瞬時に間合いを縮めた事に驚いたけど、どうやらそういう技ってだけみたい。

魔法じゃなくて技でも転移が可能なのかと関心する。

だって振るう剣は本人からしたら全力なんだろうけど、とびっきりゆっくりだから根本からポッキリ折ってあげた。


「……!?ッ!?」


「それと、皆に掛けられてる呪いはとっくに解除したから。

戦わなければ死ねとか言い出しても無駄だよ?」


「ちょっとミューズ、私とミューズは強いかもしれないけど二人は分からないからこれ以上刺激しない方が良いでしょ」


「大丈夫、その時はこの国が滅びる時だってこの場で教えるつもりだから。

というより私、今物凄く怒っているんだよね」


「怒ってるってなんで?」


「ん~……根本的な原因はコイツらだけど、今怒ってる原因はエミリーのせいかな~」


「え……何で?」


「一瞬でも私がエミリーを妹か娘のように思ってしまったから。

そして、エミリーが努力する素敵な人だから」


正確には、私の恩人であるメリル様の孫娘、世界的芸術家であるルネちゃんとエミリーを重ねてしまったから。

その熱といい、将来への大きすぎる夢。

文字通り一晩中接してどれだけ本気か理解した。

私は努力する人が好きだ。

漠然とした夢でなく、具体的な目標を掲げ、嬉々として大きすぎる壁に挑み続ける人の魂の輝きが大好きだ。


「そんなエミリーの夢を人拐いなんて方法で奪った。

私は滅多な事では怒らないけどこの時点でかなり気に食わなかったんだよね。

それで自分達が仕出かした事を理解して申し訳ないって態度を取ったなら甘い私の事だからエミリーが怒らない限りは許したと思う。

けど、今こうやって理由を話しても……特にそこのお前は全く理解できていないようだね」


私は自分の親指に歯を突き刺し、出た血に魔力を込める。

禍々しい魔力を纏った血は王からそれなりに近い位置に居た小太りの男へ矢のように放たれ付着し、その男は呪われる。


「魂が濁りきっているお前には自分の本音しか口にできない呪いをかけてあげたから泣いて喜べよ?

さ、今のは個人的に1番気に入らない奴に呪いをかけただけで見せしめとは言えない。

とりあえず……」


手を鳴らすと同時に轟音が響き渡る。

自分で言葉を発しているのは分かるけど、あまりの威力で自分の言葉すら聞こえない。


人は殺してないよ。殺しちゃ意味無い。証人は多い方が良い。

だから結界を貼って範囲内の人達を外に転移してから落雷を落とした。


「はい、城を囲う大きな壁を消し飛ばしました~。

もし何か仕出かしたら今度は直接城にぶち当てるから覚悟してね~」


なにしろ私を怒らせたのだから。


さっき私が怒るのは珍しいって言ったけれどそれには理由があって、私は基本的に怒るよりも先に興味を失う事の方が先に来るタイプだから。

だから自分が何かされたから怒るって事がまず無い。

その状態にさせた本人が何かしてこなければ何もしない。

逆に何かしてくるなら小石を蹴飛ばす感覚でぶちのめす。

だって本当に興味無いんだもん。

例えるなら血を吸った訳でもない蚊を潰すのと似た感覚かな?


「それで私の要求だけど、普通に町で暮らしてモンスター専門の傭兵の真似事したり冒険しながら自由気ままに暮らしてるから余計な手出ししたり命令してくるな。

魔王がどうのって話は……まあ私達にとっても邪魔なら手伝ってあげるよ。

暮らしている国が無くなると不自由だからね」


殺気も込めながら語り終え、誰も話さない。

ちょっと強めに殺気を込めすぎたのか怯えている様子だね。

何度も言うけど私を怒らせたお前らが悪い。


「あの、ミューズ?」


「何?」


「怒ってくれているところ悪いけど私、帰ろうと思えば帰れるよ?」


「………え?」


「あのね、魔界トレインは別に繋がってる世界だけじゃなくてケータイ持ってればプロゲーマーなら魔界への個人情報登録が義務付けられるから何処にいるかって魔界神様に筒抜けなんだよね。

それで、4年に一度行われる魔界に繋がる全世界を集めた大きな競技大会があるんだけど、それを邪魔するっていうのは魔界に喧嘩売る行為で、国だけで済めば良いけど世界そのものが滅亡まで追い込まれる可能性もあってね、つまり……

まあ細かいことは置いといて私はその大会の出場をかけたトーナメントに参加する事が決まってるから魔界神様の保護下にあるから大丈夫なんだよ。

それに、今朝一緒に生放送開いたでしょ?

魔界と繋げる事ができなければそんな事できないんじゃない?」


「………それって私の怒り損?」


「そうなるね」


「えっ?ちょっと待って、本当に帰れるの?」


「私はね。魔界殿に連絡取ればいつでも迎えに来てくれると思うよ?

来年の半年後にはその大会あるから魔界もそう言った雰囲気で固まってるし、私は出場者な訳で尚更……ッ!?

サモン!シルヴィアッ!!!」


エミリーの魔力が膨張しシルヴィアが召喚され即座にドーム状のマテリアルミラーが展開される。

その次の瞬間、玉座の間の壁が巨大な爪に破壊され冷気に包まれる。


「お~い、ミュ~ズ~。そんなに怒ってどうしたのかぇ~?」


破壊された壁の周囲は完全に凍り付き、急激に寒くなった事によりできた白い霧の中から姿を表したのはドラゴニュートの姿をしたカルラだ。

もちろん先程の巨大な爪は彼女の爪である。


「確かに最短かもしれないけど壊すこと無いじゃん……なんか凄い格好してるね」


「ふふん!妾の鱗を売って買った魔界のトレンドじゃ!

サモンモンスターを嗜む者としては当然であろう」


「まあ、色合いは落ち着いた感じだしアイちゃん美人だから似合ってるけど」


「他にもマイデッキにマイフィールドも揃えたぞ」


「カルラさん押しキャラは?」


「鳳凰院じゃ!」


「渋い!でもソコが良い!ちなみに私はザンギきゅんです!

それじゃリアリティープロゲーマーは?」


「レオンハルトじゃな!」


「レオンハルトですか!『君は覚えているか?本来モンスターは、僕らの手に収まる存在ではない……』」


「それ!正にそれじゃ!

あれは実に心くすぐられるセリフであった!」


「レオンハルト程ソウルカードの本質を理解してる人いませんよね。

レジェンドクラスとマスタークラスを行ったり来たりしてるのは気分でコロコロデッキ替えるからココゾという所で自分の力を出ないからなんだけど、それでもモンスターの最大限のポテンシャル以上を引き出してるから安定して強い。

そここそが基本にして最強の一角と言われる所以」


レジェンドが一番高い実力者の大会、マスターはその1つ下。


「うむ、全てのリアリティープレイヤーが方向性を見失った頃に思い出すべき相手であり」

「ストップ!とりあえず氷広げるの止めよっか?」


馬鹿みたいに雑談していても誰も止めなかった理由はただ1つ。

文字通りそれどころではなかったから。

話している間にもカルラを中心として氷が広がっていき、達哉とベルナドットも私達と同じように氷に触れても何とも無かった。

しかしフルプレートの騎士の一人がその氷に足を触れたとたん、足が張り付き下半身が徐々に凍り付いていき動けない状態になり悲鳴を上げようとするが声が出ない。

そこそこ強力な炎の魔法を使われると簡単に脱出される為、同時に喋れなくする呪いを付与されているから。

そんなのが二人、三人と続けば流石に不味いと王を逃がそうと騎士達が動き始め、正に王が部屋から出るだろうタイミングで耳にしてしまう。


「何故じゃ?」


「何故って、ヒューマンには生活しにくいでしょ?」


「ヒューマンなど知らん。勝手に連れてこられたのじゃ。

しかももう家に帰れぬからのう。

代わりにここが妾の縄張りで家じゃ。

じゃから妾が生活しやすいようにするのは当然であろう?

気が向いたら全部凍らせるつもりじゃし、せっかくここまで来たのじゃから凍らせておけば一石二鳥じゃ」


「き……貴様正気か!?」


「それで何で怒っておったのかの?

主が怒る所なんて初めて見たぞ」


「アイちゃん、そっちの人達無視しないであげて」


「んん?……おぉ、すまぬ。あまりにもゴミみたいな魔力で気付かんかった」


ドラゴンは基本自分に何か影響を及ぼすモノ以外には全く関心を持たず、長生きすればするほどそうなってしまう。

指摘されてちゃんと気付けただけカルラはマシと言える。

むしろカルラ程長生きしたドラゴンに絞ってしまえば指摘されて気付けるのは居ないと断言しても問題無いレベルである。

何故なら彼等にとって、ゴミと評価した魔力の持ち主など少し強い風でざわめいてる草木と何ら変わらない。

ただちょっと五月蝿いくらいにしか思えない。


実際攻撃されようがカルラには届かない。

カルラが彼らの側を通るだけで彼らは凍死する。

生きた大災害とまで呼ばれる古代竜の力は伊達ではない。


そんな訳で弱い存在を一々気にするのは余程の物好きであり、カルラはミューズと過ごした時間がそれなりに長いためにドラゴン界隈で物好きの仲間入りしている。


「あ、気付けるなんて思わなかった。

同じ事ストちゃんにしたけどストちゃん気付かなかったし」


「あの小僧と同列視されるとは気にくわん……で?なんて?」


「ふ、ふざけるな!こんな事して貴様正気かと聞いているんだ!?」


「ふむ……」


王の護衛の1人の言葉を聞いたけれど分かってない。

小さな渡り鳥がヒューマンの家の屋根に巣を作るのとそんな変わらない、規模こそ違うが普通の事してるだけで価値観を無理矢理押し付けるような言い方ではカルラは絶対に理解できない。


なのでとりあえず説明してあげた。


「……なるほど、しかし先程も言ったが元々主らヒューマンモドキが自分の都合で妾を連れてきたのだろう?

なら妾もドラゴンとして自分の都合で新たな住みかを作った所で何の問題も無いであろう。

何せ先に喧嘩売ってきたのは主らじゃ。

大義名分さえあれば戦争と言い他人のものを奪うのがヒューマンの国としてのルールなのであろう?」


「間違ってはないな」


タツヤもその発言には同意しベルナドットも同様の様子。

かく言う私もそうなんだけど……


「はぁ、ここで指名手配とかされても面倒臭いし仕方ない。ここは私に任せて」


「お、それ知っておる。それで放送とかできるのであろう?」


カルラの言うように先程も使ってたドローンのように飛ぶカメラを出現させ、一歩前に出てデッキケースからデッキを取り出しそのデッキが赤く光る。


「ほう……」


「サモンモンスターを愛する同志よ。

私がこうして前に立ったからには分かるわよね?」


「あぁ、当然分かるとも。

妾には妾の都合が、お主らにはお主らの都合がある。

そしてどちらも退くことはできない。

ならばそれを築くのはカードの力のみ!ゆくぞ!」


「「セットアップ!サモンフィールドッ!!!」」


掛け声と同時にフィールドが展開される。

サモンフィールドとは創造者が無限に召喚を行わない為の空間である。

呼び出し維持し続けるサモナーと違い、力だけ送ってもらい込めたエネルギーが無くなるまで動き続ける兵を創るのが創造者。

10体も召喚できれば十分なサモナーと違い創造者は何十万と召喚し続ける事が可能であり、サモンモンスターというカードゲームが魔界に知られる前はサモンフィールドを用いたルールはその世界において国を行く末を左右するほど重大な決闘法だった。

何しろ創造者に制約を掛ける事ができるのは同じ創造者だけであり、創造者とは凡人がどれだけ努力しようと絶対になる事のできないジョブだからだ。


今回はそれに当てはまらず一方的に沢山召喚できたのだが、上記の創造者事情は魔界に吸収される前の認識である。

魔界に吸収されてから何千年も後に生まれたエミリーはその事実を知らず、魔界もその真実は秘匿している。

故にサモンフィールドはリアリティールールによりカードゲームを始めるお決まりの掛け声程度の認識であり、掛け声と同時にファールドが展開された。


「古代竜の力を思い知れ!妾の先攻!

サモン!氷結竜の加護巫女レイラ!」


「やはりスタンダードカードに加護を……」


サモンモンスターのリアリティールールの方に参加している大半は創造者である。

ではその大半に含まれない者は何かと問われればカルラのような生物として頂点に君臨するような、世界が違えば神と崇められてもおかしくない存在。

そんな存在が普通のカードに加護を付与し闘う事でゲームとして成立する。

創造者は他者から力を借りてカードを作りバランスの良い構築が可能。

そしてカルラのような者は尖った構築しかできないが、その分自身の持つ純粋な力量で何処までもデタラメな力を発揮する。


「その通り!妾は創造者では無い!

妾は古代竜であり妾の世界においてアイスドラゴン最強の存在!

この妾の加護を受けた下部の力を見るが良い!

加護巫女であるレイラの力に導かれ現れよ!

フリージングフェアリー!

さあ、世界を凍てつかせよ!アイシクルロック!」


「ぐ……っ!?私の手札が……」


妖精と巫女が放つ吹雪により手札のカードが白く凍り付く。


「これにより次のターンの終わりまで主は1ターンに1枚しかカードをプレイする事はできん。

つまり罠を設置すればサモンできず、サモンすれば罠を設置できない訳じゃな」


プレイとは、手札のカードを使う事を言う。

カードを使う為のコストや、カードの効果により手札のカードを消費するのはプレイには含まれない。


「つまりこのターンもプレイすれば実質2回できるって事か」


「な……まさか!」


「サモン!ヴァルキリーナイツ・シルヴィア!」


現れたのは体の機械が一切無くなり、3対3の天使の羽を持ち神秘的な鎧を身に纏うシルヴィアの姿。


「くっ……初手に切り札を握るとは……」


「ふ~ん、その様子じゃ知ってるのか。それは光栄だね。

知っての通り天使へと化したシルヴィアはコストを支払う事で相手ターンにもサモン可能!

さあ行くよ!リターンフィール!」


シルヴィアの合わせた手から放たれる聖なる光に全てが飲み込まれる。

そして、光が収まるとそこには元の機械仕掛けの体をしたシルヴィアが剣を地に突き刺し杖のようにして立っている。


「……そう上手く行かない訳か。流石ドラゴンとしか言えないね。初心者と甘く見てたら負けちゃうかもよシルヴィア」


そのシルヴィアの目の前には巨大な氷のドラゴン。


「レイラの効果によりレイラ自身と妾の場にいる他のモンスターを退却させる事により氷結竜クレイドルをサモンさせてもらった。

こやつは場にいる限り他のカード効果を一切受けん。

妾のターンだというのに緊急防御体制にさせられるとは……

しかしリターンフィールによってシルヴィア以外の全てをデッキに戻されるのと比べたらマシじゃのう。

それに、主はヴァルキリーナイツとしてシルヴィアを出すのに手札を二枚も犠牲にした!

そこからどう来るか見させてもらおう!

カードを二枚設置しターン終了じゃ!」


「確かに、状況は全然良くない。

けれどシルヴィアがいる限り私に敗北の2文字は無い!

私のターン!ドローッ!!!

この瞬間、シルヴィアの能力が発動する!

ウェポンコーリング!」


浮かびあがってシルヴィアを中心に複数の輪郭のぶれる半透明で光る武器が高速で回り、その1つ。

ゴツイ大砲がシルヴィアの左腕に収まる。

これは正確にはシルヴィアの能力というよりマテリアルナイツ全てが共通して持つ能力。


「マテリアルキャノンAーⅡX!!!」


「無駄じゃ!いくら巨大なキャノン砲だとしても我が氷結竜クレイドルは退却することはできん!」


「そうなんだ。でも、1つ良いことを教えてあげよう。

サモンモンスターは別にモンスターを破壊するゲームじゃないんだよ?」


「なに……?」


一応カルラはエミリーの試合映像を見ていたが、当然1日で全て見れる訳がなく、いくら自分の部屋の時間を加速させて閉じ籠り、体感として1週間くらいぶっ通しでサモンモンスターに浸っていようがそれは同じ。

むしろアニメの方に浸っていた時間の方が長いのでリアリティーは途中でベルナドットを知ってから彼の方ばかり調べていた。

エミリーの戦闘スタイルを知っていたのは見た範囲だけでもベルナドットがエミリーと七回も試合をしていたから。


「マテリアルキャノンAーⅡXを装備したモンスターは戦闘後強制的に退却してしまうけれど、退却したモンスターの元々の攻撃力とこの戦闘で私の受けるダメージの倍の数値を相手が受ける事になる」


「なんじゃと!?」


現在シルヴィアは天使状態から元のマテリアルナイツの姿へ戻りオーバーヒートを起こしており攻撃力は0となっている。


マテリアルナイツのウェポンカードは共通してモンスターとほぼ同じ効果を持っている。

ウェポンカードの方が効果は強力であり、モンスターの共通効果で好きなウェポンカードを付け替え幅広い戦略が可能となっている。

そしてウェポンカードの方も共通して相手によって無効化されたりした時にリカバリーする効果を持つ。


「その防御力そのまま利用させてもらおう!

ターゲットロックオン!エネルギー充電!マテリアルキャノンAーⅡX射出ッ!!!」


フルチャージが完了したシルヴィア本人より巨大なキャノン砲から放たれた巨大な電撃のレーザーがカルラを呑み込み城に一部を破壊していく。


「おいおい、やり過ぎじゃないか?」


「いいえ、私はまだカルラさんを甘く見ていたみたい。

とても初心者のプレイングじゃないわね……」


「その通り、確かに痛かったがこの程度て妾がやられるとでも?」


その声と共に翼の力で発生させた風で煙を吹き飛ばし姿を表したカルラ。


「悪夢を映す氷結の鏡を発動しておった。

この効果により対象のモンスターは元々守備力分攻撃力が上昇する。

シルヴィアが守りに特化したモンスターで助かったぞ」


「けれど繋いだ絆は決して断ち切る事はできない。

シルヴィアが退却した事によりマテリアルコアⅢを2つ設置される!

サモン!マテリアルナイツロキシー!

友であり最大の好敵手の繋いだ紲を受け、更なる高みへ!

マテリアルコアⅢ2つをロキシーへセッティング!

ロキシー!ウェポンコーリング!!!」


マテリアルコアは粉々に砕け散り、中身の水色のエネルギーがロキシーの体に吸収され魔力量が爆発的に増え、シルヴィアの時のウェポンコーリングとは比べ物にならない存在感を放つ。


「まさかサモンモンスター初心者相手にコレを見せる事になるとは思わなかった。私にコレを使わせた事を誇れ!

コレこそが私のデッキのダブルエースの1人!

マテリアルナイツ・フルアーマードロキシー!!!」


エミリーとしては最強種のドラゴンが本気で興味を持ち勉強していたのだから強いと分かっていた。

それでも知識だけ蓄えた初心者と侮っていた。

しかし悪夢を映す氷結の鏡を発動したタイミングがエミリーのカードを発動させる猶予を与えない程ギリギリにしていた事。

確かにその技術はリアリティールールでは基本だが、これがとても難しい。

それを危なげ無くできてしまったカルラは最早侮る事のできない相手に他ならない。


「っ!?……見事…………だが、主はもうアタックフェイズは終了しておる」


「ええ、そうね。でも、今のロキシーを倒すのは至難よ?」


「ふ、相手が強ければ強いほど燃えるというもの!

この次妾が引くカードがもしこの状況を逆転するカードだとしたら、そう考えるとワクワクするじゃろ!」


「それもレオンハルトのセリフね。

うん、その通りだと思う。

だからこそサモンモンスターは止められない!」


「ゆくぞ!ドローッ!!!」











「完・全・勝・利!」


ビシッとカメラ目線でポーズを決めて立つエミリー、シルヴィア、ロキシー、ヴィオレッタの4人。

ヴィオレッタは完全支援型の能力で使ったマテリアルウェポンを修復したりする。

ダブルエースの二人と違って見た目は地味だが魅力を感じるのに十分であり、ミューズの世界において力は見た目に比例するというルールから考えるとそこそこの強さを持つと伺える。


「ぐぬぬ……できること全部出した上で敗北してしもうた……」


ポーズを取る4人の背後に発生している煙の中から何事もなかったかのように出てくる。

服が多少破けたりしているが時間と共に再生すると知っているので気にしていないようだ。


「いやいや、カルラさんは強かったよ?

アマチュアにしてはだけど」


「ぬう……で、妾は負けた訳じゃが何が望みかの?」


「これ以上氷が広がると面倒臭い事になってやりたい事も満足にできなくなるからさ、頼むからもう広げないで。

住むんじゃなくてあくまでも拠点に使うくらいなら今の広さでも十分でしょ?」


「まあそうじゃな」


「……え?まさか魔王討伐乗り気なの?」


「まさか。私はただこの世界で2人と交流深めつつ旅して契約できそうな子達と契約したりして来年の全世界大会に力を蓄えたいだけだよ。

それで仮にカルラさんがここの人達追い出してさ、カルラさん倒す為の軍隊連れてくるくらいなら正直どうだって良いんだよ。

魔王がどれくらい強いか分からないけど生きた大災害なんて呼ばれる古代竜にアリの群れが勝てるとでも本気で思うの?

1人スタンピードなんて呼ばれる創造者でもこの国1つくらいならどうにだってできると思うよ?

仮に勝てる人種が居たとして、そういう人は個人には属しても国なんかには属さない。ミューズだってそうでしょ」


「あ~……うん、そうだね。

むしろ祖国がアイちゃん討伐するとか言い出したらアイちゃんに味方するね」


うん、言われてみればその通りだ。

そしてこの先言いたい事も分かった。


「つまりアイちゃんに勝てないからって逆恨みで私達に襲い掛かってきたら力を蓄えるどころじゃないって事だね」


「そう言うこと。私だってこれでも人間から進化した種族超人でしかも創造者なんだから人間の軍隊がいくら来ようがどうだってできるけど、国には面子があるからさ、カルラさんよりまだ可能性が有りそうな私に対しての攻撃は止めないだろうし、それじゃやりたい事もできやしない。ほんっっっっと面倒臭い」


冗談を言っているように思えるかもしれないが、本当にエミリーにとって剣と魔法のみの人間の軍隊など面倒臭いという評価のみで敵ではない。

核兵器級の魔法を放てるようになってから文句言ってこい鬱陶しい。


その後なんやかんや面倒な事はあったがカルラが妥協した部分をこの国の王に押し付ける事になった。

飲めないならこの国が凍り付く事になるという言葉が決定打となり細かな調整は今後する事になるが最悪の事態は回避した。


この話の後、カードは出てもカードゲームの試合はきっと出ないです。


今回召喚された勇者での強さの順番は、

エミリーが一番なのだが、エミリーの持つミューズのカードを除いた場合、ミューズとカルラがほぼ同列。

次にエミリー、ベルナドット、達哉の順番であり、ベルナドットはロキシーと同格の剣士であるのでシルヴィアまで出てきたら勝ち目が無い。

逆にロキシーまたはベルナドット1人でこの城を落とす事ができるくらいの強さはある。

達哉は……一般人である。

それも勉強はできるが頭は良くないタイプのオタク気質のある一般人である。


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