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世界が続く  作者: ダンヴィル
異世界へ
4/8

ド田舎世界と田舎世界に都会世界

この作品の重要部分。


無事に自己紹介も終わり別々の部屋に案内された。

貴族待遇だろうか、2~3人寝転がれるほど無駄にでかいベッド、見覚えのない風景が書かれたおっきな絵画、読めない言語で書かれた書物が敷き詰められた棚。

どれをとっても良い物だと素人目でもわかる部屋だね。


「ふぅ……流石にちょっと疲れた」


ベッドに腰掛けやっと一息付けたよ。

予想通りというか、私だけやたら質問される事が多かった。

順位にしたら私が1番、エミリー、ベルナドット、タツヤ、アイちゃんだったかな。

それで質問攻めにされるだけならこんな疲労は感じなかったんだけど……




「こやつが指名手配されとるのは法律を無視したり国家の情勢を乱してでも自分が正しいと思った事をしてきた結果じゃ。

国民どころか騎士ですら英雄として語り草にされ、『赤き断罪の英雄』や『革命の赤き月夜』なんて書籍が出されるくらいじゃぞ」


「何でそんなの持ってるの!?

私そんなのあげた覚え無いんだけど!?」


「いや~、主がくれる小説が面白くての~。

町まで行けば手に入るじゃろ?人種は強き生き物のパーツを武器にしたりするのを知っておったからの、わっちの鱗何枚か売ってそれで沢山買ったのじゃ」


「小説ばかり読んでたら馬鹿になるとか言ってたくせに!」


「面白いものは面白いのじゃから仕方なかろう」




という感じの事があって、心構えしてなかった方向から叩かれると予想以上にダメージ入るね。疲れた。


そんな訳で疲れたし暇だしゴロゴロしながら読みかけの小説読んでたらノックが鳴り響く。


「エミリーちゃんだよね、開いてるから入って良いよ」


「……良く分かったね」


部屋に入ってきたエミリーちゃんはとても驚いたのか何とも言えないような表情をしている。

出会った時も思ったけど髪がボサボサだし目元のクマが目立つ。

美人さんでもとが良いから余計にそう感じるのかも。


「うん、私耳良いから。

エミリーちゃんの心地好い足音はすぐに分かるよ」


心地好いというか、軽いというか、エミリーちゃんの足音はちゃんと運動をして理想的な立ち振舞いを訓練したような感じで綺麗なんだよね。

綺麗を徹底しているからこそ僅な違いというものがハッキリ出て来て私としては逆に聞き分けやすい。

しかしそれよりも……


「どうしたの?いきなり知らない世界に飛ばされて不安……って様子でも無さそうだよね?」


取り敢えず「隣座って」と言ってベッドに座らせる。


「うん。というよりサモンモンスターをメインにしてるリアリティープロゲーマーなら異世界漂流は嗜みだからね。

自分で言うと自画自賛に聞こえるだろうけど、ちゃんとしたスポンサーが付いて、それなりにファンもいてさ、この若さでサモンモンスターでも上から3番目の段位の大会で活躍してるのは私だけで凄いんだよ?

最上位の人達はもう大会の時意外はずっと色んな異世界に行って旅をしてて格好いいよね。中でもハクト様とか凄く格好良くて憧れてこの業界入ってね、ほら、私のオリヴィアも実は天使の部類に入ってね、ハクト様と同じタイプのモンスターを主軸にしてるから良いところは真似しアレンジを加えたりしてみたりして「ストップ!流石に情報量多すぎて入りきらない!」

「あ、うんごめん。そうだよね……」


なんか物凄く早口でまくし立てる。

私が止めるまで物凄く喋っていたのが嘘みたいに「う~ん……」と唸りながら腕組みして考える。


「そうだね、私はアースって世界の生まれなんだけど、そこは当然として、他にも沢山の世界が大都会の魔界って世界に繋がってるのは知っているよね?」


「ごめん、もう既に分からない」


いや、言っている事はなんとなく理解できるけど規模がデカすぎて分かんない。

少なくとも私の世界もセリス様の世界も魔界って世界には繋がって無かった。


「なるほど、つまり魔界に繋がってないド田舎世界か監視対象の危険世界なのか。この世界もそのどちらかみたいだけど……

……あ、ごめん。私だけ勝手に分かってつまらないよね。

えっと……あまり他人にケータイ見せたくないけどミューズ達とは仲良くなりたいし特別だよ」


そう言いペンみたいな鉄の棒を取り出し、その棒のボタンを押すと映像が浮かび上がる。


「ナビ・コロネ、魔界の映像と適当に音楽、説明は私がするからそれにあわせるよう適当に宜しく」


『了解しましたマスター』


映像の中にいきなり現れたオリヴィアとどことなく似たコロネという子が元気良く返事をし、消えたと思えば見たこともない光景が映る。


「魔界は最先端魔導科学世界と呼ばれている超文明世界。

魔界を中心に132に及ぶ世界が魔界トレイン通称『方舟』を通して繋がっていてね、この魔界は全ての世界の技術が集結している物凄い世界だよ。

魔界では一秒ごとに何かしら新たな発見がされている~……なんて本当かどうか私も分からないんだけど、そんな話があるくらいには凄い技術競争が起きていて、同時に娯楽文化も物凄く集結しているんだよ。

私の職業リアリティープロゲーマーというのも言ってしまえば娯楽の1つで、その娯楽でお仕事ができるくらいには技術が進んでいて……」


「……どうしたの?」


急に難しい顔して悩みだしたエミリーに声をかけたけれど反応がない。

悩んだ末、若干嫌そうな魂の揺らぎをみせつつも嫌そうな態度は出さず口にする。


「あの、ミューズの世界にはサーカスって無かった?」


サーカス?……あぁ、なるほどそういう事か。


「うん、あったよ。つまり見せ物になってお金稼いでるのか」


同時に理解する。

似たようなモノだけど全く違うから、いくら伝わりやすいとは言ってもこの例えは嫌って事なのね。

この年齢でしっかりプロ根性あるのは凄いと思う。


「うん……言い方は悪いけどそう言うこと。

でもね、私達はコレに人生の全てをかけている。お互いの技術は当然、度胸、情熱、プライド、その全てをかけて戦っているんだよ。

まだ、私程度じゃそう言われても、何か言い返せるだけの事を成し遂げていないから何も言えないけど、そう言われるのは……少し悔しい……」


「なるほど……うん、分かるよその気持ち。

ルール分かんないけど、映像のこの文字が変化してるのを見るからにこれって数字みたいな物でしょ?

だとしたらコレ、ただ目に見える数字を削りあってるんじゃなくて相手のプライドを砕きあってるって事だよね?」


「え……プロでもないのにそんな表現すぐ出せる人始めてかも……」


「コレでも長生きしてるからね~」


何にでも人生掛ける人は世の中いる。

私は彼等の考えは理解できなくても、彼等の熱は理解できる。


「何より、身内にそういう人がいるのだから尚更分かるよ。

メリル様……私にとってかけがえのない大切な人の孫娘なんだけど、その子がまだ16だった時。

近く……と言ってもとなり町だったんだけど、そこに美術館ができたからって連れていってあげたんだよ。

その時に見た絵画の名前はもう忘れちゃったけれど、その絵画を前にしてその子は涙を流した事を良く覚えている。

その出会いは、その後の普通の人生ってものを全て狂わせるような出会いだったんだと思うよ。

その絵画を見て泣いた子は今では有名な芸術家として名をとどろかせているけれど、それでもその子は足りないって言うんだよ。

どれだけ多くの人が絶賛しようとその子だけが足りないって、ずっと、ずっと……」


「その気持ち……痛いほど良く分かる……」


そう呟いたエミリーは一度大きく息を吸い、1つの決意を込もった瞳を向けた。

この人なら私の夢を大それたものだとか、とにかく馬鹿にしないからと確信したから。


「私はね、魔界に繋がる世界の中では魔界にとってあまり需要の無い世界の出身でね、つまり田舎者なんだ。

それで、魔界にすら繋がってない世界は……その………」


あぁ、ここまで話して自分が相手の機嫌を悪くさせる発言をしようとしている事に気が付いて萎縮してしまったなこれ。

さっきまで喜びのせいで変なテンションになっていたから気付いてなかったんだろうなぁ。


「別に良いよ。確かにこれだけ凄い物作れる世界からしてみたら私の世界はド田舎も良いところだろうし」


「うん……それでね、私はアースで生まれたけど、生まれつきの能力としてイメージ拡大が使えるんだけど、それがこのサモンモンスターっていうカードゲームと凄く相性が良くてね。

このカードゲーム、ただの娯楽と違ってリアリティーだと剣や魔法と同じルールに則って戦う感じの競技になるんだよ。

リアリティーをするのに必要なジョブは創造者って言われてるくらい大会成績上位者は創造者で溢れてる。

創造者はサモナー系統の最上位ジョブでね、一部契約が必要だけど、どんなモノでも呼び出せる。

例え全ての世界に実在しないものでも」


「実在しないものでも?」


「そう!この辺は創造者が錬金術師の上位ジョブと勘違いされる所なんだけど、一見何も無い場所から何かを作り出しているように見えるんだ。

けれど実際は何かしらの形の無い力を呼び出し集め、具現化させるのが創造者の力。

この辺は実態の無い下級聖霊に力を分け与えて戦ってもらうのと似てるけれど、天と地程の技術力の差が出る高等技術なんだよ」


「ふ~ん、そうなのか。それって見せてもらえたりする?」


「勿論。それに、初めからそのつもりだったし。

ミューズ、私に力を貸して」


「ん、良いよ~」


良く分からないけど取り敢えず魔力を垂れ流す。

その魔力だけでなく、ほんの僅かに私の中にある私とは違うもう1つの力が出ていった。

そう感じた次の瞬間にはそれが完成していた。


「ディザスター?」


私が愛用する紫色の刀身を持つ剣、ディザスターが浮いていた。

いつの間にと思い確認するが、収納魔法の中にディザスターは存在し一瞬だけ混乱した。

目の前に浮かぶもう1つのディザスターは光だし、一枚のカードとなって吸い込まれるようにエミリーの手に収まる。


「無効効果に耐性付与に自動回収?うわ、ミューズ強……」


「何々?」


横からカードを覗き見てみると荒々しい赤い獣のような人のシルエットがディザスターを構える姿が描かれていた。

その構えがまんま私の構え方で、こんな禍々しく描かれている事に少しムッとしかけたけれど、もしかして喧嘩する時相相手からしたら私はこう見えるのかもという考えが過り苦笑した。


「えっと、まずこれウェポンカードでモンスターに装備するカードでね、このディザスターを装備してると他のカード効果を受けず、退却する時にこのカードを身代わりにできる。

相手のカード効果の発動に対しこのカードをプライベートゾーンに置く事でそのカード効果を無効にしプライベートゾーンへ送る。

退却じゃなくて送るって所が物凄く強い。

このカードがプライベートゾーンに置かれている状態で『英雄ミューズ』と名称もしくはテキストに記されたカードがフィールドに現れるとこのカードを手札に戻す事ができる。

ただ肝心なのはこのカードを使用するのにどれだけの時間が必要なのかって所なんだけど使ってみないと分からないね。

こういうところがリアリティールールの辛くて楽しい所だよねぇ~」


「ふむふむ、全く分からん」


単語事態は分かるけど全部繋げると全く分かんない!


「まあそうだよね。

一通り見せたけど、私はね、この業界でもっともっと上に行きたいんだ。

だからね、最上位にいる偉大なる先駆者達のように異世界へ出るっていうのは凄くワクワクするんだよ!

さっそくミューズに出会えた訳だし……だから一緒にカードゲームしよ!」


そう言って突如出現した大量のカード。

そのカードを数枚手にとって眺めてみるとどれも綺麗な絵が描かれていた。


「良いけど私カード持ってないしルールも知らないよ?」


「大丈夫!このケータイにデータ化されたスタンダードカードの全種類が12枚ずつあって全て取り出せるしルールはプロの私が手取り足取り教えるから!」


「なら安心だね~。あ~でもそれならちょっと待ってくれない?アイちゃんもこういうの好きそうだし呼んでくる」


「アイちゃん……確かカルラさんだったよね?

カルラさんとも仲良くなりたいし私も一緒に行くよ」


「よし、じゃあ行こ~」





次の日……


「おはエミリー。皆朝早くから生中継見てくれてあんがと~。

二時間ちょっと前に予定入れたばかりの配信なのに来てくれて本当に暇なじゃなかったあんがと~」


訓練所にもなっている城に複数ある中庭の一ヶ所、ちらちらと雪の降るその場所。

空に浮かんでいる魔法具に笑顔で手を振ればその横に浮かぶ映像のエミリーも手を振っている。

手を振るエミリーの姿はやたらと黒い格好をしている。


黒いコートに黒っぽい灰色のシャツ、黒いスカートに黒いブーツ。

唯一黒じゃないのは三角じゃなくてヒラヒラしたネクタイみたいなのだけ。

これが彼女の勝負服であり、昔はただ真っ黒なコートだったけれど成績が認められ同じ物にスポンサーのロゴが入っていた物を何着も支給されたと自慢していたのはミューズの記憶に新しい。


リアリティープロゲーマーとして闘う時の勝負衣装を身に纏い本気で配信を行う姿は正にプロ。

エミリーのプロ根性というか、自分の良さを引き立たせるやり方は少し前までプライベートのエミリーを見ていたミューズからしてみたら信じられない代わり具合だ。


「実は昨日私の意思とは関係なく勇者として異世界に飛ばされたんだよね。

しかも魔界に繋がっていないド田舎もド田舎、超ド田舎世界よ。

そうそう、ダイナミック人拐いにあっちゃったよアハハハハ。

ん?平気だよ?心配してくれてありがとう。

そこへっぽこ言うな!……って、先輩!?

あ……いや……え?あ、うん。大丈夫。元気ですよ。

友達もできたんだよ。

コホン。それで、確かに私は異世界漂流は初だけどさ、やっぱりリアリティープロゲーマーなら嗜みでしょ?

ピンチはチャンス!どんな逆境だろうが逆転へ導くのがリアリティーカードプロゲーマー!

そしてやっぱり私のドローセンスはつよつよ最強だった!

サモン!赤き断罪の英雄ミューズッ!!!」

「うわっと……」


うわ、手筈通りだけど本当に私が召喚された。

というかさっきまで普段着だったのに完全武装の状態になってるよ。

魔剣ディザスターが腰にあるし、羽織ってるのは魔王水晶のローブ。

そして切り札も切り札、私の中の魔王の力をこれでもかって詰め込んで作った破壊の斧ジャガーノートを手に持った状態で呼び出されたよ。


「あれ?なんか装備禍々しいね?

その魔剣ディザスターは知ってるけど斧何?

滅茶苦茶強そうなんだけど」


「強そうとかじゃなく危険な代物なんだけど……

この魔斧はジャガーノートって言ってディザスターなんて可愛く思えるくらい危険な武器なんだよ」


「へ~、なるほど。

おっと、紹介遅れたね!皆!この子はミューズ!

私と同じように勇者召喚で呼ばれてね、楽しい夜を過ごした仲だよ!」


「熱くて興奮冷めやらぬ夜だったねぇ~えへへへへへへ」


エミリーの言い回しの悪さを理解して乗っかったけどこの発言って撮影見てくれてる全員に見られてるって事だよね?

そう考えたら変な笑いが出ちゃったよ。


でも間違っては無いんだよね、してた事はデッキの構築とかサモンモンスターのアニメや試合を見たりして楽しくて熱い夜を過ごしたからさ。


「それでこの配信の趣旨は概ね理解して貰えたんじゃないかな?

だって私はサモンモンスターに力を入れるリアリティープロゲーマー!

だったらもうやる事は1つ!

私達は常に闘いの道を突き進むのみ!

さあミューズ!全力で戦いましょう!

私とミューズ、己のプライド!力!技術!その全てをかけて!」


エミリーの魔法具による幻影魔法で周囲の風景が変化していく。

コロッセオのように囲まれた空間だけれど近代的であり、それはエミリーが何度も闘いの場として足を踏み込んだ魔界大会の場所。

そんな空間が構築される中、エミリーは何処までと真剣に、その魂の存在感を何十倍へと高め闘気を向け宣言する。

それは端からみれば確かに舞台の上で広がる演劇のような娯楽性があると感じながら、遊びであると同時に遊びでないという言葉の意味をミューズは深く理解し噛み締める。


「別に私はプロゲーマーじゃ無いんだけど……」


熱に負けてついポロっと小さく一言呟いてしまう。

気後れした気持ちとは裏腹に興奮して止まない。

だって大会の映像を複数同時に流してもらってその一つ一つの駆け引きとか全部を記憶したけどコレを面白いと思わないならそれは心の病気だと思うよ?

実際アイちゃんハマりすぎて部屋から出ないとか宣言し出したし。

そして、幻影とは言えそんな熱き闘いの場に私は踏み入れている。

これで興奮しない方がおかしい!


「「セットアップ!サモンフィールド!!!」」


こうしてカードゲームという闘いが始まった。

普通ならこんな状況になれば畏縮してしまうものだが、ミューズも意外と目立ちたがりやで派手好きでその場の空気に乗るのが大好きだ。

その中に細かい駆け引きがあれば尚良いのだ。









「悪いけど、このターンで勝負を付けるわ!

白銀の盾に並び立つは金色の剣、暗雲切り裂く閃光よ、その力を体現させよ!ハアアアアアアッ!!!」


エミリーの宣言と同時に魔力共鳴によりその魔力が跳ね上がり、その姿が具現化する。


「サモン!マテリアルナイツ・ロキシー!」


現れたのはオリヴィアと同じ紋章の入った装備をした美しい金の髪を持つ機械の女騎士。

腕を大きく振り、私のフレアドラゴンを指差し宣言した。


「バトル!栄光を切り開く剣技を受けよ!

セイクリッドツインブレイド!」


私の場のフレアドラゴンは戦闘で負けても退却しない。

どんな能力を持つか知らないけど一回の戦闘で無くなるほど私のライフは少なくない。


「迎え撃て!フレアドラゴン!」


フレアドラゴンのブレスにロキシーが呑まれて姿が消える。


「ッ!?グゥ……」


横に飛ぶが一瞬遅かった。

いつの間にか至近距離に飛び込んでいたロキシーの剣が私の横腹に命中し、切れていないのに確かな痛みと魔力の脱力感を感じる。


「フレアドラゴン……」


そしてフレアドラゴンは、退却しプライベートゾーンへ行く時特有の光に包まれ消えた。


「彼女の名はロキシー。オリヴィアと肩を並べていた彼女は守りのオリヴィアとは違い攻めに特化している。

彼女もまたソウルカードでね、その彼女は戦闘を行ったモンスターを強制的に退却させ、その戦闘で本来私が受けるダメージを相手に与える」


ソウルカードとは創造者が他者から契約により力を分けてもらい作ったカード全般を言う。

モンスターとしてなら他の人もソウルカードを使えるが、創造者でないとそこから派生した呪文カード等を創る事ができない。


「なるほどねぇ……しかしフレアドラゴンが退却した事により発動!

くらえ!ドラゴニックバースト!」


巨大な火炎弾が放たれる、相手効果によりドラゴンが退却した時、退却したドラゴンの元々の攻撃力の倍のダメージを相手に与える!


「甘い!」


ロキシーがエミリーの前に出ると、その姿が瞬時にオリヴィアへと変わり、魔力の壁によって火炎弾が弾き返される。


「なっ!」


なんという度胸!どんな効果か分からないけれど効力が発揮されバリアが構築されてから火炎弾がぶつかる瞬間までの時間が0.01秒の誤差すら無い!

その技術は正に圧巻の一言につき、着目すべきはその度胸!

目の前に自分の命を刈り取る火炎弾が猛スピードで接近する中、自身の感覚に身を委ねそんな真似できるだろうか?

この闘いの中で、この瞬間ほど遊びだけれど遊びでないという言葉の重みを理解させられた瞬間があっただろうか?


「っ!コールドブレイク!」


相手の罠の発動を無効にするカードを発動する。

しかし、エミリーが拘った0.01秒にも満たない、正確には0.004秒のギリギリまでバリアを張るのを粘った事が生きる。


「遅い!もうマテリアルミラーは発動し終えドラゴニックバーストを跳ね返した後!

無効にした所でマテリアルミラーの役目は終えている!

手札も罠も存在せず守る事のできないミューズのライフはゼロだ!」


火炎弾が着弾し熱風が吹き荒れる。


「グウゥッ……うわっ!」


その熱風の威力により背後へふっ飛び、数回転がって威力を殺して起き上がる。


「ふぅ……いや~確かにこれはカードゲームでスポーツで競技だよ。

最初に言ってた技術力以前に度胸が試されるってそう言うことね」


昨日から眠らずずっとサモンモンスターで遊んでいて、リアリティールールとスタンダードルールでは全然違うと言う事で朝練と言う名目でさっそく遊んでみたけどこれは面白い。

度胸が大事って言うのは今の試合で決定打となったのが正に度胸だし、その度胸が試される場面が一度や二度じゃないんだよねコレ。


「そうそう、そう言うことなんだよ。

マテリアルミラーの発動タイミングが一秒早かっただけでコールドブレイクによって勝敗はまだまだ分からない所まで行ってたでしょ?

この一秒が本当に長くてね、やり込めばやり込むだけ一秒が永遠のように遠く感じるんだよ。

だからこそ1枚1枚カード効果が発揮されるまでの時間をコンマ単位で把握して自分の感覚を信じて目の前に迫る物理的恐怖にどれだけ立ち向かえるかっていう心の勝負が何より大きいんだ。

だからこそサモンモンスターはリアリティーとスタンダードとでは全く別物って説明した訳」


「う~ん、デッキ構築は良いと思ってたんだけどリアリティー用に見直しが必要になっちゃったね~。

今ので分かったけどリアリティーなら別に効果を無効化しなくても破壊してしまえば無効に出来るよね?」


「モノによるかな。さっきのマテリアルミラーなんかは破壊されれば無効化されるけど、エナジーブラストみたいな弾丸みたいなモノは銃を破壊しても弾が放たれた後じゃ意味無いし……

それよりミューズ凄いね、正直初心者とは思えない強さだったよ」


そうでもなければ生物兵器として産み出される意味なんて無いからな~……


「う~ん……その辺誉められてもあまり嬉しくないんだけど……それでもありがとう」


「何かあったの?」


「う~ん……話したくなったら話すね。

それよりソウルカード強すぎるって」


「そりゃね」


このソウルカード、使用者との絆が強ければ強いほど使用者を勝たせようと試合中に変化したりするし使用者の意思とは別に独断で行動したりする時がある。

そして共通して全てのソウルカードが本体の能力から来ているモノであり、ミューズの全力が反則というか、災害レベルなのと同じようにカードの強さも反則急に強い。

その為試合中カードが変化したりしないスタンダードルールでは禁止カードであり、だからこそ実戦で見てみたいと頼んだは良いものの強すぎたと言うのが素直な感想。


「スタンダードではソウルカードは全部禁止カードだから使ってあげられないのが残念よ」


「うん、途中で効果強すぎてスタンダードでは出しちゃいけないって理解したよ。

というか……ナチュラルに先攻で私の魔剣ディザスターを装備してくるのヒドイ!完全に制圧しにかかってるじゃん!」


「そりゃ~狙える手札の時はするでしょ。

退却されないオリヴィアにディザスター装備すれば完全耐性のオリヴィアが立つって本当に素敵。

でももう少し私もデッキの構築調整しないと。

ミューズとマテリアルナイツは今のところ相性良いけどミューズが大味だし枚数少ないから……」

「おい!なんだこの有り様は!」


私達が訓練所の真ん中でワイワイと話しているとベルナドットが大声で言いながら近付いてくる。

その後ろにはタツヤもいる。


「なんだってただの朝練してたけだよ」


試合が終わった段階で幻影は消えているが、ソウルカードが暴れた影響で地面に一直線の切り跡が残っていたりしている。

創造者が使ったソウルカードは現実に影響を及ぼす事もあるためスタンダードで禁止カードとなる事の後押しをしている。


「エミリー果実水飲む?」


「良いの?あんがと~ふへへへへ」


緊張が切れたのか元のだらしないエミリーに戻りギュッと抱きついてきたので私も頬擦りして返す。

ここまで素直な好意を向けてくれる相手も珍しくて気分が良くなる。

何よりエミリーはヒューマンじゃなくて超人と言われる存在で1000年以上生きるらしいから私も積極的に仲良くなりたいと思うし。


これは昨日聞いた話なんだけど、創造者になる過程で必ず超人にならなくてはならないらしく、ヒューマンが……いや、人間が100年生きてようやくなれるかどうかってのが超人らしくて、エミリーの若さでなるという事は本当に天才なんだと思った。


別に創造者で無くてもリアリティールールをプレイできるけれど、ソウルカードは基本的に創造者しか扱えずデッキが意志を持って答えてくれるのも創造者のみなので世界大会じゃ創造者以外のプロゲーマーは1割くらいしか居ない。

私が同じ事をできるのにも理由があって、創造者は力を借りてカードという形を創り出す。

だから私は元々形のあるスタンダードのカードに力を込めて使用している。ただそれだけの違い。


しかし試合が終わったとたんに腑抜けたなぁ。

いや、こっちのだらしなくて可愛い方が素のエミリーなんだろうけどさ。


「それにしてもやり過ぎだろう?

兵士が怖がって止めてくれと泣きついてきたんだぞ?」


「やってたの完全にカードゲームだったけど地面が焦げ付いてるし……」


「まあ確かにちょっと焦げてるけど別に大した事ないでしょ」


「ちょっと……?」


「なにか問題ある?」


「いえ、ありません……ところでカルラさんは?」


「部屋でサモンモンスターのアニメやリアリティールールの試合を見てるよ。

ミューズも気に入ってくれたようだけどカルラさんのハマり具合はもう底無し沼って感じだったね」


「もうアイちゃんはあのままで良いんじゃない?

その方が平和だろうし」


「そうもいかないだろ?この後王と合うって話なんだから」


「あ~そっか、そんな話だったね。

カードゲーム覚えてアイちゃんからソウルカード貰ったりして実戦でやったりしてたらすっかり忘れてた。

ダイナミック人拐いの主犯に会うのか……あ、放送中だった!

キマシタワーじゃない!来ないから!

と言う訳で今日の放送はこれまで!

ミューズとの試合楽しんでもらえたかな?

新しいウェポンカードの魔剣ディザスターの紹介もできたし今後の私達の成長に期待しててね!

それと皆分かると思うけどそう言った事情で今後のゲーム放送は減るけどゴメンね。

これ見てる人で初見さんはいないだろうけどお約束なので!

私達の試合見て良かったと思ってくれたならチャンネル登録宜しくね!

登録は下記の部分からできるから!

それじゃあ皆、またねー!」


このコロコロと変わるエミリーの振る舞いには心の底から凄いと思った。


息抜きで書いてるしそこまで続くか不明だけど色んな世界を冒険する。

現代だったり未来だったりとか色々。


カードゲームは遊○王がモデルです。

何か召喚する事はあってもカードゲームする事はそんな無いだろうと深く考えてないです。

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