機械が魔法を用いる時代の到来を予想する論考
魔法は生物にしか使えないのか?
私はこの問いを真剣に考えている。
そも魔法とは何であろうか?魔の力を練り上げ構築する術?
魔法の起源ははっきりとは分かっていないが、数万年前の地層から魔力が検出されたことは昨今の研究で明らかとなっている。
人類が闊歩する時代より前に、何らかの存在が魔の力を用いて生活していたのであろう。
実際、古代生物の化石から、魔法を用いた際に残る魔力の痕跡が発見されている。
原始的な魔法は我々人類より先に既に、原始生物が発明していたのであろう。
では、生物が魔法を生み出したのであろうか?
この問いに対する反証は、皆が良く知る遺産が可能性を示してくれる。
自然現象が魔法を生み出す事例は余り知られていないが、確実にある。
かの有名なイラアイラア洞穴に吹く風は、人々の疲れを癒すと言われているが、
精神的に心地良いと言うだけでなく、実際に治癒効果を生み出している。
この現象は、特殊な形をした洞穴に吹く風が治癒魔法の詠唱に類する音を鳴らし、
魔力を豊富に含んだ岩壁が鍵となり、魔法を発動させている。
このことからイラアイラア洞穴は岩のプリーストと呼ばれ親しまれてきた。
魔法が発動していると判明したのは、ある国の調査チームにより近年なされたものである。
既にお察しの方も居られるであろうが、この現象は魔石無くして起こり得ない。
生物が魔法を生み出したか、自然が魔法を生み出したか、この問いを解き明かすには、魔石の起源が鍵を握ると言っても過言ではない。
魔石には大きく分けて2種類ある。
古代の生物の死骸が長い年月をかけ姿を変えた化石魔石、
自然のエネルギーを蓄え形成された自然力魔石、この2つである。
起源として古いのは、自然力魔石であると言うのが通説である。
生物の起源が自然力魔石による偶発的魔法発動によるものであると言う学説もあるほどだ。
昨今の研究から考えるに、魔法の最初の発明者は自然と考えるのが妥当だ。
初めの問いの答えは既に出ているかのように思えるが、私の研究の目指すところは更に先にある。
魔法は生物や自然のみにしか使えないのか?これが本題である。
詰まるところ、私は機械に魔法を習得させたい。
昨今の機械開発の発展は目覚ましいものがある。
特に目を見張るのが、ゴーレムの演算能力の飛躍的向上スピードである。
かつては簡単な術式による命令しかこなせなかったゴーレムであるが、
今や自律型ゴーレムの完成も目前に見えると聞く。
そう、私の目指すところは、スイッチを入れて魔法を発動する魔道具より更に発展した、
魔道具自らが意思を持ち魔法を発動させる自律型ゴーレムの完成だ。
古来より、術者の良きパートナーとして用いられてきたゴーレムであるが、
これからは命令により動くのみに留まらぬ、『強い思考を持ったゴーレム』がより良きパートナーとして親しまれる、そんな時代が来ると信じてやまない。
強い思考を持ったゴーレムは、その演算能力を駆使し、人間より素早い魔法の詠唱を可能とするであろう。
人の脳の処理スピードには限界があるが、ゴーレムは時代を経る毎により処理スピードを増すであろう。
自然・生物に続く新たな魔法の使役者は、機械・ゴーレムであると、私は確信にも似た予想をしている。
これからの時代を担う研究者への期待を込めて、この論考を記し世に広めんとするものである。
○○国○○研究所○○ ○○=○○○○○ ○○○○年○○月○○日