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俺は勇者じゃない。  作者: joblessman
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パーティを組む。

 通常座学、とっかえひっかえの組み合わせによる土ペンダグルス、ガルイーガの実践、3対3、4対4のチーム戦、魔法、剣、投擲の基礎訓練、単調ながらも厳しい毎日が過ぎていく。長い一日と短い一週間を繰り返しながら、厳しい冬を終える。

 テストも終え、一年生として最後の授業にて、グラス先生が改まって話し始める。


「もうすぐ一年が終わる。よくついて来てくれた。今学期は2〜4人でチームを組み、連携を考えた実践的な訓練を行ってきた。できるだけ色んな人と組めるよう毎回チームを変えてきた。二年時からは、3〜5人のパーティを固定で組んでもらう。2年次の2学期には担当の指導員とともに現地に出向き実践を行い、3年の夏にかけて勇者ライセンスの仮免が取得できるようカリキュラムされている。また、2年の夏以降は、勇者ライセンスの仮免取得をメインにしながら、それぞれの進路に合わせて授業選択の幅を広げる。我が校では、職業勇者のみならず、将来の選択肢として他の道にも行けるようバックアップするつもりだ。国防勤務を目指すもよし、学者を目指すもよし、市営団体に所属するもよし。卒業以降は君たちの自由だ。しかし、勇者ライセンスの所有は、どの進路にいっても損はない。一年が立ち、ここにきて迷いを持つものもいるだろうが、とりあえずは仮免取得までついて来てほしい。また、勇者になって以降の話になるが、勇者組合はあるものの、勇者とは個人事業主だ。パーティを斡旋してもらうもの、ここで出会ったものとパーティを組むもの、色々だろう。なので、こちらからこれ以上誰と組め、とは言わない。2年時からの固定パーティは、好きに組み、こちらに報告しろ。ただ、相談には乗るし、組めなかったものは言いにこい。私に言いづらければ、ヤング先生でもレイでも、タケミでもケイでも、なんならトーリ先生でも構わん。誰かに相談しろ。5日間の休みに入るが、どう過ごすかは自由だ。しかしハメを外しすぎるなよ。以上」


 長い話を終え、グラス先生が教室を後にする。

 もう一年か。早いな。


「おい、飯食いに行こうぜカイ。シュナとロゼも来るってよ」


 ポックがうきうきでやってくる。


「嬉しそうだな」


「5日間も休みだぜ!?嬉しいに決まってんだろ」


 他の学校は2週間休みがあるんだが、1年もいると慣らされるもんである。


「おい、ロロ、リュウドウ、飯行こうぜ飯」


 廊下を行く二人に、ポックが声をかけた。


「デメガマにドロ蜜あげてから行くよ」


 とロロはなにげなしに答えた。最初の頃はデメガマの件をトップシークレットのように扱っていたが、1年も経つとその辺も雑になってくる。


「いつもんところいるから、後でこいよ」


 とポックはロロに言った。「わかった」と答え、ロロはリュウドウと廊下を歩いてく。

 いつものところとは、寮から歩いて5分ほどのところにある定食屋『カフェ・ド・クリエ』である。おしゃれな名前だが、店自体はそんなにおしゃれでもない学生向けの定食屋である。昼過ぎは名前の通りカフェっぽい雰囲気が出るが。


「いらっしゃい。半ドンだったんだってね」


 と店内に入るや早々、白いエプロンをしたずんぐりおばさんが言った。


「クリエは?」


 ロゼが訊ねた。


「あの子ならさっさと出かけたよ。シャムとまたなんか獲りに行ってんだろうよ」


 クリエとは、この店の娘であり、隣のクラスの爬虫類好きの変わった女である。本人もどことなく爬虫類感がある。シャムと幼なじみでよく自然公園にいる。その性格からかロロとも仲がいい。


「いつもの席空いてるよ」


 とクリエのおばさんに言われ、いつもの奥の席へ。

 ロロとリュウドウも合流し、飯を食う。


「そういえば、お前らパーティはどうすんだ?」


 ポックが誰となしに訊ねた。


「私は決まってるわよ」


 と答えたロゼに、「え!?誰!?」とシュナが一番驚く。


「アルトとアルテよ。組んでみて一番相性が良かったから。そんなに驚かなくても」


「なんで言ってくれないの!?」


「ほら、パーティの話とかってあんまりしなかったし」


 ロゼって本当、自分のこと意外としゃべんねえからな。


「それにシュナ、あなたも本当は組みたい人いるんでしょ?早く言わないと獲られちゃうわよ」


「え、ロゼなんで」


「いつも一緒にいるんだからわかるわよ」


 と言い、ふふんとロゼは鼻を鳴らす。


「ほう、誰と組みたいんだシュナ?」


 ポックがにやにやして訊ねた。

 シュナは顔を赤らめ、俯く。


「ったく、しょうがないわね。あなたたち二人よ」


 とロゼはポックと俺を見た。


「え、俺も?」


 ポックが驚いたようにシュナの方を見る。


「う、うん。二人と組んだ3対3が、なんていうか、一番、その、力が出せたかなって」


「なんだよ早く言えよ!願ってもねえ。お前はもっと自己主張すりゃあいいんだよ。なあカイ!」


「はあ、よかった。こっちも嬉しいよ」


 本当、俺もポックもメイン張れるタイプじゃないし。


「僕たちも決まってるよ」


「誰と組むんだ?」


 俺はロロに訊ねた。


「リュウドウくんと僕と、リオナさんとクルテくんだよ」


「クルテとリオナか。どっちから誘ったんだ?」


「向こうから誘ってくれたんだ」

「クルテのやつ、さすがに改心してんだろうな」


「もう大丈夫だよ、ポックくん。随分謝ってくれたし」


 とロロはにこやかに飯を食い始める。


「最近のクルテは、すごいぞ」


 リュウドウが珍しくしゃべった。演習で一緒になると、確かにクルテの気迫はすごい。一年前いじめっこだったとは思えない。そこは関係ねえか。クルテとリオナは幼なじみを探すという明確な目的がある。特にクルテは初恋の人らしいしな。


「ごめんね最後遅くなって、スペシャルランチお待ち」


 とおばちゃんが俺とリュウドウの頼んだ料理を運んできた。なんか色々盛ったスペシャルなやつだ。


「お前ら、今更だけどよ、本当にクノッテンから来たんだよな?」


 俺とリュウドウの食いっぷりに、ポックが飽きれたように言った。クノッテン市といえば、ここリーフ市と並んで二大都市である。上品なイメージもあるぐらいだが、俺たちのせいでそのイメージが変わってしまっている。


「追試があるのもあなたたち二人だけよ」


 今度はロゼが、じろりと俺とリュウドウを見た。クノッテン=アホみたいな。すまん、ヤット。お前は偏見からのスタートかもしれない。と思いながらも、スペシャルランチを搔っ食らう。うめえうめえ。


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