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俺は勇者じゃない。  作者: joblessman
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どうしてもお尻から入れたい。対モンスター実践演習

 夏は暑い。そんなこと毎年わかっているのだが、だからと言って大した対策が立てられるわけでもない。今日は、闘技場ではなく、ヴェリュデュール自然公園の学習エリアで剣技演習に励む。剣を振る音と、荒い息づかい、照りつける日差し。いや、まじで熱い。が、闘技場の蒸し風呂状態よりましか。森の中なので街よりも温度が低い気もする。


「グラスさん、来ましたよっと」


 とおなじみの寝癖と大きなおっぱいでいっぱいのつなぎ服姿で、ケイ先生が現れた。その後ろに、ぐるぐるメガネをかけた白衣のおじいさんもいる。


「すまんな、ケイ。タバタ博士も、ありがとうございます。よし、一度休憩を挟む。しっかり水分をとるように」


 やっと休憩だ。水分補給だ!生徒たちが木陰に集まる。


「何してんだ、先生たちは」


 と目を細めて先生たちの方を見るが、なんかわからん。


「さあな、しっかし、こう熱いと倒れちまうぜ。おいリオナ、キャンディくれよ」


「ポック、あんた食べ過ぎっしょ。もうないよ」


 なんてだべっていると「集まれ、準備ができた」とグラス先生が言った。


「こちらはタバタ博士だ。王立モンスター研究所よりお越しいただいた。トーリ先生も普段はそこで研究されている」


 グラス先生の紹介を受け、ぐるぐるめがねのタバタ先生が話し始める。


「どうも、流星群たち。ご紹介にあずかったタバタだ。王立ヴェリュデュール大学でモンスター行動学を専攻、ドクターを取得、王立モンスター研究所には、発足時より理事の一人として参加しておる。最近ではモンスターの動物に対する利他的行動を研究テーマにしておるが、まあ幅広くやっておる。バイオロギングによる行動研究が主な手法だが、今回こちらで活用したいというのは、捉えたモンスターの動きをモーションセンサーで分析する、モンスターの戦闘ログだな。仮想モンスターを作ろう、という新たな試みではあるが、なかなか面白いと思っておる。しかし特殊魔法の組み合わせなのでどこでもできるとは思わんでほしい。それだけ恵まれた環境にいることに感謝すべきだな、うむ。グラスくんの熱心な申し出があってこそ今回実現したことである。初回はガルイーガとペンダグルスを実体化させる。この2種のモンスターは、比較的動きがわかりやすい。サンプルログの動きもまあそんなに違いない。そこから分析し、特殊魔法によってこの2種を顕現する。使用するのは、これだ」


 と長い長い話を一度切り、タバタ博士は小さな黒い玉を取り出した。


「特殊魔法により、この玉、ブラックボールには、ガルイーガのデータが詰め込まれておる。さらにケイくんの魔法を使い、ここにガルイーガを顕現する。さてグラスくん、ケイくん、はじめようか」


「そうですね。では、まずはカイ、こちらへ。他のものは端によれ」


 俺以外の生徒が、はけていく。俺か。ちょっと緊張するな。


「カイ、ガルイーガとの戦い方はわかるか?」


「はい。巨体に似合わず早いですが、直進的で横の動きが鈍い。突進をかわし、振り向く前に攻撃を仕掛ける」


「100点だ。では、これより仮想ガルイーガの訓練を行う。ケイ、頼む」


「合点です、グラスさん」


 とケイ先生は地面に手をつき「プレイドッフ、ガルイーガ!」と唱えた。土が盛り上がり、ガルイーガの形に形成されていく。バゴンバリオで見た本物のガルイーガとほぼ同じサイズだ。


「これに、ブラックボールを押し込めむ」


 タバタ博士が、ブラックボールを土ガルイーガのお尻の位置にめり込ませる。もっと違う場所ではだめだったのか。


「カイ、行くぞ!」


 グラス先生のことばに「はい!」と俺は剣と盾を構える。

 日差しはなおもじりじりと強い。汗がぽたりぽたりと頬を伝う。

 木陰から生徒たちが息を飲む中、どこかの木で虫がマイペースに鳴いている。


「あのお」


 と微妙な空気の中、俺はグラス先生の反応を待った。

 土ガルイーガがぴくりとも動かないのである。


「だめですね」


「そうだな、グラスくん」


 とタバタ博士とグラス先生が土ガルイーガに寄っていく。


「タバタ先生、ブラックボールとケイの魔法が繋がっていないのでしょうか」


「うむ。ブラックボールには魔法の送受信機能もついているはずだが、うーむ。二つの魔法を合わせるというのはなかなか難しいか」


 グラス先生が、木陰で涼む生徒の方を見て、「リオナ、来てくれるか」と呼んだ。「うぃっす」と軽い返事をし、リオナが先生たちのところへ向かう。


「このブラックボールに詰め込まれた魔法データをこっちの土のガルイーガに合わせたいんだが。お前得意だろ、そういうの」


「ええ〜グラス先生めっちゃ無茶ぶりするじゃん」


「無理か」


「うーん、二つの魔法を繋いだらいいってことだよね?タバタッチ、これの黒い玉の外殻ちょっと削ってもいい?」


「こらリオナ、タバタッチとは」


「うふふ、いいのよグラスくん、若い子にタバタッチ、ぐふふ、ええと、いいぞ。ブラックボールは一杯あるから」


「オッケー、ロゼ、ちょっとこっちきて!」


 リオナに呼ばれ、「ええ〜なに〜」とロゼが木陰からだるそうに出て来た。いや、お前室長なんだからもっとしゃきっとしろよ。


「これ、ちょっと溶かしてくんない?」


「いいけど」


 とロゼがブラックボールに火をかける。ただでさえ熱いのに。


「サンキューロゼ。で、ウチの魔法を練り込んで、こいつにいれちゃえば、っと」


 とリオナが土ガルイーガの尻部分に、加工したブラックボールを突っ込んだ。どうしてもそこから突っ込みたいんだな。


「うわっ」


 とリオナが尻餅をついた。土のガルイーガが急に動き出したのである。


「土のモンスターは、ケイの魔法でお前たちが危なくなれば崩れるようにはなっている。が、実践だと思ってやれ!」


 グラス先生の声に、「はい!」と今日何度目かの返事をする。

 突進してくる土ガルイーガ。この前は恐怖で動けなくなったりもしてしまったが、今日は大丈夫そうである。やはり作り物なので威圧感や狂気が感じられない。土ガルイーガの突進をするりと避け、背後から切り掛かる。土ガルイーガも、避けようと翻す。剣で土ガルイーガの胴体を斬りつけるが、やや浅い。土ガルイーガはなおも動く。


「カイ、ガルイーガでまず狙うのは足だ!倒れたあとで致命傷を狙え!」


「はい!」


 再度突進してくるガルイーガをかわし、今度は足を狙って剣をさした。バランスを失った土ガルイーガは、どしんと横に倒れた。追い打ちをかけるように、首元を刺す。すると、土ガルイーガが土に戻っていく。


「よくやった。ガルイーガは結構タフで、胴体を切っても動いてくることが多い。しかも、群れで攻撃を仕掛けてくることが多いので、まずは足を狙って動けなくすることを考えろ。ブラックボールはタバタ博士がたくさん用意してくださったので、後でみなにもしてもらう。次はペンダグルスだ。誰か、志願者は」


 とグラス先生が生徒を見た。


「おいリュウドウ。お前の親父さんはペンダグルスを一撃で倒したらしいぞ」


 とけしかけると、リュウドウは俺を見てさっと顔を上げ「先生、俺が」と木陰から出た。


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