テスト前の実践演習 ロゼVSチョウライ
あと残り6人である。ロゼとクルテと俺と、そしてトップ3。剣技、魔法、投擲と、3ヶ月間演習を行ってきたが、明らかにこの3人が戦闘において抜けている。リュウドウ、シュナ、チョウさん。できれば当たりたくないんだが。
グラス先生が、次の対戦を発表する。
「次戦、チョウライ」
「待ちわびたネ!」
とのんちゃんを携えたチョウさんが、颯爽と闘技場へと飛び降りた。
対戦相手は誰だ。そろそろ呼ばれる。気がする。
「ロゼ!」
「はい!」
と返事良く、ロゼが闘技場へと向かう。
ほっとしたような、早く終わらせたいような。
「見物だな」
とポックは、闘技場に目をやった。
「いいな、終わったやつは気楽で」
と俺はため息をついた。まあしかし、ロゼとチョウさんの戦いは、確かに見物ではある。
チョウさんのメイン武器は特殊な棒、通称のんちゃん。投擲演習では、手裏剣をよく練習していた。盾は持たず、とにかく素早い。ロゼは、細身のスモールソードと小盾である。チャクラムを腕に2本ずつ装備している。
武器を構え、向かい合う二人。
「ロゼ、いつも晩ご飯くれるけど、容赦はしないネ」
「当然よ。本気でかかって来なさい、チョウ」
ロゼもリュウドウとチョウさんのごたごたに一枚噛んでいたんだが、まあもうそれはなかったことにしよう。
「初め!」
グラス先生のかけ声とともに、ロゼが鋭い踏み込みで前に出る。チョウさんは、ロゼの突きをのんちゃんで受け、後方へと跳ぶ。跳びながらに、棒手裏剣を一本、二本とロゼに投げ込む。ロゼは小盾でそれを受ける。
「伸びるネ、のんちゃん!」
とチョウさんが叫ぶと、のんちゃんが瞬く間にロゼに向かって伸びる。
「くっ!」とロゼは小盾で受けるが、やや体勢が崩れる。間髪入れず、チョウさんは棒手裏剣を投げ込む。ロゼは、なんとかスモールソードで棒手裏剣を弾く。
「やるネ、ロゼ。防御が格段に良くなったネ」
「ほんと、あなたたち天才って、ナチュラルに見下してくるんだからいやよね」
ロゼは、スモールソードをゆっくりとチョウさんに向けた。右手の中指に嵌めた赤い指輪が、きらりと光る。そしてすっと息を吸い込み、
「ベリサマ!」
と唱えた。
一直線に、炎がチョウさんへと向かう。
チョウさんは、地面に立てたのんちゃんのさきっぽに立つと
「のんちゃん!」
と呼んだ。すると、のんちゃんがうにょうりと上に伸びる。
ロゼの炎が、空を切る。
「まだまだ!インボルク!」
とロゼがさらに魔法を唱えた。ベリサマよりも炎は小さいが、3つの炎が並列に空中のチョウさんを襲う。これは避けきれない。
「のんちゃん!」
チョウさんは、空中で、太く変形したのんちゃんを上段に構え、そのままの勢いで、炎の一つをぶっ叩いた。そのままさっと地面に着地し、にやりと笑う。
対照的に、ロゼは口を真一文字に、目を瞑っている。ロゼの周りに、魔力が立ちこめているのがわかる。そして、かっと目を開くと、
「ブリギットクロス!」
とスモールソードを素早く十字に振った。ベリサマよりも早く、インボルクよりも範囲がある、十字の炎が放たれる。のんちゃんを伸ばしても、避けきれるスピードじゃない。
十字の炎が、チョウさんを襲う。
決まったか。
闘技場の壁が、十字に焦げる。
チョウさんがいない。どこだ。
「上だ!」
とポックが指差した。
空中に、のんちゃんを携えたチョウさんが舞っている。あの炎を避けたのか。どんなスピードでどんな跳躍力してんだ。ん?何かが、チョウさんのお尻から伸びている。なんだあれ。
チョウさんは、再びロゼに向かってのんちゃんを伸ばす。ロゼは、なんとか小盾ではじく。
「ロゼ、そんな隠し玉持ってたネ」
「あ、あなたこそ、そのしっぽは何よ」
肩で息をしながら、ロゼは言った。
そう、チョウさんのお尻から、しっぽが伸びているのだ。
「こ、これは、あんまり見るなネ!」
「何はずかしがってんのよ!」
「う、うるさいネ!ロゼ、もう魔力切れネ!」
とチョウさんは素早く距離を詰め、のんちゃんで突く。さっきまでよりも、明らかにチョウさんの動きが速くなっている。
小盾でなんとか受け、ロゼはスモールソードでチョウさんの胴体に突きを入れる。
ぴょんと、チョウさんの体が浮いた。ロゼの突きは空を切る。チョウさんは、しっぽを支えにして体を浮かしたのだ。跳ぶよりも予備動作が少なく、早い。そして、ロゼの伸びきった右手をのんちゃんで打った。
からんと、スモールソードが地面に落ちた。
「それまで!」
グラス先生が、終わりを告げた。
へとへとのロゼに、チョウさんが肩を貸し、観客席へと上がってくる。
「惜しかったね、ロゼ」
席に戻ったロゼに、シュナが声をかけた。
「はあ、やっぱり魔法に頼り過ぎね」
とロゼは息をついた。
チョウさんのしっぽがなくなっている。
「チョウ、お前の魔法、なんなんだ?」
ポックが訊ねた。
「私の故郷では3種類の生き物を神様として崇めてるネ。私はその神様をおろすことができるネ」
あのしっぽは猿っぽいな。あと、他にも2匹いるのか。やっぱ強いなチョウさん。なんて考えていると
「次戦、シュナ」
とグラス先生が名前を呼んだ。
駆け足で、シュナが闘技場へ向かう。学校終わりに友達の家へいくかのように。
「相手は、カイ」
俺かよ。
「カイかよ」
とポックが肩を落とした。
「なんでお前が残念がるんだ」
「みんなシュナとリュウドウ戦が見たいに決まってんじゃねえか。ちょっとは善戦してこいよ」
「お、お前というやつは!勝ってやるよ!」
と気勢を吐いたはいいものの、突飛な戦術は思い浮かばない。休日に一緒に特訓してるからこそ、勝てるビジョンが沸かない。
さて、どうしよう。




