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俺は勇者じゃない。  作者: joblessman
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テスト前の実践演習 ポックVSリオナ

「次戦、ポック、リオナ」

 

 グラス先生のことばに、「ようやくか」とポックは立ち上がった。

 リオナとポックか。普段仲がいいだけにやりずらそうだな。いや、仲良くもないか。


「行けるか、ポック」


「誰に言ってんだよカイ。ちゃっちゃと終わらせてくるぜ」


 とさっさと闘技場へと下りていった。

 ポックのメイン武器は、弓である。大弓より一回り小さく、少しいびつな形をしている。なんでも動物の骨やら角やらが使われていて頑丈で、連射しやすいとかなんとか言っていた。他にも短刀、手裏剣に投げナイフやら、投擲演習でも剣技演習でも、色々武器を試していたので、どこに何をもっているか分からない。まあポックは何でも使いこなす。リオナのメイン武器は、あれはスリングショットか。左腕に、切り目の入った布のようなものを巻いている。ポックと同様、短剣も装備している。投擲武器がメインのやつは、短剣持ちが多い。


「毒も使わせてもらうぜ」


「いいよ。うちもマジで全力だし」


 リオナのマジと全力の使い分けはよくわからん。


「初め!」


 とグラス先生の合図とともに、二人は距離を取る。

 ポックが、矢を放つ。

 リオナは後ずさりながら避け、左腕を伸ばす。腰にかけた派手な色のポーチから小さな玉を取り出し「私にぴったりの武器だわ。マジサンキューね、レイ先生」とスリングショットに装弾すると、ポックに向けてはなった。


「どこ狙ってんだ」


 ポックの手前の地面に玉が当たる。石の地面なので、破片が飛ぶ。

 リオナは、ポーチから再び玉を取り出し、ポックに放つ。


「だから、どこを」


 玉は、ポックの足下へ向かう。異変を感じたのか、ポックは大げさにも横っ飛びで避ける。玉が地面に当たると、激しい炎が噴射する。


「あ、っち」


 とポックはなんとか火から逃れる。


「よくわかったじゃん」


「色がさっきと違ったんだよ。なんだ、これ」


「ウチがロゼの魔法練り込んだ特製キャンディじゃん」


「こら、ロゼてめえなんでリオナに」


「ごめん、ポック!新作キャンディをくれるっていうから」


 とロゼは両手を合わせた。こいついつもキャンディにつられてんな。


「マジ余所見御法度」


 とリオナは次弾を装填し、ポックに発射した。再び、ポックの手前で玉が弾ける。すると、今度は激しい氷がポックを襲う。


「くっそ」


 とポックは今度もなんとか後ろへ避ける。

 近くにいたユキが、まん丸いほっぺをさらに丸くして、口をごにょごにょ動かしている。キャンディ買収が激しいな。


「次で終わりっしょ」


 壁を背にしたポックに対して、笑みを浮かべながらリオナは次弾を構えた。

 ポックは素早く矢をつがえる。

 リオナが玉を放った。一瞬後、狙いを定めたポックも、矢を放った。

 玉と矢が、空中でぶつかる。弾けた玉から蒸気が立ちこめると、二人の間に氷の壁ができた。ポックの方が動き出しが早い。弓を手放すと、素早く氷の壁を迂回し、短刀を抜いてリオナのほうへと向かっていく。リオナは、「やっばい」と後ずさりしながら、ポーチからいくつか玉を手にとり、「ドロップキャンディ!」と地面に撒いた。ポックがその一つを右足で踏んでしまう。パリんと玉が割れると、ポックの右足が、接着剤で引っ付いたように石畳の地面から離れなくなった。


「マジねばねば」


「うっせえよ」


 とポックは腰の後ろに挿していたナイフを抜くと、リオナに向かって投げた。リオナの右足ふくらはぎをかすめるが、大したダメージにはならず。


「これで終わり」


 とリオナは次弾をポックに放った。

 瞬間、ポックは腰を屈め、素早い動きで前に出て玉を避けると、リオナに短剣で切り掛かる。

 リオナも短剣を抜いて応戦する。二度、三度と打ち合うが、「くっ」とリオナは右足からがくりと落ちた。

 ポックが、崩れ落ちたリオナに短刀を突きつける。


「それまで!」


 グラス先生の声が闘技場に響いた。

 ポックが、リオナに手を差し伸べる。


「かすっただけでもアウトって、ちょーやばいね」


 右足をひきずりながらも、なんとか立ち上がりながら、リオナは言った。


「ヒールしてりゃあしびれはすぐとれる。こっちも、来て早々のやつに負けらんねえしな。あと、剣の訓練もちゃんとしとけよ」


 とポックはにかりと笑った。


「ばれてんじゃんさぼってたの。てかあんたの靴」


「あ、あれどうしたらいいんだよ!ひっついてとれねえじゃねえか!ヒダランボウの皮でつくっためちゃくちゃ柔らかくて頑丈な靴なんだぞ!」


 ポックは、そのなんちゃら皮で作られた靴を脱いで、リオナのネバネバ魔法(?)から抜け出したのである。


「ウチはしーらないっと」


 結局そのすっごい頑丈で柔らかいという靴は取れず、ポックは裸足のまま観客席へと上がってきた。

 すでに次戦が始まっている。アルトが大きな盾を構え、戦っていた。アルトの特殊武器を使った戦闘を見るのは初めてだな。


「どうよ、アルトのやつ」


 とポックは俺の隣に座りながら、言った。


「なかなか面白いな」


 アルト、相手の攻撃を完封している。盾の形が色々変わって面白い。


「リフレクト!」とアルトが叫んだ。アルトの盾が、薄く光る。相手の魔法がアルトの盾に当たると、そのままそっくり返っていく。

 勝負が決まった。カウンター技か。強いな。


「やるじゃねえか。もうほとんどのこってねえんじゃねえの」


 とポックは、周りを見た。

 あと6人である。ロゼとクルテと俺。そしてトップ3。剣技、魔法、投擲と、3ヶ月間演習を行ってきたが、明らかにこの3人が戦闘において抜けている。リュウドウ、シュナ、チョウさん。できれば当たりたくないんだが。

 グラス先生が、次の対戦を発表する。


「次戦、チョウライ」


「待ちわびたネ!」


 とのんちゃんを携えたチョウライが、颯爽と闘技場へと飛び降りた。

 対戦相手は誰だ。そろそろ呼ばれる。気がする。


「ロゼ!」


「はい!」


 と返事良く、ロゼが闘技場へと向かう。

 ほっとしたような、早く終わらせたいような。


「見物だな」


 とポックは、闘技場に目をやった。


「いいな、終わったやつは気楽で」


 俺はため息をついた。まあしかし、見物ではある。


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