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俺は勇者じゃない。  作者: joblessman
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役割分担を決める。

 夕飯の後片付けを終え、いざ話し合いが始まる。

 いつものごとくロゼが話し始める。


「ヤング先生に頼まれたのは明日の午後の一年生の演習よ。メインは剣技演習と魔法演習になるわね。私たち2年生は午後から休みになってるから、人数が足りなそうだったらガクちゃんやナツメたちにも頼みましょう」


 俺たち2年の午後は、仮免試験明けと言うこともあり授業が入っていない。ガクとナツメはリーフ市の隣にあるファンサール市から通いできているクラスメイトだ。ガクは学年一、と言うよりルート王国の同学年でトップレベルではないかと思うほど頭がいい。魔法の研究に興味があり、ガクに聞けば全部答えがかえってくる。ナツメは武器を作るのが大好きな女生徒である。魔法にはあまり興味がない一方、剣技はやたらと熱心で、これは本人が強くなりたいがためというよりも武器製造のために自身で使っみてということだろう。変わった武器を作っては「カイ、これ使ってみて」とその時ばかりは多弁に話しかけてきて武器の意見を求めてきたりする。手先が器用なので小物を作るのも得意で、女子のアクセサリー類はナツメが作ったりしている。可愛らしい小物よりも本当は剣のキーホルダーを作っている方が楽しいらしいが、そんなもので喜ぶのはポックぐらいであった。ガクもナツメもリオナの家に負けず劣らずのいい所の子供でどこか浮世離れしたところもあるが、親に反対されてまでこのヴェリゥデュール勇者学校にきたとあって熱いものがある。


「先に魔法やってあとで剣技するか?」


「そうね、カイ。魔法はとりあえず適性魔法で組み分けして、ヒールの子達はカイとアルテで頼むわよ」


「うい」


 とアルテがいつもの気怠い感じで返事をした。


「特殊武器の子達は僕だね」


「そうねアルト。あとの子達は、私たちね」


「うん」


 とロゼの言葉にシュナが返事をした。


「剣技演習は、シュナとカイを中心にやってもらおうかしら。一年生もあなたたちから教わりたいでしょうし」


「俺もか」


 シュナと並べられると畏れ多い。


「無駄な謙遜ねカイ。自信を持ちなさい」


 ロゼの語調は力強い。ここ最近自信がなくなっていたので、はっきり言われると嬉しいものがある。

「うむ」と妙に照れた返事をしながらチラリとシュナを見ると、ロゼに褒められたのが嬉しかったのかニンマリ笑っている。


「はあ。あなたたち二人とも、一年生の前ではシャキッとしなさいよ。あと、魔法演習と剣技演習を終えたら、最後に軽くだけど」


 とロゼは伺うように言葉を紡ぐ。


「投擲演習もして全ての演習を終わろうかなって思ってるんだけど」


 投擲演習。レイ先生が頭に浮かぶ。みんなもレイ先生のことを思っていたのだろう、小さな沈黙ができた。俺たちが話し合っている隣で白雪饅頭にかぶりついていたユキとチョウさん、リュウドウもこの時ばかりは手を止めた。


「いいんじゃないか。いや、とてもいいと思うよ。最後に投擲演習」


 アルトが頷きながら言った。シュナもアルテも俺も賛成の意を示すと


「じゃあ、その流れでいきましょうか」


 とロゼは嬉しそうに言った。


「リュウドウ、明後日はお前らが一年を教えるんだよな」


 俺が尋ねると「うむ」とリュウドウは白雪饅頭をパクリと食べた。美味そうだな。俺もテーブルにあった白雪饅頭の包装をといてパクリと食べる。うまい。ムツキが地縛霊になっても欲しがったはずである。


「大丈夫なのか?」


 とふと心配になり尋ねた。ユキとチョウさんとリュウドウ。


「クルテとリオナがなんとかするだろう」


 リュウドウが新たな白雪饅頭に手を伸ばし、答えた。


「まあそうだな」


 クルテがいればなんとかするか。と思いながらも、クルテも出会った頃はいじめっ子だったんだが変わったものだな、と妙に感慨深くなった。

 部屋を照らすランプのオレンジの光がとても暖かく感じた。


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