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俺は勇者じゃない。  作者: joblessman
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アーズ渦中 ロゼとヨーク 剣を持つ理由

「大丈夫か!?ロゼ!」


 レイの声が響いた。


 ロゼの身体に力が戻る。剣を握り直す。


 レイは素早く気の失っているシュナを抱え、森へと下がる。

 ヨークの背後の松明の火が大きくなる。幾らかの兵士が近づいてきていた。その松明の一つの下に、茶色いマントを着た女がいた。召喚士のルルであった。


「名高き英雄、エルフの生き残りレイ」


 とルルは不気味に言うと、おもむろに地面に手をやる。大きな咆哮と共に、その地面より通常の数倍の大きさの巨大なガルイーガが現れる。ガルイーガは、ロゼには目もくれず一直線にレイ目掛けて突進してくる。


「くそ、第二世代か!ロゼ、森まで下がれ!」


 とレイはシュナを木の陰に寝かせると、突進してくる第二世代のガルイーガを誘導するように矢を放ちながら走った。

 ヨークがシュナのいる方へとゆっくりと歩いてくる。

 ロゼは、レイの言葉通りに動かなかった。この男をシュナに近づけさせるわけにはいかない。森には下がらず、ヨークの前に立ちはだかった。


「ロゼ。剣をおけ」


「私は剣を置かない。ヨーク、あなたに負けるわけにはいかない!」


 ロゼは剣を素早く振りながらに唱えた。


『インボルク』


 三つの炎がヨークへと向かう。

 ヨークはその炎を避ける。

 ロゼは素早くヨークに斬りかかった。剣に炎を伝わらせながら、炎を放ちながら、鋭い突きを繰り出しながら、ヨークの隙を探す。まだ戦える。倒す。必ず倒す。ロゼ自身、高揚しているのがわかった。父ディオールの姿があった。父の思いがあった。剣を持つ理由があった。だからこそ、ヨークに負けるわけにはいかないと思った。

 しかし、やはりヨークの剣に押され、「くっ」と後ろへ下がる。体勢をなんとか整え唱える。


『ペリサマ!』 


 しかし、ロゼの放った炎はヨークに一閃の元に斬られた。


「炎が弱まっている。魔力ももうあるまい」 


 とヨークはロゼに素早く近づくと、ロゼの腹を強く蹴った。

 ロゼは、シュナのそば、森のすぐ近くまで飛ばされる。

 ヨークが言い放つ。


「ロゼ、お前の命の嘆願はする。剣は己を守るために持つのだ。お前の剣にもはや意味はない。私の後ろをみろ。そしてお前の後ろをみろ。どこをとってもお前たちに勝利はない。剣を離せ」


 魔力も体力も限界だった。それでもロゼは、泥だらけになりながらも立ち上がる。後ろにはシュナがいた。気を失っている。私の大切な友達。大切な人。何をどうすることもできないかもしれない。でも、だけど。剣だけは離さない。それはロゼの意地であった。

 その時、ちくりとロゼの右のふくらはぎに痛みが走った。その部位より何かが流れてくる。まだ、戦える。気力が戻ってくる。


「剣を離せ、ロゼ」


 ヨークが剣を下ろし、近づいてくる。

 しかし、ロゼは剣を強く握り言う。


「はあ、はあ、あんたの剣を持つ理由なんて知らない。父は、レバント・ディオールは、滅び行く祖国に、嘆きのうちに憤死した。それは国を憂い、国民を按じながらも、その責任を果たせなかったためだ。私は剣を持つ。父の意思を引き継ぎ、多くの人々を救うため。多くの人々の、生きたいという思いをつなぐため!」


 ロゼの右手に嵌めたリングが赤く光った。

 ロゼは、十字に鋭く剣を振る。


『ブリギット・クロス!』


 十字の炎がヨークを襲う。


ーーーまだ魔力が


 ヨークは、咄嗟に左手に持った盾を構えた。

 盾は炎に破られる。ヨークの体は飛ばされ、雨の路に倒れた。

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