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俺は勇者じゃない。  作者: joblessman
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アーズ渦中 ロゼ、ヨーク

 ヨークがシュナに斬りかかる。


『ベリサマ』


 ロゼが剣を突き出し、唱えた。

 鋭い炎が雨を蹴散らしながらヨークへと向かう。

 ヨークは咄嗟に後ろへ下がると、その炎を避けた。

 ロゼはシュナの元へ向かって走り出した。

 しかしヨークが立ちはだかる。


「ヨーク!」


 ヨークは無表情でロゼを見ていた。

 ロゼはヨークに斬りかかる。この男が、父を、祖国を。そしてシュナまで傷つけて。 

 同じ細身の剣。ヨークも左手に小盾を持っている。これは、プリランテの兵士の多くがする組み合わせであった。ロゼの盾はペンダグルスに壊されており、右手に持った細身の剣のみになっている。

 ロゼが突きを繰り出す。ヨークは平然とロゼの剣を盾で受けた。ロゼは何度も突きを繰り出す。全く届かない。ヨークがぼやけて見える。雨のせいか?違うような気がする。何を考えている。簡単に私のことも倒せるだろう。なのになぜ打ってこない。ヨークが、わからなかった。ヨークという人間全体が、ぼやけて見えた。ロゼはヨークと距離を取ろうと重心を後ろへかけると、間髪入れずヨークの突きが飛んでくる。ロゼの左肩を掠める。隙を作るな、打たれるぞ。そう言っているように見えた。


「指導のつもり!?」


 ロゼはヨークを睨んだ。何も答えないヨークに、ロゼはさらに続ける。


「ヨーク、あなたはなぜ。国を裏切った」


 雨が強くなる。ロゼの目から、ヨークがさらにぼやける。

 ヨークは剣を下ろした。


「ロゼ」


「あなたのせいで、父が、サラが、プリランテが!」


 ロゼにあるのは、恨みだった。怒りだった。剣を強く握り、立ち上がると再びヨークに斬りかかった。

 ヨークは後ろへ下がりながら、それを受けた。払うことはしない。ただぐにゃりと、受けながらにも剣を繰り出しロゼに切り傷を負わせる。ここにも隙があるぞ、踏み込みが甘いぞ、とそれを示唆するようにヨークは打ってくる。やはりそれは指導のようであった。

 ついにロゼは膝をついた。

 ヨークは見下ろすようにロゼを見た。そして、言葉をポトリと吐き出した。


「死ぬのが怖かった。生きるしか選択肢がなかったんだ」


 その声には、後悔のような、苦しみが込められていた。

 雨を切り裂く音がした。

 鋭い矢がくる。

 ヨークはすんでのところで盾を構え、その矢を受けた。


「大丈夫か!?ロゼ!」


 レイの声が響いた。


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