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俺は勇者じゃない。  作者: joblessman
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アーズ渦中 サントラ、潜入④

「おい、これ持ってけ」


 木陰を出際に、トーリがサントラに薄手の布を渡した。


「これは」


「透明化マントだ。その布を被って魔力を全身から微量ずつ放出し続けろ。魔力は多少かかるのと魔力調整が少し難しいが、見たところお前なかなかの強者だ、使いこなせるだろう」


「はあ」


 とサントラは言われるがままに透明マントを被り、全身から魔力を放出する。みるみるうちに体が透明になっていく。


「モンスター研究所の技術と俺のレアな魔法、そして人類史上でもトップの頭を持つ俺のアイディアが詰め込まれた

一点ものだ」


 トーリは胸を張っていった。


「ありがとうございます!」


 サントラはペコリと透明になったまま頭を下げて、今度は本当に木陰をでた。

 マントは通常時燻んだ緑色をしている、どこにでもありそうなものだった。一度魔力を体から放出すると、マントも体も透明になる。サントラは何度か練習しながら、森へと向かった。

 ガルイーガの檻が東にあった。北へ進み、森の中へと入っていく。慎重にゆっくりと。篝火の火が薄く伸びている。サントラは魔力を使い透明マントを発動させる。ゆっくり、慎重に歩いてく。木々がひらけた場所があった。満月に近く太ったような月が煌々とその場を照らしている。

 人の気配がある。たくさん。遠目に、ガルイーガもいる。もう少し、近づける。ゆっくりと。見張りの兵士は4人、一人は大柄な鎧を着た女の人。ガルイーガが向こうに3体いる。見えないだけでもっといるかもしれない。真ん中に集まって、赤い瘴気を発した20人近くの人たちが円状になって地面に手をついて何かをしている。この人たちは、勇者の人たちだ。アーズに操られているんだ。なんだが、その円の中の地面からもうっすらとだが赤い瘴気が漂っているように見える。

 サントラは、ゆっくりと後退しようとした。これで充分だ。これだけのことが知れれば。これ以上ここにいるのは危ない。だけど。

 と再び、暗がりの中だが、その円を作る20人近くの人たちをつぶさに観察した。どこに、どこかに。

 いた。

 高鳴る動悸。小さく唾を飲み込む。


ーーーりっちゃん


 見張りからも遠い位置にいる。篝火も薄い場所。今なら。りっちゃんを。セトの巣糸を持ってきていた。直接触れなくてもいい。なんとかセトの巣糸をりっちゃんに刺して、ヒールをかければ。

 いつもの穏やかで冷静なサントラはいなかった。リラードを助ける。他に思考はなくなり、他の選択肢は微塵もなくなってしまい、感情のままにサントラは、高揚する気持ちのままに、リラードの背後の茂みに向かった。


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