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召喚直前

 王宮の庭園から詠唱が聞こえてくる。庭園の中央に描かれた七芒星の魔法陣。その周囲に立ち並ぶ宮廷魔道士たちが詠唱の源だ。


 「勇者召喚か、うまくいくといいんだが」

 「いってくれなきゃ、割にあわねぇよな」


 庭園を見下ろす城壁の上で二人の男が言葉を交わす。チェインメイルを着た青年とレザーアーマーを身に着けた中年の二人連れ。


 「うまくいってくれないと、ボブは石像のままだ。」

 「あいつの石化を解いてくれるのも報酬のうちだったのを、儀式の日取りがどうのって先延ばしにされてるからな」

 「クリスもエリーも儀式の手伝いに連れて行かれたから、彼女らに治してもらうのもできないし」

 「エリーの嬢ちゃんは詠唱の担当に回されたってよ。三交代制の詠唱なんだと。」

 「クリスは回復サポートを割り当てられたそうだ。」

 「五人のうち、一人が石にされて、二人が引き抜かれ《ボランティア》か。しかも報酬が感状と雀の涙。王家の仕事なんて受けるもんじゃねぇってのが良く判るだろう。」

 「旧都の地下で、召喚陣の陣形を見つけたのが運の尽きだったのかな。それともあの時デニスが言ったみたいに、依頼を断ればよかったのか」

 「うちのパーティ的には正解はそれだったな。あの頃なら王宮も見逃してくれただろうし」

 「もう見逃して貰えないよね。」

 「依頼を片付け過ぎたな。赤の古龍の鱗に不死鳥の羽、ベヒモスの毛皮にリヴァイアサンの爪とゴーゴンの角、リッチの衣もそうだったか。これだけこなしたパーティを取り込みにこねぇ訳がねぇ」

 「召喚陣を描くために必要な素材七つのうち六つ。ゴーゴンの角の時にボブが石にされて、石化をなおす大小としてリッチの衣を依頼されたんだよね」

 「その後の廃都探索が済んでもボブはまだ石のままだがな。召喚が無事終わってくれれば、ボブを石から戻してもらえるって事だがなぁ」

 そこに疲れた声が割り込んでくる。

 「召喚が成功した後が問題かもしれないわよ。」

 「おっエリーの嬢ちゃん。生きてたか」

 「生きてたかじゃないわよ。さっきまで死んだ様に寝てたけどね」

 「疲れ切ってんな。それよか召喚成功の後がやべぇってどういうこったい」

 「今やってる召喚って私達が見つけた陣形使ってるじゃない。あれ、最近の召喚陣と召喚対象者の限定条件が違うのよ」

 「ほぉ、どう違うんだ」

 「これまで使ってきたのは、『勇者の素養のある者』だったの。でもね、今のは『勇者の力を持つ者』になってんのよ。」

 「ん、じゃ召喚するのが勇者候補生じゃなくて勇者そのものってことか?」

 「そうなのよ、そのせいか今までになく召喚詠唱時間が長いし詠唱者の負担もきっつくなってるって、宮廷魔道士の長老がぼやいてたわ」

 「うーん、確かにそりゃまずいな。現役の勇者様の召喚たぁ」 

 「召喚されるのって勇者だよね?なら大丈夫じゃないの。きっと力を貸してくれる」

 「はー、あんたの脳みそがお花畑なのは解ってたけど」

 「バカ言ってんじゃねぇ。」

 「な、なんか間違ってた?」

 「現役の勇者だと色々と柵がある。柵を無視してくれるかどうか。後、召喚者に対する縛りが勇者相手に効くのかどうか」

 「うっ、な、なんか難しいことが色々あるのはわかった」

 「あんたが解ってないことは、よ~~~く解った」

 頭を抱えるエリー。デニスはため息をついてから口を開いた。

 「なぁアル、俺たち勇者じゃないよな。」

 「そうだね、結構色々やったけど勇者じゃないよね」

 「今、この三人で召喚されてよ、『世界の窮地を救ってくれ』って言われたらどう思うよ」

 「それ、困るよ。ボリスとクリスがいないし、それにエリー呼ばれたらこっちの勇者召喚の詠唱がうまくいかなくなっちゃうんじゃないの。」

 「俺らだっていきなり呼ばれたら困るんだ。元の世界で勇者様だったら、俺達より色々とやらなきゃならない仕事があるんじゃねぇかな。仕事中に呼び出されたらいい気分じゃないよな。」


 若者は苦笑いを浮かべた。確かに勇者と言われない自分たちでも困難な依頼をこなしている。依頼の最中に召喚されて、魔王と戦ってくれと言われてうなずけるものだろうか。


 聞こえてくる詠唱の勢いが増している。詠唱の高まりとともに召喚陣が七色に輝き出す。その輝きが魔法陣の中央にまとまっていくとともに、光の煌きが人の姿に変わっていく。


 「召喚しちまったようだな。話が判る勇者様だといいんだが」



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