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盗んだ盗賊と盗まれた女たち

 見通しの悪い草むらで、兎が草を食んでいる。

 夏場は草が生い茂るので草食動物はさぞや太るものかと思いきや、夏草は硬くて栄養がなく、気温の高さもあって彼らも痩せがちらしい。

 花の季節を越えて木々や草花が多くの実りをつける秋が彼らの本番。夏はそれまでの耐乏の季節なのだ。

 ……というのをロータスから聞いていたものの、そんなものは今の食事を必要とする捕食者には関係のない話。

 彼女は駆ける。疾駆する。

 今やどんな獣にだって速さで負ける気はしない。

 肉食獣の本能を模した戦闘術の天才は、もはやその本家をも軽く超える無敵の禽獣となることを可能にしている。

 獲物は、逃がさない。

 必要なのは己の爪だけ。ただの一撃で、仕留める──!!


「……うわっ!?」


 ザク、と足が草地を踏み抜いた。

 地面と思われた場所は、多くの草葉が重なって作られた自然の落とし穴。

 せいぜい2フィート、大した落差ではなかったにしろ、四足ならぬ人の足ではそのまま駆け続けることは不可能で……メイはそのまま、無様に倒れる。

 もちろん兎は、


「おいおい。……だからコレでの狩りにしとけって」


 彼女の後ろからのんびり歩いてきたホークに、耳を掴まれてぶらりと垂れ下がっていた。


       ◇◇◇


「お、帰ってきたようだ。首尾は?」

「二羽。残念ながらメイはボウズだ」

「うー……」

 ホークは麻袋に「戦果」を入れて、ロータスやファルネリア、レミリス、イレーネの待つベースキャンプに戻った。

「うさぎさんより牛とか鹿とか、そういうの狙えば確実なのに。チマチマするのやめようよ」

「まだ暑いから腐るだろ。うまいこと処理できたとしても、その大きさの肉は荷物になり過ぎるんだって」

 メイは細かく逃げ隠れする小動物や鳥を中心に狩りをすることに不満を訴える。彼女の場合は大型動物の方が捉えやすいのだ。

 が、それを解体処理し、食べるとなるとそれだけで大仕事になってしまう。魔法の道具袋には食べ物は入れられないので、大物を獲ればその大半は置き捨てることにもなってしまう。

 ワイバーンのチョロがいれば残りは彼に任せることもできたのだが、このアーラウス大陸には連れて来れてはいなかった。

 今、ここにいる面子は非常識な能力の持ち主ばかりだが、食べる量は決して常人の域を超えるものではない。

 特に食べそうなメイは肉嫌いなので、肉はそれ以外の五人で食べる分だけだ。

 となれば、大きな獲物は邪魔なのだった。

「メイももっと“祝福”をうまく使うようにすりゃいいんだよ。刃物を獲物の心臓に直接ぶっこむとか、なんなら拳の一発を遠くから叩き込むなんてのもできるだろ」

「アレ変な疲れ方するからやりたくない。ホークさんだってちょっと前までは一回やるだけで疲れ果ててたじゃん」

「集中の仕方が悪いんだよ。焦らずに必要なだけのチカラを使うなら、ほとんど体力消耗しなくなるんだ。多分メイならすぐにコツを掴めるはずだぞ。……練習さえすれば」

「練習するだけでメッチャクチャ疲れるじゃん……今は荷車だってないんだから寝てちゃ駄目でしょ?」

「……そんななのに怪我を『戻す』なんて真似はできるんだよな。ジルヴェインも驚くわけだ」

 ホークとしては、メイやファルネリアにもっと“祝福”を使いこなしてほしい。

 このチカラは、一人で持っていてはいけないものだ。あまりにも一方的なチカラ。

 メイとファルネリアも持っていてこそ、自分は孤独にならなくて済む。

 そういう意味では、ジルヴェインに勝利したこと自体よりも、二人がこの領域に届いてくれたことの方がホークにとっては重要な出来事だった。

 もしホークが何かのはずみでジルヴェインに勝てたとしても、あの戦いの中でメイとファルネリアが“祝福”に至ってくれなかったとしたら、いずれはジルヴェインのようになるかもしれなかった。圧倒的過ぎるチカラに裏打ちされた関係は、いくら対等であろうとしても歪む。

 使わないとしても確実に相手をねじ伏せられるチカラの存在は、やがて互いにとって毒になる。愛情すらも、チカラへの畏怖や、逆の傲慢ゆえのものに見えてきたら輝きを失う。

 だから、ホークにとって一番の収穫は、自分と同じチカラを持ち、いざとなれば止めてくれる相手を平和裏に手に入れられたことに尽きる。

 だからこそ、自分と同じくらいには使いこなしてほしい。見よう見まねでジルヴェインに対抗しきった二人なら、その気ならあっという間に追いつくはずだと思うのだが。

「なんでだか、メイもファルも“祝福”使いたがらないよなあ」

「自分で使うようになると、ホークさんがいつも出し惜しみしてたのがよくわかるよ。こんなの慣れるまで使うなんて普通無理だよ。一瞬で体力ごっそり持っていかれる感覚ってすっごい気持ち悪いし、もし間違って使ったとしても変な呪いだとしか思わないよ」

「……それはそうかもしれないけどな」

 子供の頃から自然と使えていたからこそ、それが体力と結果のトレードオフだということをすんなり受け入れられたのかもしれない。

 それなりの年になってから急に実現したら、手元に欲しかったものが急に現れている薄気味悪さと一瞬の異常な消耗を「呪い」と解釈するのが順当な所だろう。

 それは“祝福”と表裏一体のシニカルな概念ではなく、薄気味悪く手に負えないものという素直な意味での「呪い」だ。

 だからこそ、バルトのような使い手もいるにはいるが少なく、そしてホークやジルヴェインのように極める者もなかなか現れないのだろう。

 ホークは麻袋から取り出した兎の死骸をロータスに手渡す。ホークの最低限の“祝福”で見事に捕らえられ、そして綺麗に血をも「盗まれた」兎は、食材としては申し分ない。ロータスは「さすがだな」と呟きながら手際よく解体を始める。

「そういえばファルはどうした?」

「レミリス殿と一緒に山菜や木の実探しだ。メイ殿のための食材も必要だからな」

「あー」

 メイは済まなそうな顔をする。

「ごめん、わがまま言っちゃって」

「なに、そのメイ殿は自分では手を付けない肉を狩りに行ってくれているのだからお互い様だ。それに山菜や果物は我々も食べないというわけでもない」

「っていうか、狩りにしろ採集にしろお前が一番できそうなもんだけどな……」

「私がやれば早いが、姫に仕事がなくなってしまう」

「……ああ、そういうことか」

 ロータスが食べ物を探してきて料理をして皆に振る舞う。それで回ることは回るが、ロータスばかりに負担をかける……いや、言い換えれば「ロータスばかりが点数を稼ぐ」ということ。

 もはや戦いの義務からも解放された今、それ以外の部分で役割を持たなければ、ただのお荷物となる。それはファルネリアの性格からすると甚だ不本意なことなのだ。

「メイ殿が狩りをするのも、レミリス殿が研究熱心なふりをして野性の食材の知識を披露するのも、結局のところはぼんやりと食事を待っているだけでは駄目女と見られてしまうからよ」

「……聞いてるか駄目女」

 ホークはベースキャンプの端でごろ寝をしているイレーネに声をかける。

 イレーネはむっくりと起き上がってニヤリと笑う。

「儂はこの地の案内役として充分に働いているつもりじゃがな。そんなに求めるならばひとつ働いてみせてやってもよいぞ」

「やっぱりいい。お前にモノ頼むと代価が発生するの忘れてた」

「そう遠慮をするな」

 イレーネはパチンと指を鳴らす。周辺に生えていた雑草が刃物で薙いだように浮いた。

 それがひとりでに集まり、一抱えほどの青臭い草の塊になる。

「さて、これはただの雑草の塊じゃ」

「これから水分を抜いて焚き付けにでも使おうってか」

「できなくはないがの」

 さらに指を鳴らすイレーネ。草の塊がギシギシと見る間に圧縮され、拳二つ分くらいの大きさに縮む。

 緑色のなんだかよくわからない塊になった。

「これに毒抜きの魔術を施し、さらに儂の血を一滴混ぜて高速発酵させて……これでよし」

「……団子だ」

「団子だね」

「しかも蒸したてのような外見だ」

 メイやロータスと顔を見合わせる。ほんのついさっきまで雑草の青臭い塊だったものが何やら美味そうな象牙色の団子になっていた。

「食ってみよ」

「……でも草だろ?」

「草じゃ。しかし滋養は充分にある」

「……滋養ってお前の血じゃん」

「触媒に過ぎん。それに魔族の肉体構造は人とは違うと何度も教えておるはずじゃ。お前たちの想像もつかん性質がいくつもあるのじゃ」

 あくまでドヤ顔をするイレーネの手の上から1インチほどの団子を取り、齧ってみる。

 驚くほど甘く、美味い。

「!」

「甘い……!」

「下手な果物よりも瑞々しい……なんという」

「儂にかかればただの草でもこの通りよ。どうじゃホーク。儂に童貞を捧げるなら好きなだけ作ってやってもよい」

「……い、いや、そういう問題じゃ……っていうかこんなことできるなら早く……」

「儂を炊事係にするというなら相応のモノは貰うがな」

「…………」

 悪魔の誘いだった。

 実際のところ、この大陸に飛ばされてきてから一週間、ワイルドな食生活には若干疲れも出ていたところだ。それぞれの魔法の道具袋にはサバイバルの道具はあるが食料は塩くらいしかなく、よく手に入る瓜のような果実は水分は多いがどちらかというと野菜に近い青臭さで、甘いものは本当に少ない。

 しかし……。

「……イレーネに頼ると本当に他の奴らの役割がなくなるんだよな」

「う、うむ。それに何やら不健康な気がする」

「言いがかりをつけおって。なんなら死ぬまでこれだけ食っていてもいい代物じゃというに」

「余計なんかやだそれ!」

「イレーネに何もかも任せたくない」という感情の意味こそそれぞれ違うものの、結局その謎団子は採用されない。

「儂が少しやる気を出すと大体これじゃ。結局頼らぬのなら儂をぐーたらのように言うでないわ」

「もっと普通に手伝いはできないのか」

「儂に言わせればいちいち食える実や動物を探して、煮て焼いて料理するなぞ非効率の極みじゃ。どうせみんな元を辿れば有機物じゃろうに」

「ユーキブツってのの意味は分からんがお前のやり方はどうも色々末期的な気がするんだよ!」

 口を尖らせるイレーネだったが、どこか楽しそうなのでおそらく反応は予想済みだったのだろう。

 そこにファルネリアとレミリスも帰ってくる。

「だいぶ色々とれましたよ」

「毒抜き。魔法、便利」

「おいレミリス。もしかしてこの山菜って毒だとわかってるのが結構混ざってたりするのか」

「大丈夫。魔法、便利」

 レミリスもちょっとイレーネ側の人間になり始めているのが少し怖い。


       ◇◇◇


 アーラウス大陸を彷徨い始めてから、いくつかの村や町だったはずの場所を通り過ぎていた。

 イレーネがそう教えてくれなければ、ただ平らな草原があるな、としかわからない場所ばかりだ。

「人が消えて千年も経てば、魔族をすら作り出した文明も痕跡すら見えず……ですか」

「『邪神』が丁寧に打ち砕いて回ったというのもあるがの。……人がいなくなれば、千年どころか数十年でどんな立派な屋敷も朽ちて地に沈む。儚いものよ」

「昔の文明ってそんなに凄かったのか? アルダールより立派な街もあったのか」

「人がみな城の如き巨大な建物に住んでいた、と言って信じられるかのう」

「みな、って……王様だけじゃなく庶民もか」

「王などおらんかった。建物は大きかったがその分人を多く住まわせた。数万人が住む百階の塔なんてものもあったのう」

「意味が分からねえ……」

「そんな文明でも、滅んでしまったのですね……」

 ファルネリアは何もなくなった平原を見て、歴史の重みに目を細める。

 イレーネは小さく微笑み。

「ま、儂らがおる。滅んだというのは早いかもしれん」

「そういう問題か?」

「少なくとも、遺産はある」

 イレーネは道具袋から宝石を数個取り出す。

 それを指で弾いて四方に投げつけ、そして小さく詠唱すれば、地面からズズズズッと扉がせり上がってくる。

「今夜はここに泊まるとしようか」


 イレーネが使ったのは、デフォードから託されたマジックアイテムのひとつ。

 地中に即席で立派な石造りの部屋を作ってしまうものだった。

 作り付けの家具などはないが、防水布などはみな自分の物を用意しているし、寝床になる藁などは少量ずつなら道具袋の口を通るので、それに丈夫な布をかけて皆で集まって寝ることにしている。まるで親猫に寄ってたかる子猫のような絵ヅラだが、この地下室に家具を置いても次の生成の時には再現されないので、床で寝たくなければこうするしかないのだった。

「これがあるおかげで冬が怖くないのはいいんだが……もし本当に冬になっちまったら何か月もここに六人で立てこもることになるのか?」

「このあたりはそれほど冬は厳しくない。雪が降ってもそう多くはない。旅を続けようと思えば続けられるじゃろう……が、それまでに沿岸部に出てしまいたいものじゃな」

「本当に人がいるといいけどな」

「おらん可能性も大いにある。レヴァリアめは『住める』と言うたに過ぎん。住んでおるとは言うとらんでな」

「……そうなるとあれだな。次は船作りになるな。あるいはドラゴンでも探してレミリスに手懐けさせるか」

「大事業じゃのう」

「俺たちならできないとは思わねえ」

「……本当にリド大陸に戻らねばならんのか、ホーク?」

 藁をせっせと道具袋から取り出して寝床を作るホークに、イレーネはぐいと顔を近づける。

「帰ってもおそらく、落ち着ける場所はないぞ。人々の悪意に失望させられるやもしれん。……ハッピーエンドにもバッドエンドにも、続きはある。続いてしまう。お前は自分の満足だけを優先して、向こうのことは向こうに任せてしまうのも、それはそれで良い物語の切り方ではないかと思うのじゃがな」

「心配してくれてるのか」

「……儂がこんなことを言うのは似合わんとは解っておる。じゃが、儂では不満か、盗賊よ。儂やあの娘たちでは足らぬか。お前は駆け続けるばかりではなく、じっくりと手に入れたものを堪能してよい。女の深遠を味わい尽くし、多少の出来事で揺らがぬ大人の男になってからでもよかろう。ひと冬でもふた冬でも、お前に乾く間もなく愛を与えてやる」

 言うことはいつものように猥褻だが、しかしイレーネの口調は真摯だった。

 本気で……ホークがリド大陸に戻り、自らの奮戦の結果に失望するのを恐れている。

 ホークはそれがしっかりとわかり、どれだけ自分が子供だと思われているのかと苦笑する。

「イレーネ。俺は焦ってるわけじゃないんだ」

「…………」

「帰りつくのは何年先だっていいさ。お前らのことだって、手に入れておいて忘れてるわけじゃない。俺が目的定めてひた走るしか能がないように見えるんだろうが……そうか。だからお前、昼間にうまい団子を作ることもできるってやってみせたのか」

「……あれはただの余興じゃ」

 ホークがリド大陸に戻りたがる理由が食べ物にあるのなら、渡るまでもない。そういう意味で、イレーネはあれをやってみせたのか。

 とにかくリド大陸という人間同士の悪意のただなかに、無防備な英雄を戻らせたくない。

 そんなものは忘れて、この広く閉じた世界で幸せになってほしい。

 イレーネは言外にそう求めていた。彼女もまた、ホークに救われ、彼の安寧を願う気持ちを持ってしまった一人だった。

 それに。

「お前以外に男などおらん。誰に咎められるわけでもないというに、何故誰にも手を出さぬ」

「手を出してないのはその……なんだ。なんつーか……全員プレッシャーが凄すぎて下手なタイミングで誘惑に負けると取り返しがつかない気がするっていうかさ」

「それは確かに童貞はひとつ。悔しがる女はおるじゃろうが……皆その気なのに帰ることばかり気にしていては、結局女よりも名誉欲が先走っていると思われても仕方あるまい」

「いや、まぁ……」

 ホークは口ごもる。

 既に覚悟の決まった女たちにしてみれば、シンプルな話でしかないのだろうが……しかしホークは簡単な話、怖いのだった。

 正直な話、ホークは自分の脱童貞は街の商売女だとぼんやり思っていた。この旅が始まるまで、それ以外を望みようがなかったのだ。身近に女っ気などないし、やりかたもわからずに強姦など論外だ。

 それが一気に目の前に最上級の美女美少女が集まり、さあ童貞を寄越せ、と待っている状態に今ですら気持ちがついていけないというか……相応しい振る舞いが皆目わからないので、飛び込むことができない。

 そんな空前絶後のヘタレマインドを誰も察してくれないのが問題なのだ。みんなホークの勇敢で不敵な戦いから、やる時はやる男だとしか思っていない。イレーネやロータスですら。

 ホークはここに関しては徹底的にやれない子なのである。

 ホークは口ごもり、そして。

「さ、先に風呂に入ってくるわ」

 作業を放り出して階段に走る。

 川の一部をせき止め、レミリスが魔術で暖める。その一番風呂はホークに与えるのが最近のルールだった。

 最初は女たちを先にしていたのだが、全員の気配が消えてからでないとホークが入りたがらなかったため、ホークを先にすることがメイから提案されて決議されたのだった。


 そして、今回もそれを信じて走ったのだが。

「あ。来た」

 もうもうと湯気を立てる川風呂は、レミリスが堂々と半身浴をしていた。

 レミリスだけではない。

「あの。今日はご一緒しようと思いまして……」

「そろそろ混浴恥ずかしいとかホント直さないといけないよねホークさん。はっきり言って男の言うことじゃないよ」

「うむ。……ああ逃げるなホーク殿。大事な話がある。いいからここに来て座れ。長い話になる。……何を着衣のまま来ようとしている、風呂は裸で入るものだ」

「本当に大事な話なんだろうな!?」

 ホークは引け腰のまま叫ぶ。

 メイとファルネリアは少しむっとした顔をして頷き合い、そして同時にホークに手を伸ばす。

 次の瞬間、ホークは裸で川風呂の上に浮遊していた。

「!?」

「……成功ですっ!」

「やったね!」

 ばしゃん、とホークが水面に落ちると同時に二人はハイタッチ。

 頭を振りながらホークが起き上がると、後ろからぐいっとロータスが羽交い絞めにするように抱き着いてきた。

「ホーク殿。今宵は月が美しい。徹底的に語り合おうではないか」

「な、何を!?」

「とりあえず我々の不満をだ」

「いぃっ……?」

「場合によってはすぐに解消される不満だがな?」


 夜は更けていく。

 千年前に人の絶えた大地で、彼らを咎める者は誰もいない。

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