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運命動き出しちゃいました

 今年でタツオも十一才になる。

 彼は今ある事で悩んでいた。

 ミーズガル王国の子供が学校に通うのは、裕福な家庭でない限り十二才までが殆んどである。

 庶民の子供は長男なら家業を継ぐために本格的な修行に入るし、女子は貴族等の裕福な家庭で使用人として働く。

 しかし、長男以外の男子は大変である。

 計数に明るく伝手があれば商人の小間使いとして働けるが、殆んどの場合は大農や網元の元で都合の良い労働力として酷使されてしまう。

 家業の鍛冶屋は兄のシュミットが継ぐし姉のブルーメも王都に働き口を見つけていた。

 タツオも今のうちに進む道を決めておく必要がある。

 

「タツオは学校を終えたら何をするんだい?」

 タツオが相談相手に選んだのは、自分の正体を唯一知っている祖母のレーソであった。


「それを相談しに来たんだよ」


「ふむ、タツオは学校の成績も良いし力もある。網元のフィッシャーさんの所で働いたらどうだい?頑張れば船の一艘は持てるだろ」

 タツオの幼馴染みフロルの父も網元から独立した漁師である。


「僕、船に乗れないから…なんで人間は船みたいな危ない物に乗れるの?人間には翼がないから沈んだらお仕舞いでしょ」

 自分の翼で自由自在に空を飛べるタツオにとって、船に乗るのが怖くて仕方がないのだ。


「確かに何かあってもドラゴンになる訳にいかないしね…それなら冒険者はどうだい?タツオなら魔物に負けないじゃろ」


「うん、最初は僕も冒険者になろうと思ったんだ。でも僕を近づいたら魔物の方が逃げていくんだよ」

 魔物にしてみればドラゴンの中でも規格外なタツオは恐怖以外の何者でもない。

 タツオの気配を感じた途端、魔物達は恐慌に駆られて我先と逃げ出したのだ。


「強い魔物がいる所には行くにはギルドランクを上げなくちゃいけないからね。なら、行商人はどうだい?ニョルズスタッドの魚をに売りに行けば、それなりに儲かるそうだよ」

 タツオなら重い荷物を悠々と運べる力があるし、魔物に襲われる心配もない。


「でも元手がないと駄目だよ」

 魚を買うにもしても魚を入れる箱を買うにもしても先立つのは金である。


「安心しな、タツオには売れる物があるじゃないか?」


「そんな物なんて無いよ」

 タツオは小遣いすらまともにもらった事がないのだ。


「ドラゴンの鱗は高く売れるんじゃよ」


「いやいや、生鱗を剥ぐって、とんでもなく痛いんだよ。それにニョルズスタッドにドラゴンの鱗を買ってくれる店なんてないよ」

 過去の経験によりタツオは生鱗を剥がれる事がトラウマになっている。


「しかし、何時までも親に養ってもらう訳にもいくまい。高く売れれば学校も通えるぞ。ドラゴンポイントも大分貯まったんじゃろ」


「貯まってるどころか減ってるよ!!テストの成績が悪いと減らされるんだって、残りは三百五十DPしかないんだ…」

 タツオの成績が良いのは、DPを減らさない為に必死に勉強した為であった。

 

「お前の神様は厳しいの…ハーヴィ様に宗旨変えしたらどうだい?」

 ユミールでは様々な神が信仰されている。

 知恵を尊ぶ神ハーヴィ、戦いを好む神ヴェオール、ヴァルキリーの神ノルダル、商売と悪戯の神ロプト。


「それ出来ないよ、僕はロキ様に仕えし古代龍が一柱。何より人は神の教えを自分達に都合が良い様に解釈して、他者に強要する。寄進を受けて喜ぶのは神じゃなく司祭達なんだよ」


「伊達に億の年は生きてないんじゃな…それでどうすんじゃ?テストの成績が悪いのを許さないお前の神様なら、働かないのも許さないんじゃないかね?」

 それを聞いた途端、タツオの顔から滝の様な冷や汗が溢れだした。


「お婆ちゃん…ペンチを貸して」

 その日、時空を司る古代龍ビルクーロは(むせ)び泣いたと言う。


――――――――――――――――


 それから数日後の事、ニョルズスタッドに一台の豪奢な馬車がやって来た。

 馬車から降りてきたのは一人の女性神官。

 彼女広場にニョルズスタッドの町人を集めさせた。

 当然、タツオ達もご多分に漏れず広場に集められた。


「たー君、あの紋章は王家の物だよ。何があったのかな?」

 フロルは余程興奮しているのか、タツオの手をギュッと握り締めている。


「それにあの方はヴァルキリー隊の先代隊長レーテ様よ」

 ブルーメはヴァルキリーに強い憧れを持っている為、ヴァルキリー隊にも詳しい。

 何しろヴァルキリーに会いたいが為に王都で働く事を希望したのだ。

 

「昨日、神託が降りました。ニョルズスタッドに二人のヴァルキリー候補生がいるとの事です。ブルーメ・トキノとフロル・ メーヴェと言う少女がいる筈です」

 大きな歓声が湧き上がり視線がタツオ達に集まる。

 ブルーメとフロルの二人は驚きのあまり、呆然としている。


「タ、タツオ私の名前を呼んだよね…ロプト様の悪戯じゃないよね…」


「たー君…私ヴァルキリーになれるの?」


(なにこの都合の良すぎる展開は?まさかロプトって神様の悪戯?あっ…)

 そこでタツオは重大な事を思い出した。


(ロプトってロキ様の異名だ!!ヴァルキリーは神託により決められるんだよね…まさか…)

 皆が歓喜の声を上げる中、タツオ達だけが呆然としていた。

 

しばらく更新が滞ります、詳しくは活動報告を見て下さい

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