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RPAD使っちゃいました

 泣き叫ぶタツオを無視してRPADのプチロッキ君は淡々と説明を続けた。


「中級魔族初撃破だから二万DPが加算されたよ」


「本当に?もう第二形態になれるの?」

 ブレスはドラゴンにとって最大の武器である。

 さっきまで泣いていたタツオが、一気に笑顔に変わった。


「初回RPAD契約料として一万DPを引くよ」


「一気に半分になった!?あのDPはどうしたら溜めれるの?」

 これでは第二形態に変われるDPが一回分しか残らない。  


「DPは魔物や魔族を倒すと加算されるよ。ただし、竜の姿で倒したら加算ポイントは少なくなるから気をつけてね」


「えっ、猿人の姿で魔物を倒さなきゃいけないの?む、無理だよ」

 いくら力が強くても今のタツオは八歳、魔物や魔族を倒せる訳がない。


「そんな君に朗報、DPを使用する事で、猿人の姿のまままでドラゴンの力が使えるよ。右下の光っている所をタップしてね」


 タツオがRPADをタップすると一覧が表示された。


ドラゴンブレス…高熱の炎を吐けます・消費DP百

注)炎の熱さに耐えられないと大火傷をする危険性があります


ドラゴンクロー…ビルクーロ自慢の爪を使えます・消費DP二百

注)爪の重さを支えれる筋力がないと、腕の骨が粉々に砕けます。


ドラゴンスケイル…ミスリルも弾く竜の鱗を体の一部にまとわせます・消費DP三百(全身なら五千DPが必要になります)

注)使用後は自分で鱗を削いで下さい。


ドラゴンウィング…竜の翼が背中に生えます・消費DP一時間四百

注)空を飛ぶ筋力が必要になります。


「い、一個も使えるのがない…」

 思わず項垂れるタツオ。


「今回は初回契約特典として七千DPで服を直す事が出来るよ。DPを使う場合はyesをタップしてね」


「残り三千か…使います」

 タツオは猿人の姿に戻ると、いそいそと服を着ていく。


「三千DPを使うとRPAD専用時空間を使えるよ。もし、RPADを落としてなくしたら神罰がくだるから気をつけてね」


「お、お願いします。もう残りなしじゃん」

 タツオは地面に座り込み地面にのの字を書き出す。


――――――――――――――――


 タツオがいじけまくっている頃、港町ニョルズスタッドは大騒ぎになっていた。

 旅の商人が魔族の死体を見つけたのだ。


「間違いない、あれは中級魔族だ」


「そんな中級魔族がこんな田舎町に来るなんて…」


「問題はそこじゃねえ!!一番の問題は中級魔族を一撃で仕留めた何者かが森に潜んでいる可能性があるって事だ」

 その一言でざわついていた町人が一気に静まりかえる。


「とりあえず森は封鎖する。そして王都に連絡をしてヴァルキリー様を派遣してもらおう。ドラゴンの翼なら一日もあれば来れる」

 町長ルドルフの一言に皆が頷く。

 そんな中、一人の女性がルドルフの前に飛び出して来た。

 タツオの母シルビアである。


「待ってください!!森にはまだタツオとお義母さんがいるんです。探しに行かせて下さい」

 

「駄目だ!!町長として認められん。中級魔族を一撃で殺す化け物がいるんだぞ」

 ルドルフはすがりつくシルビアの目を見ながら、頭を振った。

 無論、二人ともその化け物がタツオだとは分かっていない。


「そんな…タツオ…」

 シルビアはルドルフの無情な言葉を聞いて泣き崩れた。


「シルビア、心配するな。俺がタツオは探しに行ってくる」

 声を掛けてきたのはタツオの父親テツヨシであった。

 確かに女性のシルビアよりテツヨシの方が生き残れる確率は高い、高いがそれは僅かな確率である。


「テツヨシ良いのか?下手をしなくても死ぬぞ」


「流れ者の俺が家族を持つ事が出来たんです。今まで幸せ過ぎたんですよ。それに親がガキを守るのは当たり前じゃないですか」

 テツヨシの悲壮なまでの決意に皆が言葉を失う。

 そしてここに違う意味で言葉を失っている二人がいた。


(お婆ちゃん、どうしよう?凄く出辛いよ)



(タツオ、お前はドラゴンなのに空気を気にするのか?)


(するよ!!僕達って下手をしなくても怖がられるんだよ。傷を舐めただけなのに人喰い竜なんて言われるんだから)

 タツオは祖母レーソの背中に負ぶらながら必死に訴える。

 そんなタツオは何故か裸足であった。

 RPADで直せたのはあくまで服だけで靴を治すのには別ポイントが必要だったのだ。


(ドラゴンも大変じゃの、ここは婆ちゃんに任せておけ)


「みんな、大変じゃ!!魔族が現れたぞ」

 レーソは昔話で鍛えた演技力を見せつけた。

 オーバーにならない様に心掛けらており、誰も演技力とは疑わなかったと言う。


「タツオ、お義母さん無事だったんですか?良かった!!」


「タツオ、良かった…本当に良かった」

 タツオは母に抱き締められながら良心の呵責にさいなまれたという。


――――――――――――――


 次の日、ニョルズスタッドに一匹のドラゴンが舞い降りた。

 銀色の鱗を持った美しいドラゴンである。

 そして銀色のドラゴンを操るのは一人の少女であった。

 ドラゴンと同じ銀色の髪を持った少女は地に降りるとニコリと微笑んだ。


「ヴァルキリーのソニアです。中級魔族が殺されたと言うのは本当ですか?」


「たー君、たー君、本物のヴァルキリー様だよ」

 タツオは興奮するフロルに気づかない位に夢中になっていた。


(な、なんて綺麗なドラゴンなんだ!!後、僕がもう三百才も若ければ眷属にするのに…)


「むー、たー君、ヴァルキリー様が美人だからって見すぎだよ!!」

 タツオはこの時、まだ知らなかった。

 ヴァルキリーと言う存在に悩まされ続ける事に。

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