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思わず押さえちゃいました

軽く下が入ります

 ようやくカメムシ臭がとれたタツオは行商に精を出していた。

 タツオが来ているのは、ニョルズスタッドの魚市場。

 ニョルズスタッドは港町だけあり、タツオの他にも多くの商人が魚市場に来ている。


「おじさんお久し振りです。イカと鯵、それに平目を三キロずつ下さい」


「おっ、タツオ頑張ってるな。今日はどこに行くんだ?」

 魚市場で働く人達はタツオの顔馴染みの人が多く、甥っ子の様な気軽さでタツオに声を掛けてくれる。


「今日はアムレートに卸しに行く予定です」


「魔術都市か。随分と遠くまで行くんだな」

 ニョルズスタッドから内陸部にあるアムレートまでは馬車を使っても優に八時間は掛かる。

 当然、新鮮な魚は手に入りにくくニョルズスタッドの魚は高く売れるのだ。

 魔術都市と言われているのは、アムレートにはミーズガルの王国魔術研究所等が置かれており、ミーズガルの魔術の中心地となっているからである。


「あそこのポーションは質が良いから置き薬として人気なんですよ」

 

「往復で稼ぐ腹積もりか。タツオも行商が板に着いてきたな」


「お、お陰様で色々と教えてもらえましたから」

 何しろ、タツオが仕えている神ロキは、ユミールおいては商売の神ロプトである。

 下手な商売をした日には、リアルにバチが当たってしまう。

 最も、タツオが遠い町まで新鮮な魚を運んでいる事を疑問に思われないのはロキのお陰なのである。


―――――――――――――――


 その頃、タツオの姉ブルーメに一枚の依頼書が手渡されていた。


(場所はラグーナか。タツオも忙しいみたいだしどうしようかな)

 ブルーメは可愛い弟が頑張っているのを邪魔をするのが忍びないだ。


「ブルーメさん、新しい依頼ですか?凄いですね」

 ブルーメに話し掛けてきたのは幼馴染みのフロル・メーヴェ。

 

「今回の依頼は雄ドラゴン限定なの。だから私に来たんじゃないか?」

 依頼書によると、ラグーナにある干潟で男性のみが、正体不明の魔物に襲われる事件が頻発しているとの事。

 牝ドラゴンを相棒に持つヴァルキリーが調査に向かったが魔物は姿を現さなかったらしい。


「それでもヘルチェミチェを退治した実績があってですよ。私も早く自分のドラゴンを持てる様に頑張ります」

 フロルはそう言うと、ガッツポーズをとりながら微笑んだ。

(フロルもタツオが絡まないと普通の女の子なんだけどね)


「そう言えば今度タツオがヴァールに仕入れに来るみたいよ」

 これは事実で、タツオがブルーメの弟と聞いた客から王都ヴァールで売られているアクセサリー等のリクエストがあったのだ。

 新人ヴァルキリーブルーメは既に人気で、彼女のファッションを真似したいらしい。 


「タ、タ、タッ君はいつ来るんですか?どれ位、ヴァールに滞在出来るんですか?あっ、新しい服を買わなきゃ!!それにタッ君とのデートコースも決めなくちゃ!!」

 今度は違う意味でガッツポーズをするフロル、その顔からは微笑みは消え真剣そのものである。


「フロル、連絡が取れたらちゃんと教えるからまず落ち着こう。タツオは逃げたりしないから」


「いーえ、落ち着きません!!もう二年三ヶ月もタッ君に会ってないんですよ。はー、タッ君格好良くなってるんだろうなー」

 フロルはタツオとのデートを想像したのか、うっとりとした顔でトリップしている。


(仕方がない、この依頼を受けてやるか)

 依頼を受ければ仕入れがなくてもタツオはヴァールに来るのだから。

 しかし、ブルーメはこの時まだ知らなかった。

 この依頼がタツオを恐怖のどん底に突き落とすと言う事を。


―――――――――――――――


 タツオは仕入れた魚を荷車に着けると一目散に森を目指した。

 何しろ、ここからは時間との勝負になるのだ。

 人気のない場所に辿り着くとタツオは辺りを見回した。

 何度も見回すと、手早く服を脱ぎ始め丸裸になる。

 次の瞬間、タツオは漆黒の竜ビルクーロに姿を変えていた。


「アイスッ!!ふうー、間に合った。さて、服を畳んで…いざっ、アムレートへっ」

 漆黒の竜は荷車を四肢でしっかりと掴むと空へと旅立つのだった。

 ちなみにタツオは魚介類を運ぶ時は気温が低い上空を飛んで、ポーション等の薬品を運ぶ時は品質が変わらない様に低めに飛ぶ様に心掛けている。


―――――――――――――


 タツオのブルーメから連絡が入ったのはアムレートからの帰り道。

 日が暮れ始め、漆黒の竜も夕陽で紅く染められている。

 契約紋が刻み込まれたタツオの角が微かに震動した。 


『タツオ、今大丈夫?』


『姉ちゃん、どうしたの?』


『新しい依頼を受けたから王都に来てちょうだい』

 

『えー、今から?明日じゃ駄目?アムレートのポーションを仕入れたばっかりなんだよー』

 物流の整っている王都では、アムレートのポーションに高値はつきにくい。


『ポーションなら日持ちするでしょ?お姉ちゃんが預かってげるわよ』


『うーん、ポーションは素焼きの壺に入ってるから割れやすいんだけど大丈夫?』

 日が暮れたのもポーションが割れない様にゆっくりと飛んでいるからなのだ。


『…王都に来たらフロルとのデートをセッティングしてあげるわよ』


『行きます、今すぐ行きます。姉ちゃん、服を選ぶのに付き合って!!あっ!!知り合いの商人からヴァールのお勧めの店を聞いて置けば良かったー』

 タツオは尻尾を犬の様にブンブンと振りながら一路王都ヴァールを目指すのだった。


 タツオがヴァールに着いたのは夜の八時を回った頃である。

 ヴァールから少し離れた場所に降り立ったタツオは人の姿へと戻り、服を着込んでいく。

 辺りに明かりは無いもののタツオは夜目が聞くので迷わずヴァールへと向かっていく。


『姉ちゃん、ヴァールに着いたよ。これからどうすれば良い?』


『今から迎えに行くから正門で待ってなさい。宿屋に行くまで依頼の内容を教えてあげるから』

 ブルーメは通話を切ると、イソイソと迎えの準備を始めた。

 フロル程でないが彼女も弟タツオに会うのを楽しみにしているのだ。


――――――――――――――


「男の人だけを襲う魔物?サキュバスとかレディヴァンパイアじゃないの?」


「詳しい事は書いていけど違うと思うわよ。タツオ、ご飯まだでしょ?荷車を預けたら何か食べに行きましょ」

 久しぶりに姉との会話を楽しんでいると、RPADが鳴り出した。


 命令、ギガラグワーム退治。

 ラグーナに現れるギガラグワームを倒して下さい。

 ちなみにギガラグワームは巨大なゴカイの魔物です。

 男性だけを襲うのはゴカイの習性で、あそこを食い千切っているからなんですよ。

 倒し方、タツオの姿でラグーナの干潟を歩けばギガラグワームが襲ってくるので、ビルクーロに変身して倒して下さい。

 もし、失敗しても回復してあげますから心配しないで下さい。

 ちなみに七個タマタマを取られたら、願いを一つ叶えてあげます。

 これぞリアルド○ゴンボール。


「嘘でしょ…?」

 自然と股間を押さえるタツオであった。

タツオJr.の運命はいかに?

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