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ハーレムは彼女のモノ!  作者: 久遠夏目
Ⅰ ぼくと彼女の約束
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04

「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

「あの」

「ん?」


 東雲と付き合い始めてから一週間が経った日の昼休み。今日は二回目の手作りハンバーグを持参したのだが、東雲はやはりおいしいと言って食べてくれた。そして、お互いに弁当を片付け終わったころを見計らって、東雲が話しかけてきた。

 ぼくはそれに対してあまり深く考えずに反応したのだが、よく考えれてみれば、東雲から話題を振ってくることは珍しいことなので、ぼくはもっと注意しておかなければならなかったのだ。


「何故鷹羽さんはわたしのことがすきなのですか?」

「うえっ」

「鷹羽さんはわたしのどこがすきなのでしょうか」


 東雲の真っ直ぐな視線が、ぼくを射抜く。ていうか、やっぱり近いです、東雲さん。

 どうやら何かを聞くときに、相手の顔をのぞきこむようにして目をじっと見つめるのは、東雲のくせのようだ。すきな人にそんなことをされたら、たまったもんじゃない。

 ぼくはもうそれ以上こっちに来ないように、という意味をこめて、東雲をなだめるように両手を顔の前に差し出す。


「そ、それ、言わなきゃダメ?」

「もちろん無理にとは言いませんが、もし差し支えなければ」

「う……」


 差し支えがなければ、なんて卑怯な言い方だ。選択の自由はすべてぼくにあるのだから。もしここで答えられなければ差し支えがあるということで、つまりは何か人に言えないような理由で東雲のことをすきになった、と言っているようなものだ。

 ましてや、最初にあんな条件を出してきた東雲のことだ。晴人が言っていたように、もし東雲が性に潔癖なのだとしたら、やましい、しかも卑猥な理由ですきになったのでは、と思われる可能性もある。もちろん、ぼくが東雲をすきになったのは、そんなよこしまな理由ではない、のだけれど。


「……聞いても怒らない?」

「怒るような理由なのですか?」

「まあ、場合によっては……で、でも、どんな理由であれ、東雲がすきだっていうのは変わらないんだよ?」

「怒るか怒らないかは聞いてみないとわかりませんし、先ほども言ったように、差し支えがなければ、で構いませんので」

「うう……」


 こちらに選択権があるはずなのに、東雲の目がぼくを追い詰める。差し支えなんてないですよね、と無言の圧力をかけられている気がする。

 ぼくは東雲の目がすきだ。いつも真っ直ぐに相手を見てくれるから。だけど、いざそれが自分に向けられると、嬉しい反面、隠し事ができないんだな、ということに気付かされる。

 差し支えはない、ないよ。さっき自分でも言ったように、どんな理由であれ、ぼくが東雲をすきだという事実は変わらないのだから。ぼくはふう、と大きく息を吐いて心を落ち着けてから、口を開いた。


「まず一つ目は、はっきり言って顔、です。やっぱり第一印象って大事だしね」

「鷹羽さんは意外と思い切りがいいのですね」

「正直者って言ってくれると嬉しいんだけど……でも、東雲は本当に整った顔をしてるから、ぼくはすきだよ」

「はあ、それはどうも。でも、自分ではよくわかりません」


 複雑そうなカオでそう言って、ふい、とそっぽを向いた東雲。やっぱりまずは顔だなんて失礼だっただろうか。

 でも、付き合うまでは話したことがなかったんだから、仕方がないことだとも思う。勝手にイメージであんな性格かな、と決めつけるのも失礼な気がするし、そうなると、やはり外見という理由が大きな割合を占めるのは、ある意味当然のことではないだろうか。

 でも、次は違うもんね!


「二つ目は、何ていうか、生き様かな?」

「生き様?」

「うん。東雲っていつも堂々としてるじゃん。地味だけど存在感があるっていうか、自分の生きたいように生きてる感じがかっこいいなって。東雲の隠れファンって結構多いんだよ?」

「はあ」


 今度はわけがわからないというように顔をしかめ、曖昧な相づちを打つ東雲。ぼくとしては誉めているつもりで、しかもいいところを挙げているつもりだったのだが、どうやら東雲はそうは受け取っていないらしい。ぼくが憧れている生き様は、東雲にとっては当たり前のことなのだろう。だからこそ、そこがかっこいいと思う。

 まあ、ここまではいいとして、問題は次だ。これに対する彼女の反応によっては、ぼくは死ねるかもしれない。


「で、三つ目が……――な、ところ」

「はい?」


 聞こえなかったのか、東雲がこちらをのぞきこむ。ぼくはごくり、とのどを鳴らし、ぎゅ、と両手に力を入れて、覚悟を決めた。


「っ、貧乳なところ!」

「……はい?」




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