プロローグ(3)
沢山のマスコミ、政府関係者が集まる中、会見は異常な程に静かに始まった。時刻は9:25。クローズドベータテスト、そしてデスゲームが始まって25分である。
「プロジェクトマネージャの岡野です。現在、我が社製品、九尾オンラインのクローズドベータテストにて発生しております問題について説明させていただきます。現在、システム内部に何らかの方法をもって侵入した第三者がいる可能性があり、一部システムがクラッキングされた状況です。テスター100名の身体については専属の救急救命士の方々に待機してもらい、早急に対応できるようにしておりますが、クラッキングによる生命の危険がないとは言いきれません。しかし、私たちもプロです。政府の情報技術庁からの技術者も多数おりますので、絶対にテスターの生命を死守します。只今、その第一段階として、全プレイヤーのNPC化を行っております。これにより、痛覚器官への刺激を零にし、またゲーム内での死亡が無くなります。以降は、クラッキング原因の究明、システムの修繕、テスターの生命保全、テスターの健康保全の四つを柱に、問題解決を図ります。質問はございますでしょうか」
何人かの手が挙がった。岡野は最前列に座った記者を指名した。
「――新聞のものです。テスターの生命保全について、具体的な対策を教えてください」
「テスターの生命保全はログアウトが最優先事項ですが、緊急用のログアウトシステムを含め、全ログアウトシステムがクラッキングにより使用不可能になっております。従って、現在はそのシステムの復旧を行うとともに、次の三つの事項を重点的に警戒しております。実機そのものへの攻撃、実機よりテスター与える信号制御システムへの攻撃、そしてテスターへの精神的攻撃です」
また手が挙がる。
「――新聞のものです。犯人の目星はついているんですか」
「現在調査中としか申し上げられません」
いくつかの問答がなされた後、事件後一回目の記者会見は終了した。