プロローグ
仕事が落ち着いたんで、ハジメテミマシタ。
プロローグ
ここは、虚空である。ゆえに上下と言う概念が無い。
1万年に1度の頻度で行われる「閻魔会議」
虚空なのに会議場とはいかに!? そんな細かいことは、水洗トイレの水と一緒に流しといてくれたまへ…作者ご都合主義でござるw
宇宙のシステムである「輪廻転生」を管理する子閻魔と閻魔大王が一同に集まりおこなわれる会議の場。閻魔大王を中心に無数の子閻魔達が、銀河に浮かぶ星のように大王の周りを囲み、絶賛開催中である。
皆一応に渋い顔を突き合わせ、一つの問題についての話し合いが行われていた。
目に見えないほどの細菌から、一つの星に至るまで、輪廻転生に関わる全ての案件を一手に処理するための存在が彼らであった。長い年月をかけて、ある程度の事は、自動的に処理出来るシステムを完成させ、これにより彼らは一種のイレギュラーのみを判断すればいいように、システムをつくりあげていた。その崩壊がここ50万年で起こり始めたのである。
その原因は「異世界への召喚」と「大規模な太陽系同士で行われる戦争」である。
大事な事なので、もう一度! 「異世界への召喚」と「大規模な太陽系同士で行われる戦争」である。
進化した異なる文明同士の戦争は、ある程度予測されることであるし、致し方ないとも閻魔達は考えていた。しかし、異世界への召喚の中でも「勇者の召喚」は、閻魔達が与える個々人にあった人生をコトゴトク踏みにじるもので、到底許されるべきものではなかったのである。
「大王様、『天の川銀河』にて、このような娯楽小説が…」大王付きの子閻魔がすかさず大王に情報を転送する。
虚空に浮かぶディスプレーに、『小説家に○ろう』に載る異世界召喚の小説が何百も同時に表示される。
「なんと! こんな物まで有るのか! けしからん!
ん、これは…
うん~~~なんとも楽しいではないか!」
読みふける大王に対し、「おっさん! 語るべきはそれなのか?!」とツッコミを入れるものは居ない。閻魔大王は子閻魔たちの唯一の上司であり、彼らの給与も、転勤も、出世だって、大王の皆裂き三寸なのだから…
「うほほ!
う~ん、これは!
これは、ありえないだろ~~~!」
大王の嬉々として読みふける姿に、子閻魔達もつられて、同じく虚空に「な○う作品群」を展開させて読みふける。上司が上司なら、部下も部下なのである。
そこかしこで、小さな笑い声がし始めたころには大王は「な○う」に載る全ての作品群を完読していた。情報処理能力が「はんぱない」のであった!
「うっ、うん!」
大王の咳払いに、虚空が凍りつくような静けさに変わる。
「これらの娯楽小説に対しての規制は、すべきではないな!
しかし何かしらの手は、打たねばならんのも事実!
これ以上の勇者召喚という人権無視、我らの作ったシステムを愚弄する輩には、厳罰を与えねばならん!
しかし我々が直接おもむいて、取り締まる時間も余裕も無いのは、そなたたちも周知のことと思う。
上から降りてくる予算も限られているのは諸君たちも知ってのことと思う。
だれか! いい知恵を持っておるものは居ないか?!」
このような会議の常ではあるが、「う~ん、う~ん」とうなり声が上がるだけで、なかなか手を上げて発言する者は居ないのだ。
「だれか、いい案を持っておる物は居ないのか!」
大王は、目の前の議長席の机を叩く! 会議場にその重低音が響き渡る。
「せっかく、いい案を出した者へこれを用意して来たというのに…
ざんねんじゃの~~」
差し出された金一封と書かれた、現金が入って居るであろうその封筒は、こんもりと膨らみ、その厚さから相当な金額が入っていると予想された。しかしおいそれとは発言されない…、つまらない案を出せば最悪降格が言い渡されることを子閻魔たちも知っている。
「はい!」
意を決したように、虚空のはずれに居た子閻魔の一人が手を上げる。
「発言を許そう!
現金が出てスグとは、いかにもげんきんなものじゃが…」
議場が凍りつく、一瞬くっすっと反応する者がいたが、大王はそれを何も無かったように流す。
「今のは、さぶかった…」油断した子閻魔の一人が周りの同僚に話しかけるように小声で言ってしまった。
「君! 降格ね… もっかい人間からやり直してきなさい!」
大王が手を振ると何処かの穴にでも落ちるように、「ああああああああああ~~~」
と言う悲鳴だけを残してその子閻魔だった者は、輪廻の環へと落とされていく。
即日制裁!
ここ1億年は無かったその行為に、子閻魔たちの顔が青ざめる。議場の雰囲気に、発言を許された子閻魔は足をブルブルと震わせ、それでも何とか口を開く。
「あああああ、あの…大規模な宇宙戦争を行った種族たちに、お前たちのせいで銀河の調和が崩れ掛けているなどと脅し、やらせるのはいかがでしょうか!」
子閻魔達から驚嘆の声が上がる。
「「「なんだと!」」」 「「「そんなことが! 許されるとでも!」」」
驚嘆と言うよりも、上がったのは罵声に近い物だった。
「誰が発言を許可した?!」響き渡った大王の声で議場に静けさが戻る。
「それしかないか!
言いだしっぺがやる! の原則を適用する! 君が責任をもってやるように!
異常でこの度の閻魔会議を閉廷とする」
閉廷を知らせるハンマーが打ち鳴らされる。
(えっ? 金一封は? 責任もってやれって? 子閻魔解任?)発言した子閻魔の頭の中をぐるぐるとまわる。この予期せぬ出来事が頭の中を駆け巡る。
他の銀河を任された子閻魔たちは、早々と議場を後に帰り支度を始める中パニックを起こした子閻魔だけが残されていた。不意に叩かれた背中、振り向くと大王の側近である閻魔の一人がニヤケタ顔で立っている。
「あああああ、あの…僕はどうすれば…?」
「いや~! おめでとう!
これが万事うまくいった折には、君も我々閻魔の仲間入りだよ!
大王様は、千年以内にそのシステムを全宇宙に広められれば昇進決定と言われていた。
がんばってくれたまえ! 我々も君には期待しているんだ!」
パンパンと肩を叩かれながらも差し出された封筒を受け取るが、子閻魔は困惑を隠せずに顔が引きつってしまう。
「いま僕が見ている銀河は?」
「千年位だから僕が兼任して観る事になった!
引継ぎもあるから、帰りは一緒に行ことになるね!
まずは、君の管轄であるエターナル銀河から始めればいいと思うよ!」
にこやかに笑う先輩閻魔の顔に多少なりと子閻魔は安堵の表情を浮かべながら、議場を後にするのだった。
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それから3千年が過ぎたころに、ようやく宇宙規模での「輪廻転生管理委員会」が結成されるが、その子閻魔が閻魔に名を連ねることはなかった。
さらに1万年が過ぎ。
銀河ごとに本部を定められた「輪廻転生管理委員会」
所属する執行官達は、かつて各々が「勇者」や「魔王」と呼ばれた一癖も二癖もある人外の力を持つ者であった。
彼らの活躍を記する、この物語が始まる。
未完の掲載作品があるため、こっちゃは不定期で…あっちも不定期^^;だったか;;長い目で見てくらはい。。