第9夜 熱闘前の午後
ビートの目はいつもの陽気な目では無かった。
その証拠に今もダイルを叩きつけた床を睨みつづけている。
叩きつけた反動で浮かび上がってきた砂埃のような物の中から人影が見えた。
影しか見えなかったが、その体の周辺から円状のオーラのような物が何かが思いきり響くような音とともにその体の周りを回転し始めた。
砂埃が晴れ、ビートは迎撃準備に入った。そして声が聞こえた。
「おもしれぇ・・・・お前、俺と同じくらい強ぇかもな。」
普通ならお世辞だと思うビートだったが、今はそんなことを微塵も思いはしない。
ダイルがもう1度剣を握るとオーラが消え、目の色が変わった。
これが、元帥の本当の眼・・・・ビートはそう思った。
「俺言ったよな・・・後悔するなってさ。撤回する。後悔させてやる!」
次の瞬間ダイルの剣がビートの右腕を切り裂いた。あんなに硬かったあの右腕を容易に。
ビートは剣を抜いて応戦した。ダイルが剣を振り、ビートはしゃがんで避けた。
するとしゃがんでいたビートの上からは無数のダークプラントが降り注いでいた。
なんとかアルカナ・クラウンで光の結界を張ってその場を凌いだ。
がそれもつかの間、ダイルが一瞬の内に光の結界に入り込んでいたのだ。
真っ直ぐ突進してきたダイルの攻撃をジャンプしてかわし、剣の持ち方を逆にしてダイルの左半身を狙った。
その攻撃は見事に命中し、左肩から左足にかけて広範囲への攻撃に成功した。
だがビートは倒れた。警戒心を怠った。ここまでのすべてに意味があったのだ。計画の陰謀が大きすぎて気づけなかったのだ。
左腕を掴まれた時、顎に蹴りを入れようとした時、ダイルを叩きつけた時、右腕を切り裂かれた時、ダークプラントをかわした時、
すべてが陰謀だったのだ。確実に読まれていたのだ。すべての行動を。
何よりも倒れる時に見たダイルの表情、あれですべてが仕組まれていることを悟ったのだ。
そう、左手首、足、両手、右手首、そして足元。
すべてにダークプラントを植え付けられていたのだ。
ビートが倒れると光の結界は壊れた。
そして、案の定、先ほど降ったダークプラントに体を喰い尽くされる。
ビートは初めて『力』ではなく、『知』に負けたのだった。
だが決して後悔はしていない。心のどこかで、負けることを知っていたのかもしれない。
意識が遠のいていく。嗚呼、死ぬのか。いや、まだ終われない。まだ・・・・
目を覚ました。目に見えたのは真っ白な天井と、自分。
壁は透き通っていて、自分の姿が見えるほどだったからだ。
ここが天国か。さほど嫌な所では無いな。
そんなどうでもいいことを考えながら彼はゆっくり起き上がった。そして1つ1つ今どういった状態なのかを考えた。
服は全て着ていた。先ほどと、いや、生前と同じというべきか。剣もきちんとあった。
そして今自分はベットの上に横たわっていたことを知った。
ベットから降りると、巨大なガラス張りの窓があった。
外を見ると彼は驚愕した。有る筈が無い・・・いや、仮にそうだとしたらなぜ自分はこんなところに・・・納得がいかなかった。
外は大きな野球ドームの形をしていて、その中で約3~40人が戦っている。
そう、外では第3試験が行われていたのだ。




