第6夜 合格の夜
その部屋は暗く、電気がついていなかった。
その部屋は広く、十分に戦闘ができるほどの広さだった。
その部屋は煙たく、霧がかかっていた。まるでボイラー室のようだった。
そんな場所で聞いた声に対しビートは「この声は恭弥だ」と、ほぼ確信していた。だが1つだけ、不可解な点があった。恭弥はあんな口調で話していただろうか?
恭弥の口調はもっと荒々しく、もっと声が大きかったはずだ。
ビートはもう剣に手を当てていた。
――――恭弥の、いや、元帥の力を1番知っているのはこの受験者の自分だったから。
そんなビートの様子を察した白も自分の武器に手を当てた。そして、リール、ビルの順番に戦闘態勢に入った。そしてまた、声が聞こえた。
「ハッハッハッハッ。油断がないのは良いことだ。ハッハッハッハッ。だが・・・」
その瞬間ビートは感じた。(違う・・この声は恭弥じゃない・・・)
次の瞬間、ビート達に襲い掛かったのは、斬撃でも、武器でも、殺気でもない。『狂気』だった。
一気に霧が晴れたかと思うと、ビルは倒れていた。
ビルには左肩から、右腰に掛けて大きな切り傷があった。
すると焦った様子で白が言った。
「チッ・・・・・早速忍者がやられたか・・いいな・・・リール!!ビート!!」
「了解!!」リールが言った。「俺もだ!」ビートが続けて言った。
「ヒャッハッハッハッハッ!!!楽しい・・・楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい・・・」
「なんだありゃ?」ビートが言った。
「後で究明しよう。今はあれを止めることだけを考えろ。」
白とビートの視線の先には鼠色をした白衣の形をしたものを身にまとい、黒いズボンをはいて、さらには大鎌を持ち、その先からはビルの血が流れていた。
そして舌を出して狂ったような眼をして笑っている男がいた。
リールはどうやら出口の確認をしに行ったようだった。
次の瞬間、白は斬りかかりに行った。剣を両手で持ち、男に突進していった。
だがその剣は何事もなく男の腹部を貫いた。
だが男は何事もなかったかのように言った。
「イタイ・・イタイ・・ツライ・・クルシイ・・ヒャハッハッハッハッ!!!!」
白は動けなかった。白の心は狂気に駆られてしまったのだ。
白は怖かった。自分がおかしくなることが。
白は恐ろしかった。自分の心が狂気に支配されるのが。
白の目からは生気が無くなりその場に倒れた。
その男は腹部に刺さった剣を抜き取り、自分の血を舐めた。すると満足したようにその剣を投げ捨てた。
そこにリールが戻ってきた。だが、リールは己の目を疑った。
リールはこの部屋に来てからの自分に起こった災難を1つ1つ細かく思い出した。
この部屋に入って怪しい声がし、本当に教師なのか?と考えていると白が戦闘態勢に入っていたので自分も戦闘態勢に入った。修行室Ⅲに入る前に白が計画した作戦通りに、俺は出口の確認に行った。そして全4か所の出口からはどこからも出ることはできず、元の位置に戻ろうとすると、霧が晴れ、何があったのかと思い、急いで戻るとそこには倒れた白に立ちすくんだビート。
最悪の展開だ。
これが白の作戦だった。
そう、彼らはずっと前から修行室Ⅲのドアの前に着くと、そこでゆっくり時間をかけ、大胆な作戦を練っていたのだ。
まずビートのアルカナ・クラウン(光の波動)で『闇の七魂』を探り、部屋の中に大量の『狂気』があることが分かった。危険だと踏んだ白は、次にビルの奥義の1つ、習得難易度十、秘術『時空分身の術』を使い、ビートたち本人の体を時空へと飛ばした。次に分身リールが出入り口をチェーンでドアを縛り、敵をこの部屋に封印した。リールが確認しに行ったのはもう一度チェーンを確認するためだったからなのだ。そして最後に白が次元を凍らせ、脱出し、本人たちが奇襲する。
という作戦だったのだ。
計算通りだった。男はビートに向かって鎌を向け突進してきた。
が、その時、急に後ろから体を鎖のようなもので縛られ、煙幕を食らった。睡眠薬が入っていた。
男はたちまち眠りにつくと氷で起こされて、我に返った。
「う~ん・・・ここは?」
どうやら元に戻ったようだった。
ビートたちは荒い息を吐きながら、武器を収めた。
「!!まさかお前らが受験生か!?まずい・・薬を・・・」
「あの~俺らって合格?」ビルが言った。
「まさか俺を止めたのは・・・」
「俺らだけど・・・」ビートが自分に親指を立てていった。
「ああ。合格だ。しかし、俺を止めるなんて・・お前らすごいな・・・・・」男、いや、教師が言った。そして続けた。
「俺の名前はG・マッドネス・ロウだ。【DARK】研究、開発部隊元帥だ。」
「やはり元帥だったか・・・・」白が小声で言った。
「手を出せ。ああ、どっちでもいい。合格印を押さないとな。」
そういうとロウはポケットからスタンプのようなものを出し、ビートたちの腕に押した。すると押したところから光がはなたれ、光が消えると腕には『合格元帥確認』と書いてある印が押してあった。
「じゃ集合場所に戻りな。」ロウが言うと、ビートが
「先生さっきはなんであんな・・・・」そういうと、
「何でもない。さっきのは試験だ。」そういった。
「では先生ありがとうございました!」こう言って修行室Ⅲを後にした。
帰り際に白が言った。
「やっぱりな・・・印に『元帥確認』と書いてあるから、ほかの班も元帥が試験の相手だったんだろうな・・・」
「いや、でもあんな策略よく思いついたな。これなら次も余裕だろ?」ビートが言った。
「分かんねえぜ。こんな出来レースをクリアしたって嬉しくねぇ!次でぜってぇ通ってやるぜ!!」ビルが思いっきり言った。
集合場所につき弐剣に手を見せると全員「よし。合格!!」と言われた。
残りの班が返ってきたが不合格者は誰もいなかった。
全員の班が戻ってくると弐剣が前に出て行った。
「さて、どの班も返ってきたようだな。おめでとう。今回は全員合格だ!」
そして次にダイルが言った
「さてと、みんなおめでとう!じゃぁ、次は俺についてこい!次は俺が試験官なんだからな!」
ビートはこのことを予知していた。
そのため、あまり驚かなかった。
他の受験者は元帥が試験官になったことで不安を隠しきれていなかった。―――もっともあの3人以外は。
「じゃ、いくぞ~」ダイルが言った。
さぁ本当の試験の始まりだ。




