第18夜 下克上の夜
1人に狙いをつけたビルはその受験生に飛び掛かった。
受験生は剣をビルのほうに構え、ビルが近づいた瞬間に振り下ろした。
が、その剣は空を斬る。上を見つめたままの受験生の足元からビルは左手を床に置き、片足を浮かせ、腹部に蹴りを入れる。
吹き飛ばされ、床に倒れた受験生の右肩に起爆札付きのクナイを刺す。
まず1人。時間はかかるが、ゆっくり、着実に、ライバルを減らしていった。
その後ろから、鞭が背中に当たった。苦痛の声を漏らすが構わない。
鞭を手で掴み、引き合いにもつれ込む。両者は一歩も引かない。いや、引けないのだ。
15秒ほど経ってビルは鞭を離した。次の瞬間、その受験生にビルは高速移動で近づいた。
右腕の爪を立てて受験生の腹に手を当てる。
「第4忍法体術、『獣』!」ビルの掛け声で受験生は吹き飛んだ。
受験生は最後の力を振り絞り、ビルの左手を鞭で括る。
思い切り牽かれた左腕は切れはしなかったものの、血が流れている。
その後、その受験生は気を失った。2人。ようやく2人だ。
息をつく暇もなく、弓が胸と腰に注がれる。血が流れる。
最小限の力で戦わなければ巧と戦うときに絶対に負ける。
それを配慮して戦っていたがもう無理に近い。全力でここをすぐに終わらせるしかない。
弓を使っている受験生に向かっていくビルは突進中にも弓を受ける。
だが、痛さを感じている暇はない。弓をへし折ったビルは頭に右足で蹴りを入れ、倒れそうになる体を左足と右足で挟み、逆方向に思い切り捻った。
そして、腹部に渾身の殴りを入れる。が、弓兵は落ちていた弓でビルの右胸を貫いた。
叫び声をあげ、弓を抜き去ったビルはよろめきながら立ち上がった。
そこには、自分を含め、3人の下克上を狙う兵が立っていた。
この3人にもう余裕などない。ただ、自分が勝ちあがる事しか考えていない。
誰からともなく駆け出した。ビルは銃士へ、銃士は銃口を格闘家へ、格闘家はビルへと攻撃を開始する。
しかし、そんな三角関係に罅が入った。銃士の銃が2つあったのだ。銃士は2つの銃をビルと格闘家に向け、弾を放つ。
格闘家は素早く反応し、それを手で止める。ビルもクナイでそれを防いだ。銃士が言った。
「どうだ?これでこの3人の主導権は俺に移った!素直に降参しろ!」
勝利を確信した銃士は高笑いした。これによって忍者と格闘家が対立すると思ったのだろう。
だが、その考えは意外とあっさり破られた。左目には拳、右目には刀が移り、視線はコロシアムの床に変わった。
だが、倒れた状態で銃を取り引き金を引いた。それはコロシアムの全く対照的な方へと飛んで行った。
平衡感覚を失った銃士は倒れたまま目をつむった。残りの2人は見つめあい、語った。
「さぁ、やろうや。忍者坊主。」大柄な格闘家からすればそうなのかもしれない。
「なにが坊主だ・・・ハァ・・ここにいる時点でそんなに歳変わんねぇんだよぉ・・・ハァ」荒い息が混じっているのが痛ましさを物語る。
両者は虎と龍のように睨み合っていた。だが、忍者が叫び声をあげ、その沈黙は破られた。
そう、復活への最後の戦いへの≪切符をかけた戦い≫が始まったのだ。




