懐かしい(1)
「わあ、偶然だね、お姉ちゃん」
リサンは昨夜会った女性を見て、思わず声を上げた。
「ここで食事をしているのですか」とハクケイが尋ねた。
「当たり前でしょ。レストランに来て食事以外何をするの。それより、どうしてこの店を知っているの。昔ここに住んでいたの」とチュウヤジョウが言った。
「実は故郷がここなの。私もあなたたちと同じ高校なの。だからここを知っていても不思議じゃないでしょ」
リサンは二人の会話がさっぱり分からず、チュウヤジョウに話しかけた。
「どうしたの、どうしたの。このレストラン、すごく有名なの。教えてよ」
リサンが甘えているうちに料理が全部出揃い、チュウヤジョウは顔をそむけて黙々と食べ、わざとリサンを無視した。
チュウヤジョウが美味しそうに食べていると、隣の席のハクケイが箸を上げてチュウヤジョウを指した。
「もう彼女に話してあげないと、可愛い彼女が怒っちゃうわ。泣かせたら私も手助けできないわよ」
チュウヤジョウはリサンの方を見ると、目頭に涙が溜まりそうになっているのに気づき、慌ててなだめた。
「泣かないで。全部俺のせいだ。ごめん、ベイビー。全部俺の悪い。ごめん、ごめん」
目の前の二人を見ながら、ハクケイは自分とエキジュの昔のことを思い出した。
週に一度の試験は、数学が苦手なハクケイにとって大きな悩みだった。幸いハクケイとエキジュは隣同士で、週の試験には教師の監督がなかった。そこでハクケイはエキジュに数学の答えを見せてもらおうとした。
「答えを見せて」とハクケイがエキジュに小さな声で言った。
エキジュは聞こえないふりをし、下を向いて答案用紙に書き続けた。
ハクケイは聞こえていないと思い、もう一度言った。
「答えを見せて」
エキジュは相変わらず聞こえないふりをしていた。ハクケイはわざとだと分かり、もう一度声を上げた。
「ねえ、答えを見せて、ねえ」
エキジュは顔を上げ、無表情で言った。
「なぜ見せなければならないの」
この言葉でハクケイは怒り、手を伸ばしてエキジュの耳をつかんだ。
「もう一度言ってみなさい」
エキジュはすぐに謝り始めた。
「ごめん、ごめん。俺の悪い。彼氏の耳をつかまないで」
「私が彼女だって分かっているの。知らないと思ったわ」
ハクケイは手を放した。
しかし三日後、同じことが繰り返された。エキジュが見せた答えは、わざと書いた間違ったものだったのだ。
ふと我に返り、泣きそうなリサンを見て、ハクケイは慌てて言った。
「もういいわ。彼氏も謝ったんだから、許してあげなさい」
ハクケイとチュウヤジョウになだめられ、リサンは少し落ち着いて、また尋ねた。
「この店、一体どこが不思議なの」
「実は、この店が不思議なだけだよ」とチュウヤジョウが言った。
「うん、不思議なの。それで、それで」
「それで……えっと……つまり……」
「つまり何なの、早く早く」
「つまり……えっと……」
「見つけにくい店なのよ」とハクケイが突然言った。
「そう、見つけにくい店なんだ」とチュウヤジョウがうなずいた。
「はぁ、つまらない。何かストーリーがあるのかと思ったのに」
ハクケイとチュウヤジョウは顔を見合わせて笑った。
「お姉ちゃん、もう行くね」とリサンがハクケイに言った。
「うん、気をつけて行ってね。またね」
「うん、バイバイ」
リサンとチュウヤジョウは手を振ってハクケイに別れを告げた。




