記憶だけにいる(1)
「もう秋の終わりなのに、雨が降ってきたなあ。」
私は窓の外の雨を眺め、机の上には書きかけの原稿が置かれていた。
「ねえ、リサン? 今日、雨だから外に出られなくなっちゃった。」
私は電話の向こうに話しかけた。
「はあ……」
電話の向こうから小さなため息が漏れる。
「遊園地には絶対行けないね。じゃあ、カラオケでも行く?」と私が提案すると、
「いいや、このままにしよう。今日はどうやら外に出させてもらえないみたい。適当に喋ろうよ」とリサンが言った。
傘をさして街を歩く。
気持ちは、あの頃とはどうしても違っていた。
同じ雨の日、同じ遊園地なのに、青春の色が抜け落ち、二年以上も側にいてくれた人がいない。
「高校卒業してから、もう会ってないな。エキジュ、今、元気にしてる?」
女の子は雨の中に佇み、まるであの雨の日を思い出しているようだった。
「きっと少年と少女の心の中には、一度も裏切りも嫌悪もなかった。
だけどお互いにどうしようもなくて、仕方なくて、響き合えなくて。
それが少年の心の中の、一番リアルで、一番悲しい思いだった。」
「ふぅ、この章、なかなかいい出来だな」
私はペンを置き、窓の外を見た。
雨はいつの間にか上がり、夜空には月が浮かび、無数の星がちりばめられていた。
彼女とのことを思い出した。
あれも今日のような雨の日だった。
季節さえ、秋の終わりだった。
「今日、雨だよ。どうする? 遊園地に行く?
それとも雨を言い訳にして、うちに来るつもり?」
女の子が色っぽく男に言う。
男は彼女の胸をちらっと見て、すぐに言った。
「ごめん、貧乳には興味ないや。」
男の言葉が途切れると同時に、耳をつかまれた。
「いててて、許してくれよ!
世界で一番可愛くて、一番綺麗で、一番スタイルのいいハクケイさん!」
「それでまだまだ。じゃ、結局遊園地に行くの? それとも他にするの?」
エキジュはスマホを見て、すぐに言った。
「行こう! 目的地、遊園地!」
「あの時、本当にあんなこと思ってたな。」
「エキジュ、遊園地、開いてないよ。
飛んで入るつもり?」とハクケイが聞く。
「問題ない。乗り越えればいいだけ。」
エキジュは低い塀を見て、しゃがみ込んだ。
「おい、俺が支えるから、お前が先に入って門を開けろ。
あとで電気も入れよう。」
「そんな面倒なことしなくていいよ。
私が開けてあげる。」
保安室から声がした。
エキジュとハクケイはびっくりして、バランスを崩して一緒に倒れた。
「お前のお尻、どけろよ。俺の上に座んなよ。」エキジュが言う。
ハクケイは目を赤くして、すぐに起き上がった。
「おお、照れたな。
いつも強がってるくせに、結局口だけだな。」
エキジュがからかう。
「黙れ、童貞。」とハクケイが叫ぶ。
「お前だってそうだろ?」とエキジュが返す。
「違うよ、チクショウ……」
ハクケイの悪口は保安の声に遮られた。
「若いカップル、何を騒いでるんだ。
広い場所でみっともないこと言うな。
今日は特別に、俺が施設動かしてやる。」
「メリーゴーランドなんて子供の遊びだよ。」ハクケイが言う。
「お前は俺の中で、ずっと子供のままだよ。」
エキジュはハクケイの頭をなでた。
「早く乗れよ。男のくせにジェットコースターも怖がるなんて、
私より臆病じゃない。」ハクケイがエキジュに叫んだ。
「からかってるだけだよ。
俺が怖がるわけないだろ。
むしろお前、あの時足がガクガクだったぜ。」
エキジュはふっと笑った。
「行こう、戦慄のお化け屋敷!」
「いや、行かない。」エキジュは拒否した。
ハクケイは指を突きつけて聞く。
「本当に行かない?」
「うん!」エキジュは固く答えた。
「じゃあ、恨まないでよね~
え~エキジュくん、一緒に行ってよ~
エキジュくんが一番だから、一回だけハクケイと遊んでよ、お願い!」
ハクケイの甘えに、エキジュはどうしようもなかった。
お化け屋敷から出てきた時、
ぐったりして歩けないエキジュを見て、ハクケイは大きく笑った。
「あの時、あいつが弱音吐くなんて初めて見たよ。
なんでも怖くないと思ってたのに。」
女の子は思い出をやめ、店のドアを開けた。
「この店、まだあるんだ。」
彼女は角の席に座り、
麻婆豆腐、ダック、ご飯、鶏スープを注文した。
「ご飯二膳、茶碗蒸し、酢豚、麻婆豆腐お願いします。」
女の子が振り返ると、
目の前にいたのは、昨日の夜のカップルだった。




