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記録ファイル 05

 『今、この町で若者を中心に流行しているの勇者が出でくる冒険譚である。世界中を駆け回り、空想の獰猛な生き物を倒し人々に平和を与える。そんな物語である。』

 ある日の夕食時。リドルグはいつものように耳にした話を聞かせてくれた。

 「カナメは知ってるか?『勇者録』。」

「生憎と流行には疎くてね。なにそれ?」

「最近流行りの本らしい。同僚のモリスが熱く語っててな、俺は知らんがカナメなら知ってるかもと思って。」

「本か……。最近本屋に行ってないからわからないな。姐さんもあんまりそういう話するタイプじゃないし。流行りものだと言うのなら、1回くらい読んでみてもいいかもしれないな。」


 若者の間で流行していると聞いて、気にならない理由がない。私だってまだまだ若者。同世代の間での流行を逃すわけにはいかない。

 そう思いたってここらへんで一番大きい本屋にやってきた。世界中が歯車によって支えられている今でも紙による普及というのはまだ力があって、もう数百年はまだ紙による情報伝達が主流であると思っている。

 この本屋のいいところは流行りに則ったオススメ本が紹介されているところである。

 そこに行けば……ああ、あった。『冒険譚』というタイトルで売られていた。恐らく積み上がっていたのだろうが、あと数冊というぐらいまで売れている。

 「まさか、ここまで人気だったとは……。想定外。」

 これが、若者に人気という本なのだろうか。一見特に他の本と変わりのないように思えるが……。

「読んだら何かわかるかもしれないな。」

 私は一冊手に取り、レジの方へと持っていった。


 「という訳で、買ってきた。」

「おまえさんのそういう流行りに乗ろうと頑張るところ嫌いじゃないよ。」

 さて、読んでみるとするか。

「オバートル……?聞いたことのない作家名だな。リドルグは知ってるか?」

「ん?あー、モリスが言うには突然本を販売して当った天才作家……とか言ってたな。それ以上の事は知らん。」

「内容も……今までの本と対して変わらないし。元からこういった勇者ものってのはあったからな。強いて言うなら文体が若者にささったんだろうか?」

「そんなに特徴のある書き方してるのか?」

「なんか、妙に馴れ馴れしい……?フレンドリー……?」

「物語あんまり読まないからわからないんだけど、そういうもんじゃねぇの?」

「そうなのかな」


 『流行りの本というのは一体どうして流行るのだろうか。似たような本は過去にもある。けれども、注目される本というのは比較的新しい物が多い。オバートルが書いた本がどうしてここまで人気になったのか。いつの日か、その答えが明らかになる事を願う。』

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