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記録ファイル 04

 『厚い雲が太陽の光を遮って辺りは何時もよりも暗く、どんよりとしている。もうすぐ雨が降りそうな時に、彼は一番集中して精密な作業を行う。彼は時計技師として働いていて、雨の音は一番集中できるのだと言っていた。』

 リドルグが作っているのは一般市民でも手の届く値段で売られている時計である。装飾はあまりなく、時計の針は大きい。購入者の大半は鉱山で働く鉱夫である。彼の勤める工房は細かい作業を得意としていて知る人ぞ知る信頼できるところらしい。

 そんな工房をまとめている親方は一見怖いが、話すと親しみやすい人物で、どんな人間にも分け隔てなく接する。親方は私のようないきなり現れた人間にも優しくしてくれた。人情に厚い人だ。リドルグもそうだが、人は似たような人で集まるらしい。類は友を呼ぶというやつだろう。

 ポツリポツリと雨が降り始め、すぐにザーザーという音が聞こえてきた。

 工房は金属と金属があたる音と時計の針が動いている音のみ聞こえ、皆集中しているのがうかがえる。

 やがて昼時を知らせる音が鳴って、顔をあげてメシを求めてその場から離れるのだ。今日は親方の奥さんのつくるスープが飲めるぞ、とかこの雨じゃそろそろ表に置いてた看板が溶けるんじゃないかとか。いつもの工房が戻ってくる。雨の日は大抵こんな感じだ。

 「カナメ、昼メシ持ってきたぞ。」

「ああ、リドルグ。ありがとう。今日の昼ごはんはなに?」

「見たらわかるだろ。いつものパンに、姐さんが作ってくれたスープ。」

「姐さんのスープ美味しいよね。私これ好き。」

「そういうのは直接伝えてやれよ。姐さん、おまえさんのこと割と気に入ってるぜ?なんてったってここは男所帯だったからな。同性が増えてうれしがってたよ。」

「へぇ……。」

 いいこと聞いたな。雨の日は姐さんのところに行くとしようか。どうせリドルグの記録は同じことを繰り返し書くだけだし。そもそも、リドルグは毎日記録を書かなきゃいけないような人間じゃないし。もともと一般市民の生活を記録するために選ばれた対象者だから、月に1回の記録でも特に問題はない。私が付きっきりでいる必要はないのだ。

 「あ、おまえさん午後空いてる?」

「特にこれといって予定はないが、なにを頼もうとしているんだい?」

「店番の方頼みたくて、表の方。客は対して来ないだろうけど。」

「いいよ。どうせもともと当番だった人が来れなくなったんでしょ?」

「この雨でな、屋根の薄いところが溶けちゃったらしくてな。おまえさんに行かせるわけにもいかないし。」

「あーあそこのちょっと薄いところか。酸性雨で溶けたか。」

「そういうこと。頼んだ。」

『彼はなかなかに器用なもので午前のうちに1つと少し組み立てていた。午後になると彼から私に店番を頼みたいということだったので了承した。売れたのは3つ。最近売り出した少し小さめのシンプルなものだった。婦人が買っていったので、自分用の時計だろう。雨の影響で屋根の一部が溶けた。問題となっている酸性雨は早々に解決しないといけない。』

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