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お姉さまの幸せだけ約束された世界で私が幸せになる方法  作者: DAKUNちょめ


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4/4

嫁ぐ姉に本音を暴露する妹。

お姉様に結婚の話が出てからの一週間。


私の今までの『お姉様イジメ度数』が少なかったのか、帳尻を合わせるラストスパートかのような、お姉様に対するお父様の暴力が絶えなかった。

お父様の暴力は「口答えをした」や「こんな事も出来ないのか」を理由に平手打ちや、背中をほうきのような物で打ち据えるものが多いのだけれど、ここ数日は「何だ、その目は」みたいな言いがかりのようなものが多かった。


この世界の神は、お姉様の幸福な未来を約束している代わりに不幸と幸福の差をより大きくしたいのか、嫁ぐまでのお姉様を、よりツライ目に遭わせようとする。

で、そのツライ目に遭わせる為に非道い事をするのが私たち家族で、お姉様がツライ目に遭えば遭うほど私の未来がよりヒドい事なる………

冗談じゃないわよっ!


バシャッ


私は、お姉様がお父様に暴力を振るわれている現場に遭遇しては、毎回二人に(主にお父様)花瓶の水をぶっ掛けるという、盛りのついたうるさい野良猫を追い払うような真似をし続けている。


「いいざまね!お姉様!」


と、毎回衣服の端をちょびっと濡らしたお姉様に言い放つのだけれど。


「濡れ鼠のような、みっともない姿がお似合いよ!」


と、毎回濡れ鼠のように全身がずぶ濡れなお父様を無視して、お姉様にそう言い放つのだけれど。


「あ、アンナぁぁ…」


「目ざわりだわ!早く部屋に行きなさい!

あら大変、お父様がずぶ濡れだわ。」


婚姻の話が出てから一週間後の明日、この邸に辺境伯様の遣いがお姉様を迎えに来る。

だから今日が、お姉様の『不幸』を貯める最後の日。

この後、獄中で寝てる間に凍死とか、なるべく苦痛の少ない最期を迎えたい私としては、もうこれ以上お姉様に『不幸』を貯めさせるワケにはいかない。


「明日まで部屋から出るんじゃないわよ!

あんたの顔なんて二度と見たくないの!」


激しく打ち据えられていたお姉様はスクッと立ち上がり、「はい」と頭を下げるとスタスタと去って行った。

……やっぱり、フィジカルつっよ。

今回のお姉様、お父様の暴力からのダメージは一切受けてないように見えるわ。

だからといって、この先、何かが変わるかもなんて…

そんな期待はしちゃ駄目だわ…

やっぱり何も変わらない…のが私の人生の最期だもの。


「アンナぁぁ…寒い…」


「まぁ大変、お父様が、ずぶ濡れ、だわ。」


そう言葉を残し、お父様を放置して私もその場を去った。

お姉様の『不幸』がどれくらい貯まっているのか分からないけれど、もうこれ以上お姉様をヒドい目に遭わせるワケにはいかない。

部屋にこもっていてもらうわ。

明日、お姉様がこの邸を出るまで!



翌日、辺境伯様の遣いの一行が邸を訪れた。


「へへ…確かに…」


お父様はお姉様と引き換えに、無効となる借用書を受け取り貴族らしからぬ下卑た笑いを浮かべていた。

お姉様は見た目を取り繕うように、普段の薄汚れた侍女服ではなく私のお古の外出用ドレスを着せられていた。


婚姻前の不幸なお姉様の顔を見るのは今日がもう最後。

次に会うのは2年後に行われる私の婚約披露パーティー。

その時のお姉様は、お顔の傷も綺麗に無くなっており、それはそれは美しく、女神のような姿で現れる。

そして、その後の私は惨めに地に墜ちて行く━━


「アンナ」


馬車に乗る前に、お姉様が私に声を掛けて来た。

本来のお姉様は、恐ろしい辺境伯に嫁ぐ事に絶望し、青ざめた表情でフラフラと馬車に乗り込む。

私に声を掛けて来るなんて…こんな事初めてだわ…


「なによ……」


今まで無かった出来事に警戒してしまうと共に、私の心の中に未知に対する好奇心が芽生える。

どれだけたくさんの同じような「今」を迎えただろう。

今回はあまりにも異質で異様で、何かの変化の兆しに思えた。

私は、より不幸になるかも知れない。

それでも、いつもと違う「今」を前に、変化を求める私はどうしても無視出来ない。


私はお姉様に近付いた。

互いに正面を向き顔を合わせる。


「アンナあなたは今、幸せ?」


お姉様の『不幸』を貯める日は昨日で締め切られた。

だから、今から私がどんな真似をしてもお姉様はこれ以上不幸にはならず、私の不幸な将来ももう決定したハズで、それ以上悲惨にはならないハズ。

私が本心を語っても━━


「不幸よ!とても不幸だわ!

私、今からとんでもなく最悪な男と結婚するの!

その男のせいで私、牢屋に入れられて拷問されたり、されなかったりするけど結局、処刑されちゃうの!」


「アンナ……」


お姉様が私の手を握った。

あかぎれだらけのお姉様の手に私の両手が包まれた瞬間、涙が溢れて来た。

どれだけ願っても、祈っても、絶対に覆らない私の悲惨な人生の結末。

次に生まれ変わったら━━が通用しない繰り返される私の運命。


「もう…諦めてるの…私は、投獄されて処刑される運命なのだと…

でも…せめて…生きてる間は幸せを感じたいと思っているの…

私を愛してくれる素敵な男性と恋をしてみたかったわ…

私も心から、その人を好きになって…僅かな間でも幸せな夫婦生活を……」


悲惨な結末を迎えるにしても、たった一度でもいい。

「愛」を知りたかった。「恋」をしたかった。


「アンナ…それがあなたが求める幸せなのね…?」


「あるいはね!

素敵な男性たちに囲まれて愛を囁かれてチヤホヤされてみたかったわ!!」


私はお姉様の手を振り払い、手の甲で涙を拭った。

こんな事をお姉様に言った所で、何も変わらず、どうしょうもない。

でも本音を口にする事が出来て、こんなにも晴れやかな気持ちになれるとは思わなかった。

私は「フフン」と高慢に微笑み、涙を浮かべたままお姉様を見送った。


「さようならアンナ。また会う日まで。」


私をまっすぐ見つめるお姉様は、顔に深く大きな傷があるのに醜さなど一切感じさせず、とてもキレイだった。


今回のお姉様は今までのお姉様と違う。

今回のお姉様は、今まで以上の幸せを掴めるのかも知れない。


私は今日から、自分のために戦わなくてはならない。

結末が変わらないのは百も承知。

ただ、今から出会う私の夫…あの男を、私は

男として絶対に受け入れたくないの。



お姉様が辺境伯様に嫁いでから一ヶ月。

とうとう両親から私に婚約の話が持ち上がった。


私が今の自我を持つまでは、引く手あまたな自分に「どの方にしようかしらぁ」なんてアホみたいに酔っていたけど、今なら分かる。

どいつもこいつも金を持ってるだけのロクでもねぇ男ばかりだと。

親から受け継いだ資産を食い潰しているアホとか

後ろ暗い商売をして稼いでいるアホだとか

高利貸しやら、やらしい店やら、国に申請していない後ろ暗いやつばかり。

しかもオッサンやらブ男ばかりで、見た目良いのがおらん。


姉を辺境伯様に売った両親は、次の金のつてを私に求めている。


「どの方も…選べないわ…」


見た目も良い男じゃなきゃ私にはふさわしくない、と誰も選ばなかった私に、一年後に新しい婚約者候補が現れる。

そして私は二年後に必ず、この男と夫婦になる。


ビューロ・バロバス男爵。

うちより爵位は下だけど、大金持ち。

見た目も良く、人当たりも良く、社交界では割とモテる好青年。

そんな彼が求める妻は、金さえ与えて贅沢させとけば、夫のしている事に何の疑問も抱かない頭の悪い嫁。

そうして選ばれるのが私。


本来の私は夫の悪行を知らず、贅沢三昧の日々を送り、それを幸せだと思っていた。

夫の悪行が世間に曝された時、民衆の憎しみの眼は私にも向けられた。


夫が、国内外の若い女性を誘拐、及び人身売買をしていたと世間が知る事になってから━━




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