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魔法教師の不本意な英雄譚  作者: 南賀 赤井
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11時限目: 最終理論家の逃亡と、安寧を懸けた覚悟



 

 

1.学院長の優雅な逃走

路地裏に立ち尽くすレオン、アリオス・クレメンス、アストレイア・エリュシオンの三者。彼らの目の前で、学院長は、七年前の事件の真犯人、そして**「第三の理論家」であることを優雅に認め、倒れ込む霍乱に手を差し伸べた。

 

「さあ、霍乱君。貴方の『無限の論理』は、まだレオン先生の『有限の安寧』を打ち破っていませんよ。貴方を導いたのは私だ。この理論の完成に必要なのは、より大きなマナの器です」

 

「逃がすか、学院長!」アリオスは、鋼の剣を閃かせ、学院長に斬りかかった。

 

学院長は、その攻撃を杖一本で受け流すと、静かに、しかし強大なマナを解放した。そのマナは、霍乱の理論と同様に光と闇の連環を帯びていたが、その完成度と安定性は、霍乱の比ではなかった。

 

「困りますな、アリオス騎士団長。貴方の『凡庸な実戦理論』では、私の『無限の完成理論』には触れられませんよ」

 

学院長は、霍乱を抱え込むと、自らの理論を「緊急脱出術式」へと強制的に展開させた。空間が歪み、一瞬の閃光と共に、二人の姿は路地裏から消え去った。

 

2.アストレイアの決意と、最終決戦の地

学院長が逃走した直後、アストレイアは、顔色を変えずにレオンに報告した。

 

「先生。今の学院長のマナの痕跡は、ルシアンや霍乱君の理論を誘導していたマナの揺らぎと完全に一致します。そして、彼らが向かった先は、間違いなく『王都地下の古代魔術炉』です」

 

「古代魔術炉は、王都全ての魔力の源。七年前、貴方の理論が暴走した、あの真の実験場です。そこで学院長が『闇のレシピ』を組み込んだ『無限の理論』を完成させれば、王都全体が七年前の悲劇どころではない、理論的な崩壊を迎えます」

 

アストレイアの顔には、聖女としての使命感と、レオンへの個人的な誓いが混じり合っていた。

 

3.レオンの不本意な最終覚悟

レオンは、路地裏に散乱した学院長のマナの残滓を見つめ、深く、深いため息をついた。

 

「チッ、本当に面倒極まりない。安寧を求めて封印した私の理論が、私の『安寧』を奪った真の理論家によって、因縁の場所で『完成』を強制されるとはな」

 

レオンは、手に持っていた冷めた紅茶のカップを地面に置いた。

 

「アリオス、アストレイア。行くぞ。学院長は、私の『最終定理』の完成を望んでいる。ならば、その『完成』によって、奴の『無限の理論』が、いかに低俗で非効率な概念だったかを証明してやる」

 

アリオスは、騎士団長として、王都の危機を前に剣を構えた。アストレイアは、聖女として、レオンの「最終防護壁」となるべく光のマナを収束させた。

 

レオンは、「首を賭けた理論の証明」という最悪の日常から、「世界と安寧を賭けた最終決戦」という、最も不本意な舞台へと進むことを決意した。彼の『魔法教師の不本意な英雄譚』**は、最終章、王都地下の古代魔術炉へと突入する。

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