10時限目: 追跡劇と、安寧を奪った真の理論家
1.路地裏の追跡と、理論家の独白
闘技場から逃走した霍乱を追跡したレオンは、王都魔法学院の裏手にある薄暗い路地裏で、彼を発見した。霍乱は、全身から微かに闇のマナを漏らしながら、精神的な混乱の中にあった。
「馬鹿な…私の**『無限の論理』は完璧なはずだ。私は間違っていない…!この理論こそが、レオン講師の『有限の安寧』を打ち破り、世界に真の普遍性をもたらすのに…!」
霍乱は、自分の理論の敗北と、その根幹に「闇のレシピ」という非人道的な力が潜んでいた事実を受け入れられず、錯乱していた。
レオンは、冷徹な視線で霍乱を見据え、核心を突いた質問を投げかけた。
「霍乱。君の理論の『無限の連環』は、私の『黒歴史』と同一のマナの痕跡を残した。貴様は、その闇のレシピを、一体どこで手に入れた?そして、誰に理論の『誘導』を受けた?」
2.真の黒幕、学院長の出現
霍乱が口を開きかけた、その一瞬。路地裏の影から、優雅な笑みを浮かべた人物が姿を現した。それは、レオンの直属の上司であり、特級魔法大会を強制した張本人、学院長だった。
「困りますな、レオン先生。トーナメントはまだ終わっていませんよ?」
学院長は、冷たい紅茶を啜るレオンの仕草を真似るかのように、片手に持った杖の先で地面を叩いた。
レオンは、その瞬間、全ての点と線が繋がったことを悟った。七年前の事件の全貌、霍乱やルシアンの理論の誘導、そして自分への絶え間ない「面倒事」の強制。
「チッ…アンタが黒幕だったとはな、学院長」
3.七年前の真相と、理論家の傲慢
レオンの言葉と同時に、路地裏の入り口に、鋼の剣を構えたアリオス・クレメンスと、光のマナを収束させたアストレイア・エリュシオンが姿を現した。彼らは、レオンの理論の暴走と闇のレシピの関連を独自に探り、学院長を「第三の英雄」の最有力候補として追跡していたのだ。
学院長は、彼らの存在に驚くことなく、傲慢な笑みを深めた。
「ええ、その通りです。私が、七年前の事件の『真の理論家』ですよ。レオン先生。貴方の理論は『安寧』という低俗な概念に囚われすぎている。貴方は世界を救う『最終定理』を完成させる直前で、『面倒』という理由で封印した。あの傲慢な『封印』こそが、私の理論家としてのプライドを許さなかった」
学院長は、自身が「第三の英雄」であり、七年前、レオンに『最終定理』を完成させる責任』を負わせるために事件を仕組んだ真犯人であることを明かした。
「貴方の『安寧』を打ち破り、『理論の完成』という真の使命へと誘導するのが、私の『無限の理論』の目的です。そのために、闇のレシピの残滓を利用し、ルシアン、リリアーナ、そして霍乱君の理論を誘導した。全ては、貴方が『最終定理』を完成させるためにね」
レオンの「安寧」**を奪い、彼を最も面倒な道へと追いやった真の元凶が、ここに露呈した。




