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魔法教師の不本意な英雄譚  作者: 南賀 赤井
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5時限目: 鋼の騎士と、最速理論の公開特訓





1.最小の労力と、最大の不満

特級魔法学院の裏手にある、警備隊専用の訓練場。大会一週間前、レオンは不機嫌の極みだった。彼の前には、警備隊の隊服姿のアリオス・グレイフが立っている。レオンは**「最小の労力」という信条に反し、自分の首がかかった大会のために、「最も面倒な実戦形式の特訓」を行わざるを得なかった。

 

「チッ、全く面倒だ。なぜ、私が私の理論を、君のような鈍重な騎士相手に公開しなければならない」レオンは、鉄剣を構えながら、目の前の訓練相手に不満をぶつけた。

 

「文句を言うな、レオン」アリオスは鋼の剣を抜き、防御姿勢を取った。「毎年大会の警備を兼ねている私の役割だ。お前の『集中』**がどこまで仕上がっているか、身をもってチェックしてやる。手加減はいらん、来い!」

 

2.レオンの理論と、アリオスの警鐘

レオンは、アリオスの言葉を待たず、一瞬で踏み込んだ。

――『基礎魔力操作学・極致:収束雷光コンセントレーション・ライトニング

それは、マナ収束の極致であり、構築の計算式を極限まで重ねた、レオンの真骨頂だった。アリオスが「軽い魔法の放ち合いか」と油断した瞬間、レオンの鉄剣から放たれた雷光は、騎士の鋼の鎧を叩き割るほどの攻撃的な理論を内包していた。

アリオスは寸前のところで剣で受け止め、訓練場の地面に深くめり込んだ。彼は咳き込みながら、レオンを睨みつけた。


「おい、レオン!今の術式は、相手の術式を内部から崩壊させることを前提としているだろう!お前、人死にが出るようなことは絶対にするなよ!?」


アリオスは、レオンが実戦で用いる理論が、純粋な破壊ではなく、理論的な構造の欠陥を突くことに特化していることを知っていた。


「私より優れた生徒の前では、その言葉は無意味だが?」レオンは、鉄剣の柄を静かに握りしめながら答えた。


「行き過ぎた攻撃をやったら、受け身を知らない生徒は潰されるだろうが!?貴様の生徒は皆、自分の理論に絶対的な自信を持っている!防御の理論を捨てるような傲慢な奴らばかりだ!」


3.騎士と聖女の理解と、理論家の孤独

アリオスの警鐘を聞きながら、レオンは心中でアリオスの言葉の重さを理解していた。


(レオン内心):「アリオスとアストレイアは、この大会の警備を兼ねて毎年会場に来ている。だからこそ、この特級学院の生徒たちの傲慢な実力と、彼らの理論の危うさを誰よりもよく理解している。彼らは、私の**『最終定理』**の危険性を知る、数少ない人間だ」


レオンは、自分の**『集中』が、カイトやリリアーナ、そして霍乱のような傲慢な天才**たちを前に、いかに危険な理論となり得るかを自覚していた。だが、自分の首と安寧のため、理論の優位性を証明する必要があった。


「チッ、口を出すな。これは私の**『黒歴史の清算』**だ」


レオンは、不満と自身の理論をぶつけるかのように、再びアリオスに向けて収束雷光を放った。アリオスは鋼の鎧を盾に、レオンの**「サンドバッグ」となりながら、その理論の殺傷力と美しさ**を身をもって味わっていた。

レオンは、特訓を通じて、**自分の理論が「安寧」とは最もかけ離れた「暴力」**であることを確認し、大会への準備を完了させた。

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