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魔法教師の不本意な英雄譚  作者: 南賀 赤井
22/32

2時限目: 不機嫌な天才たちの理論論争と、レオンの頭痛



 

 

1.「無限」への嘲笑と、レオンの溜息

レオンの研究室。レオンは霍乱の**「無限の論理構築理論」の論文を不機嫌そうに机に広げ、カイトと共同でその術式を解析していた。

 

霍乱は、レオンとカイトの間に立ち、腕を組みながら悠然と二人の作業を見下ろしている。

 

その時、霍乱の理論図を見ていたカイトが、突然、わざとらしいほど大きな声で手を叩き、哄笑した。

 

「ハッハッハッ!『無限』なんて陳腐な考えをお持ちとは!海外の方はなんて凄い発想をしているのでしょうね?」カイトは、嘲りの意を込めて褒め称えながら、霍乱を馬鹿にするように笑った。

 

レオンは、その喧しい声に苛立ち、冷めた紅茶のカップを机に置いた。

 

「チッ。馬鹿にできる程実績のないお前が言っても仕方ないだろ。私の『集中』がなければ、君の『拡散理論』はただの泡だ」

 

2.理論家・霍乱の徹底的な侮蔑

レオンの諫言を一瞥した霍乱は、静かに、しかし絶対的な傲慢さをもって口を開いた。

 

「いえいえ、レオン講師殿。ご心配なく」

 

霍乱は、カイトを頭の先からつま先まで見下ろした。

 

「答えを見ないと式も作れないような低脳には、この完成された理論も理解出来ないのでしょう。カイト・アステル、貴方の噂も予々私の国で武勇伝のように広まっていますよ。代用品でしか成果を得る事が出来ない無能とね。自分の基礎理論すら未完成で、他者の理論に縋らなければ一歩も進めない、哀れな代用品の理論家」

 

カイトの顔色が一瞬で怒りに染まった。彼の「代用品」というコンプレックスを正確に突かれたのだ。

 

3.貴族令嬢の参戦と、三つ巴の理論戦

カイトが反論の言葉を口にするよりも早く、部屋の隅で療養していたリリアーナ・ヴェルトが、その口論に割って入った。

 

リリアーナは、霍乱の傲慢な態度に、王族直系の貴族としてのプライドを刺激された。

 

「特別交換留学生殿。今日来たばかりなのに、さぞかし口のとても達者な、自己満足な方なのですね?」リリアーナは、氷のように冷たい声で霍乱に喧嘩を売った。

 

「他者の理論を罵倒することだけが、貴方の『無限の論理』の成果なのですか?貴方の理論も、『陳腐な傲慢』でしかありません」

 

霍乱は、今度はリリアーナを品定めするように見つめた。その侮蔑には、貴族の階級に対する容赦のなさが含まれていた。

 

「ほう。机上の空論でしか物事を考えられないお嬢様が、わざわざこの私に意見するのはどうかと思いますが?貴方の『血筋依存』の理論など、我が帝国の理論から見れば、最も非合理的で脆い砂上の楼閣。理論家として未熟な貴方が、口を出すべきではない」

 

レオンは、自分の研究室で繰り広げられる三人の天才理論家による、理論とプライドを巡る、最も面倒で非効率な口論を眺め、深い、深いため息をついた。

 

「チッ…私の安寧は、どこへ行った」

 

レオンは、冷めた紅茶を一口飲み、この面倒極まりない三角関係を、「最終定理」という共通の敵に向かわせるための、新たな「教師」**としての使命を、不本意ながら受け入れた。

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