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魔法教師の不本意な英雄譚  作者: 南賀 赤井
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3学期プロローグ: 最終定理の再起動と、藍帝国の挑戦状



 

 

1.研究室の不協和音と、理論の再構築

王都魔法学院の研究室。レオンとカイトの**「集中・拡散融合理論」による不本意な共同研究は、始まっていた。カイトは効率を無視したレオンの理論設計に、レオンはカイトの皮肉と傲慢さに、常に不機嫌だった。

 

「カイト、この部分の『多層拡散要素』は、安定化に繋がらない。論理を構築し直せ。私が封印した『最終定理』は、君の理論の非効率な部分を許容しない」

 

「先生。貴方の『集中』こそが、私の理論の普遍性を損なっています。貴方の理論は、結局、貴方の私的な『安寧』という曖昧な概念に依存している。理論家として、それは致命的な欠陥ですよ」

 

二人の論争は絶えなかったが、その理論は確実に『最終定理』の封印された核心へと近づいていた。アリオスが特定した「王都地下の古代魔術炉」での最終決戦に向けて、レオンの理論は、第三の英雄のマナの揺らぎに「誘導」されながら、予期せぬ速度で進行していた。

 

2.藍帝国からの使者、霍乱かくらんの登場

そんな不機嫌な研究室に、一人の生徒が、特級学院の華美な制服とは異なる、東方の神秘的な刺繍が施された藍色の制服を纏い、静かに現れた。彼は、遠方の藍帝国から、特別交換留学生として招かれた、霍乱かくらんと名乗った。

 

霍乱は、レオンに一冊の古びた羊皮紙の巻物を差し出した。その巻物には、緻密すぎるマナの術式が、極めて流麗な筆致で書き込まれていた。

 

「レオン講師殿。私は、遠き藍帝国より、貴方の『基礎魔力操作学』の普遍性を深く尊敬しております。この論文は、我が帝国の至宝とされる『無限の論理構築理論』を基に、貴方の『集中・拡散融合』の理論的盲点を指摘するものです」

 

レオンは巻物を乱暴に開き、その内容を一瞥した。そこに描かれていたのは、レオンが『最終定理』で最も克服できなかったとされる、マナの連環と持続性の「理論的限界」を、無限に超克するという、恐るべき理論だった。

 

霍乱は、静かに微笑んだ。「貴方の理論は、『安寧』という有限の概念に囚われています。究極の理論とは、『無限の論理』を構築し、全ての法則を超越すること。貴方の理論は、その第一歩にすら到達していません」

 

3.レオンの理論への新たな難題

霍乱の提出した論文は、レオンとカイトの論争を一瞬で吹き飛ばし、研究室を静寂で包んだ。カイトは、霍乱の理論図を見て、初めて「理論家としての圧倒的な敗北感」を顔に浮かべた。リリアーナは、霍乱の理論の「血筋に依存しない普遍性」に、自らの理論の非合理性を痛感させられた。

 

(レオン内心):「チッ、本当に面倒だ!『最終定理』の完成に向けて、過去の因縁と戦う準備をしていたところに、今度は『無限の論理』だと!?私の理論の『有限性』を嘲笑っているのか!」

 

レオンは、冷めた紅茶を一口飲む。彼の目の前には、「第三の英雄との因縁」という過去の面倒と、「藍帝国の無限の論理」という未来の面倒という、二重の挑戦状が置かれた。

 

レオンは、霍乱の論文を無造作に机の上に放り投げた。

 

「分かった。藍帝国の使者殿。私の理論が『有限』であるかどうかは、私の『最終定理』が完成した時に証明してやる。しかし、私の研究室の安寧を乱すな。君の『無限の論理』も、私の面倒な研究の『基礎』として、不本意ながら利用させてもらう」

 

レオンは、「無限の論理」という新たな難題を、自身の「理論の完成」**という使命に組み込み、過去・現在・未来の理論戦へと、不本意ながらも進むことを決意した。

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