表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法教師の不本意な英雄譚  作者: 南賀 赤井
19/32

8時限目: 最終定理の再起動と、第三の理論家の招待状



 

 

1.不本意な共同研究の開始

王都魔法学院の研究室。特級学院での騒動が収束し、レオンの安寧は一時的に回復したが、研究室は以前よりも遥かに騒がしくなっていた。部屋の片隅にはカイトの理論計算用の魔道具が置かれ、レオンの実験器具とごっちゃになり、非常に**「面倒」で非効率な状態だ。

 

レオンは、ルシアンとの戦いで得た「集中・拡散融合理論」の設計図を前に、カイトに命じた。

 

「カイト。君の特別矯正プログラムの内容を変更する。君の『拡散理論』を核に、私が封印した『最終定理』を再構築する。これは私の理論の完成であり、君の理論の矯正だ」

 

「…光栄です、先生」カイトは皮肉を込めて言った。「私の理論が、先生の『黒歴史』の完成に役立つとは。しかし、『集中』と『拡散』という矛盾した二つの基礎を融合させるのは至難の業です。非効率極まりない」

 

「黙れ!理論家なら、不可能な矛盾を解決しろ!」

 

二人の共同研究は、レオンの罵倒とカイトの皮肉が飛び交う、「最も効率が悪く、最も困難な」道として始まった。しかし、二人の天才の協力は、マナの揺らぎに「誘導」されながら、予期せぬ速度で進行し始めた。

 

2.アリオスの情報と、聖女の悲壮な決意

研究に没頭するレオンに、アリオスが七年前の悲劇の記録と、ルシアンの逃走時のマナの痕跡を照合した報告書を持ってきた。

 

「レオン。ルシアンのマナの痕跡は、七年前の悲劇が起こった場所、王都地下の古代魔術炉へ続いている。第三の英雄は、そこで『最終定理』の完成を待っている可能性が高い」

 

アリオスの報告は、レオンの「黒歴史」の清算が、過去の因縁の場所で行われることを示唆していた。

 

その情報を受け、レオンの隣で控えていたアストレイアが静かに進み出た。

 

「レオン先生。あなたが『最終定理』を完成させれば、その力は『古代魔術炉』の膨大なマナと共振し、七年前の比ではない、王都全体を巻き込む暴走を引き起こします」

 

アストレイアは、レオンの決意を揺るがすことはできないと悟っていた。彼女は、「最終定理の暴走」を防ぐための聖女の術式の研究に、自らの全てを捧げることを決めた。

 

「私は、あなたの理論の完成を止めません。しかし、もしその理論が世界を破壊するなら、私の命と聖なるマナの全てをかけて、最終防護壁となる。それが、監視役としての私の最後の務めです」

 

3.第三の理論家の最終招待状

夜遅く。レオンがカイトと理論設計の最終段階に差し掛かったその時、研究室の空気が一変した。

 

研究室の空間に、光と闇のマナが絡み合った、静かで完成度の高い理論図が浮かび上がった。それは、第三の英雄からのマナ通信だった。

 

『理論の完成、おめでとうございます。レオン先生。七年の時を経て、ようやく貴方は理論家としての責務を果たそうとしている。理論の完成の時、地下魔術炉で待つ』

 

それは、レオンへの挑戦状であり、理論の完成を求める「招待状」であり、そして、レオンが研究を止められないよう仕掛けられた精神的なトラップだった。

 

レオンは、冷めた紅茶を一口飲み、招待状を握りしめた。彼の顔には、教師としての責務、発明者としての怒り、そして自分の「安寧」を取り戻すための「最後の清算」への覚悟が静かに宿っていた。

 

「チッ、本当に面倒極まりない。安寧を求めたはずが、結局は、最も危険な場所で、最も面倒な理論を完成させなければならないとは……」

 

レオンは、自分の「黒歴史」の清算と、真の安寧を得るため、第三の英雄が待つ「究極の理論戦」へと、不本意ながら進むことを決意した。彼の『魔法教師の不本意な英雄譚』**は、第三部へと突入する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ