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魔法教師の不本意な英雄譚  作者: 南賀 赤井
15/32

4時限目: 理論の暴走と、三者の突入作戦



 

1.演習室の崩壊と、レオンの理論戦

特級学院の特別演習室。レオンの指摘に激昂したリリアーナは、自らの**「光と闇の共存理論」**の優位性を証明するため、危険なマナ制御を続行した。

 

「違います、レオン講師殿!これは強制融合ではない!これは究極の調和です!」

 

リリアーナの身体から湧き出すマナは、彼女の血筋でも制御しきれず、光と闇が互いに打ち消し合い、演習室の空間そのものが真空崩壊寸前の危険な状態に陥った。リリアーナの瞳から涙が流れ出す。彼女の命が危険に晒されていた。

 

「チッ、本当に面倒だ!」

 

レオンは、鉄剣を抜き放ち、リリアーナへ向けて構えた。彼は、破壊ではなく、理論を打ち消すための高度な術式を発動する。

 

――『基礎魔力操作学・極致:共振破壊レゾナンス・ブレイク

 

レオンは、リリアーナの理論が持つ**「不安定なマナ特性」と完全に逆位相の「共振術式」**を極限まで圧縮して放った。この術式は、リリアーナの理論に干渉し、光と闇の強制融合を打ち消すための、理論家レオンの真骨頂だった。

しかし、レオンのカウンターがリリアーナの暴走を収束させようとした瞬間、特級学院の敷地、王族旧書庫の方角から、強大な遠隔操作のマナがレオンの術式に干渉してきた。

 

バチィン!

 

レオンの**『共振破壊』**が外部から打ち消され、リリアーナの暴走が一層加速した。

 

(レオン内心):「やはり、遠隔で操作してきたか!私の**理論を理解した上で、打ち消してきた!**これは生徒の暴走ではない、第三の理論家との理論戦だ!」

 

2.騎士の決行と、聖女の支援

演習室の崩壊寸前のマナの異常を察知したアリオスは、既に学院門前に集結させていた警備隊へ、迷いなく命令を下した。 

 

「王族の許可を待つな!特級学院へ、**強制捜査を敢行する!目標は、旧書庫にある『禁断理論研究会』**の壊滅だ!」

 

アリオスは、**「私情の復讐」ではなく、王都を守る「騎士」**としての決断を下し、特級学院という貴族の牙城への突入を開始した。

一方、演習室では、アストレイアが崩れ落ちたリリアーナを抱きかかえていた。リリアーナはマナの暴走で意識を失っていたが、聖女の光により命は保たれている。

アストレイアは、レオンとアリオスの双方の目的を理解し、自身のマナを放出する。

 

――『夜明けの聖女・助力:光の道標ガイド・オブ・ライト

 

彼女の聖なるマナは、王族旧書庫を覆う厳重な結界を一時的に弱め、同時に、その結界の**「マナの通り道」をレオンとアリオスに示唆した。アストレイアは、治療という人道的な目的と、情報提供という監視役の役割**を同時に果たした。

 

3.理論の融合と、レオンの最終決断

レオンは、リリアーナをアストレイアに託し、鉄剣を収めた。

 

「頼む、聖女殿。彼女の**『理論』を救うことはできないが、彼女の『命』**は救ってくれ」

 

レオンは、旧書庫へ向かう警備隊の動きを感知し、一瞬躊躇した。第三の理論家の元へ直行すべきか、それとも。

レオンは、踵を返し、警備隊とは逆方向、学院の隅にあるカイトの隔離研究棟へと、雷光の速度で向かった。

 

(レオン内心):「第三の理論家は、私の理論を打ち消した。私の**『集中と効率』だけでは、奴の『完成された光と闇の理論』**には勝てない。私の安寧を回復させるには、最も嫌で、最も非合理な手段を取るしかない」

 

隔離研究棟に飛び込んだレオンは、呆然とするカイトに叫んだ。

 

「カイト!君の**『拡散の力』の理論が必要だ!奴の『光と闇の共存』を打ち破るには、『集中と拡散』、私の理論と君の理論を『強制融合』**させる必要がある!」

 

レオンは、自分の信条である**「最小の労力」を完全に捨て、かつて否定した「カイトの理論」を利用するという、最も面倒で非合理的**な最終決断を下した。

 

特級学院の地下で、今、過去の因縁と、二人の天才の理論が、第三の理論家を打ち破るために、不本意な融合を果たそうとしていた。

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