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魔法教師の不本意な英雄譚  作者: 南賀 赤井
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3時限目: 強制個別指導と、理論の盲点



 

1.理論の深淵への「個別指導」

特級学院の特別演習室。レオンは、リリアーナ・ヴェルトに対して、他の生徒には決して行わない**「応用マナ制御の特別個別指導」を課した。それは、カイトの時と同様、表向きは指導だが、その実、リリアーナが持つ「第三の英雄の理論」**の盲点を強制的に探り出すための理論的攻撃だった。

 

「リリアーナ君。君の血筋に刻まれた**光と闇のマナの『共存』は、確かに美しい。だが、それは非合理的な『血筋依存』の理論だ。私の基礎魔力操作学では、『血筋』**などという曖昧な要素は安定化の根拠にならない」

 

レオンは、挑発的な言葉を投げかけた。彼は、リリアーナの理論の根幹である「光と闇の共存」は、**「基礎」**が伴わないと自壊すると知っていた。

リリアーナは、レオンの言葉に侮蔑を隠さなかった。

 

「レオン講師殿。あなたの理論は古すぎます。私たちが目指すのは、外的な触媒に頼らない、術者自身の存在を基盤とした究極の力です。あなたの**『安寧を求める基礎』**など、私たちの理論の足元にも及びません」

 

リリアーナは、レオンの目の前で、自身の理論の優位性を証明しようと、**禁断の理論の「簡易版」**を実演に移った。彼女の全身から、眩い光のマナと、禍々しい闇のマナが同時に湧き上がり、周囲の空間を歪ませ始めた。

 

「見てください。これが、共存シンバイオシスです!私の血筋は、貴方の理論が否定した究極の安定化要素です!」

 

2.聖女の介入と、理論の「鍵」

リリアーナが理論の実演に移った瞬間、演習室の隅に控えていたアストレイアの顔色が青ざめた。

 

(アストレイアの通信):「レオン先生、すぐに止めろ!その理論は**『完成』に近づいている!彼女の身体の光と闇のマナの比率が、七年前の悲劇の際に『暴走』**した時のマナ特性と完全に一致している!危険です!」  

 

アストレイアは、霊的なマナを通じて、リリアーナの術式が彼女自身の命を危険に晒すことをレオンに強く伝えた。彼女の介入は、レオンの私的な復讐心を抑えつつ、決定的な情報を提供した。

 

「チッ、面倒だ」

 

レオンは、その情報を受け取り、リリアーナの理論の**「崩壊点」を確信した。リリアーナの光と闇の共存は、七年前、第三の英雄がレオンの理論を暴走させるために利用した「特定の不安定なマナ特性」**と酷似している。その不安定さを利用すれば、理論は崩壊する。

レオンは、鉄剣の柄を静かに握りしめた。

 

「リリアーナ君。君の理論は、**『共存』ではない。それは、『強制融合』**だ」

 

3.騎士の捜査と、禁断研究会の特定

時を同じくして、学院外部では、アリオスがカイトの情報と警備隊の過去の記録を照合する捜査を続けていた。

アリオスは、ついに特級学院とヴェルト侯爵家が関わる**「非公式・禁断理論研究会」の存在を突き止めた。それは、表向きは古代魔術研究会だが、実態は、七年前の悲劇の真の黒幕たちが、「第三の英雄の理論の完成」**を目指すための隠れ蓑だった。

 

「やはり、特級学院こそが全ての闇の根源だったか」

 

アリオスは、研究会の場所が、特級学院の敷地内にある**「王族専用の旧書庫」であることを特定した。彼は、この研究会を即座に潰さなければ、レオンの理論だけでなく、王都全体が危機に瀕すると確信し、単独での突入ではなく、警備隊による特級学院への強制捜査**の準備を始めた。

レオンの指導、アストレイアの警告、アリオスの捜査。三人の情報と行動は、特級学院という牙城で一つに収束しつつあった。

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