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魔法教師の不本意な英雄譚  作者: 南賀 赤井
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2学期プロローグ: 最も面倒な罰と、王族からの挑戦状



 

1.事件の代償:大量の報告書と特別矯正プログラム

貴族街での事件の事後処理は、レオンにとって何よりも面倒なものとなった。王族の儀式を混乱させた責任は重かったが、最終的に「虚無浸食」の脅威を阻止した功績が勝り、レオンは**「厳重注意」**という形で決着した。

しかし、真の罰は、彼の最も嫌いな作業だった。

 

「チッ、全くふざけた話だ!」

 

レオンは研究室で、山のように積まれた警備隊と魔法評議会への報告書を前に、苛立ちを隠せない。全ては「マナの流れを乱した非合理的な行動の経緯」を詳細に記述せよ、というものだ。

 

「安寧を取り戻した代償が、この大量の書類仕事とは……私の最も嫌いな作業だ」

 

そして、もう一つ、彼の安寧を脅かす処遇が決定した。捕らえられたカイトは、令嬢の記録や彼の目的が考慮され、**警備隊の厳重な監視下で、レオンの監督のもとでの「特別研究矯正プログラム」**を受けることになった。

「教師の権限」という名目で、レオンは最も手がかかる、自分の理論を悪用した教え子の面倒を、不本意ながら見ることになったのだ。

 

2.騎士の誓いと聖女の決意

研究室を訪れたアリオスは、報告書に埋もれるレオンを一瞥し、静かに言った。

 

「カイトの供述と令嬢の記録から、真の黒幕は、王族と繋がる者で間違いない。貴様を救った借りはできた。だが、貴様の私情は許さない」

 

アリオスはレオンに背を向けた。

 

「貴様の『黒歴史』の真実を暴き、貴様が背負った罪の重さを精算するのは、警備隊である私だ。貴様は講師業に専念しろ」

 

レオンは無言で、カイトが残した羊皮紙の一部を机の上で滑らせ、アリオスに渡した。「勝手にやれ。ただし、私の授業の邪魔をするな。その紙切れには、奴らの次の理論のヒントが隠されている。活用しろ」

アリオスはそれを掴み、レオンへの間接的な協力を受け入れた。

入れ替わるように現れたアストレイアは、レオンの隣に静かに座った。

 

「レオン先生。私がここにいるのは、もはやレシピの拡散を防ぐためだけではありません。あなたは真実から目を背け、再び一人で罪を背負うことを選んだ。私は、闇の真実があなたを再び孤独にさせ、闇に囚われるのを防ぐためにここにいます」

 

アストレイアは、「監視役」という名目を盾に、レオンの最も個人的な領域、つまり心の安寧を守ることを決意したのだ。

 

3.第二部への火種:王族からの強制異動

レオンが、ようやく書類の山を片付け、冷めた紅茶を口に運んだ、まさにその時。

 

王族直属の使者が、豪華な紋章を掲げた厳重な封書を携えて研究室に現れた。

 

「レオン・アークライト講師殿。王家より、直々の辞令でございます」

 

レオンが封書を破くと、その内容は、彼の安寧を真っ向から破壊するものだった。カイトの背後に浮かび上がった、七年前の悲劇の真の黒幕である可能性の高い王族直系の貴族が管轄する。

 

「王立特級魔術学院」への「特別講師」異動命令。

 

「ふざけるな。私の安寧を乱すな!」レオンは激怒した。

しかし、使者は冷静に付け加えた。

 

「この異動は、カイト・アステル学生の特別研究矯正プログラムを特級学院で行うという条件付きです。先生の教育能力は王家も認めるところ。最も手のかかる教え子を見捨てることは、講師としての職務放棄となります」

 

王族側は、レオンの能力と、彼の**「教師としての責任感」**を完璧に利用し、彼を自らの監視下に置こうとしていたのだ。

レオンは、拳を机に叩きつけ、深い、深い溜息をついた。

 

(レオン独白):「本当に面倒極まりない。安寧を求めたはずなのに、なぜ私は、最も面倒で、最も過去の因縁が渦巻く場所へと強制移動させられるんだ……」

 

しかし、彼の胸には、カイトの矯正という**「教師」としての責任と、自身の理論を弄ぶ真の黒幕への「発明者」としての静かな怒り**が沸き起こっていた。

 

レオンは、新たな戦場となる「王立特級魔術学院」へ向かうことを、不本意ながら決意した。彼の**『魔法教師の不本意な英雄譚』**は、最も華やかで、最も危険な貴族の牙城で、第二部へと突入する。

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