二十章 恐怖の時間
時間不明。
師匠と共にレムフィトに入った私は周りを探索していた。
「通信機器はやっぱりダメですね」
ソラは電源が入らない携帯端末を見てそう言った。
「この神気濃度じゃ無理か・・・」
アイリアは神気計測機を見てそう言った。
「これ・・・すごい街並みですね。綺麗なのに不気味です・・・」
ソラは周りを見てそう言った。
「これが私が小さい頃に見たレムフィトだよ・・・どういう訳か、元に戻ってる・・・」
アイリアは旧王宮と旧議会堂を見てそう言った。
「神気が起こした異常現象が原因でしょうか」
ソラはアイリアを見てそう言った。
「そうだろうね」
アイリアは妙に色彩がはっきりとした空を見てそう言った。
「綺麗だよね」
テルメスは旧王宮と旧議会堂を見て笑みながらそう言った。
「ッ!!」
ソラとアイリアはいつの間にか隣にいたテルメスを見て驚き飛び退いた。
「梨々香が見たらすごく喜ぶと思わない?」
テルメスはソラとアイリアを見て笑みながらそう言った。
気配が一切ない・・・
この不可思議な存在には師匠すら驚いている。
「・・・お前は誰だ・・・味方ではないということだけはわかるが・・・」
アイリアは黒鞘に納まった刀に手をかけながらそう言った。
「ごきげんよう。砲神テルメス・クレイス・ガンズです。あなたたちは暗黒神と呼んでいるみたいね」
テルメスは優雅にお辞儀しながらそう言った。
「ソラ・ド・マーカム、烏輪の勇者です。弱者故、武器に手をかけさせてもらっている」
黒鞘に納まった刀に手をかけたソラはテルメスを見てそう言った。
「よろしい」
テルメスはソラを見て笑みながらそう言った。
「天道の勇者、アイリア・カルティナーレ・シュペー。君のことは梨々香から聞いたことがない」
黒鞘に納まった刀に手をかけたアイリアはテルメスを見てそう言った。
「ラーフィアに遊ばれちゃうくらい弱い君たちに話しても価値ないからね」
テルメスがアイリアとソラを見てキャッキャと笑いながらそう言った瞬間、アイリアの顔を優しく掴んで引き寄せた。
めまいがするような濃密な蒼色の神気が視界に入った瞬間、頭から血液がなくなるような感覚に襲われて立てなくなった。
鼻血が止まらない・・・間違いなく神気浸食症だ。
神気が見えた一瞬・・・あの一瞬で神気浸食症が発症したんだ。
抗神気服や耐神気制服を一瞬で突き破ってくる神気があるなんて信じられない・・・
この砲神という存在は何なんだ?これが暗黒神なのか?
「なぜ瞳に夜華の欠片を宿しているの?」
テルメスはアイリアの瞳を見てそう言った。
「・・・」
アイリアは冷や汗を垂らしながらテルメスを見つめる。
「まぁ、良い」
鼻血をボタボタと垂らすソラを横目で見たテルメスはそう言うとアイリアの顔を離した。
「お前のような人間、相手にならない」
テルメスはアイリアを見てそう言うとソラに蒼色のハンカチを差し出した。
ハンカチを受け取って鼻に当てた瞬間、神気浸食症の症状が治まった。
こいつの舐めプをチャンスだと考えた私は必死でこの存在の正体を探る。
スカートについている銅板のような色の布、ここに拳銃のようなものがある。
この拳銃に何か書いてないだろうか。何か・・・・
私が拳銃のようなものを見つめていると、砲神が私の目線に反応を示した。
「この拳銃が気になる?」
テルメスはソラを見て笑みながらそう言うと金色の本体に赤いグリップがついた拳銃を取り出した。
「・・・はい・・・」
ハンカチで鼻を押さえるソラは金色の本体に赤いグリップがついた拳銃を見てそう言った。
「P-08って言う拳銃で彼が持っていたんだ。これはそのP-08を基に私が創り出した武器なの」
テルメスは嬉々としてそう語ると金色の本体に赤いグリップがついた拳銃をしまった。
「あぁ、森羅の地で見た彼をお前たちにも見せてやりたい・・・」
テルメスはソラとアイリアを見て笑みながらそう言った。
「あの全身の神気が沸騰するような熱、全身が凍りつくような覇気、流水の如くしなやかで精密な技、稲妻のような速さ、岩のような頑丈さ、嵐のような荒々しい術・・・」
テルメスは高揚しながらそう言った。
「コホン。失礼、取り乱しました」
咳払いしたテルメスはソラとアイリアを見てそう言った。
「・・・」
ソラとアイリアはテルメスを見て困惑している。
「梨々香に会ったら伝えて」
テルメスがそう言うと青白い霧が現れ始めた。
「・・・」
ソラとアイリアは周りを漂う青白い霧を見た。
その瞬間、雨と土の匂いが漂い、異音と共に辺り一帯の地面から青色の神気結晶が生え、空中に身の毛がよだつ白色の界が現れた。
「ッ!!」
ソラとアイリアは驚きながら白色の界を見る。
「お前のことは私が必ず殺すって」
テルメスはソラとアイリアを見て笑みながらそう言うと従者と共に界の中に消えた。
白色の界が消えた瞬間、地面から生えた青色の神気結晶が崩れた。
「・・・あの小娘・・・どっか行きやがったよ・・・」
魅惑は歩みを進めながら怒りが籠った声でそう言った。
「魔甘・・・」
アイリアは魅惑を見てそう言うと、最上大業物日炎を握り込んだ。
「こんな空間・・・どう保てって言うんだよ・・・」
魅惑は怒りが籠った声でそう言うと浮かび上がった。
「・・・ヤバいですね。これ・・・」
最上大業物天現烏輪を握ったソラは魅惑を見てそう言うとハンカチをしまった。
「すごい威圧感だけど・・・さっきので感覚バグった・・・」
最上大業物日炎を握ったアイリアは魅惑を見てそう言った。
繋がった通信から伝えられる界創空間の縮小、制限時間は三十分
ついに第五魔塊魅惑との決戦が始まる
次回
二十一章 最高の師弟