二章 烏輪の勇者、町を巡回する
第五魔塊、魅惑。
この魔塊が放つ魅惑の蜜は心の奥底にある根に作用するため、生まれつき強い者だけが蜜に打ち勝つことができる。
何か勝機を掴んだのだろうか、その魅惑が七百年以上ぶりに活動を始めた。
同年、四月八日。
「なんですか?それ」
ソラは厳重に梱包された箱を開けるアイリアを見てそう言った。
「魔甘の痕跡だよ。代わりに提出してくれってミッケから預かった」
師匠は箱を開けて箱に見合わないくらい小さな瓶を取り出した。
南方剣士団の総長を務める生きる伝説、ミッケ・ローゼ・カーリンは師匠の友であり曙陽の勇者である。
左腕と右足と左目を失った状態で死星ラーフィアと戦った化け物だ。
「これが魅惑の蜜ですか。安価な燃料みたいな感じですね」
ソラは魅惑の痕跡を見てそう言った。
「まぁ、粘度が高いだけの液状神気だからほぼ同じだよ。アティア+リュピターか、アティア+アマテラスかの違いだけ」
アイリアは魅惑の痕跡を見てそう言った。
「アティア+アマテラスの組み合わせを持つ魔塊っているんですかね?」
ソラはアイリアを見てそう言った。
「いるかもしれない。どんなことでも可能性は捨てちゃいけない」
アイリアはソラを見てそう言った。
一日の業務が始まると、私は剣士を連れて町に出た。
北方剣士団がある場所は北燦雪大都ゴールデンクラウド区東。
人口一千万人ほどのやや大きい町である。
「今日も平和だね」
ソラは周りを見ながらそう言った。
「そうですね」
北方剣士団の剣士1は周りを見ながらそう言った。
「そう言えばさ」
「はい」
「また元執政部の不祥事が見つかったよね」
「執政部は息をするように不祥事を起こしてましたからね」
執政部という組織は様々な不祥事を起こして遥か昔に解体された。
やることは名前の通り。創設理由は両陛下不在の際、代わりに政治を行う組織が必要だと考えられていたから。
執政部の不祥事は今も定期的に見つかっているが、そのほとんどはとても細かなもので容疑者も遥か昔に死亡しているため立件されない。
しかし、今回の事件はただの事件ではないようでかなり大掛かりに調査が行われている。
「消えた十万リズでしょ?というか、個人で十万リズなんて使えないでしょ」
ソラは考えながらそう言った。
「まぁ、外界の執政神に流れたんでしょうね」
北方剣士団の剣士2はソラを見てそう言った。
「それ大問題でしょ?もしそうだとしたら回収できるの?」
ソラは北方剣士団の剣士2を見てそう言った。
「できなくても回収するしかないですよ」
「財務長官たちも忙しくなりそうだね」
ソラは周りを見ながらそう言った。
「忙しくなるでしょうね。まぁ、梨々香陛下が何とかしそうですけど・・・」
北方剣士団の剣士2はソラを見て笑みながらそう言った。
「この辺は平和だから教会の方に行こう!」
ソラは北方剣士団の剣士たちを見て笑みながらそう言った。
「勇者様が行きたいだけでしょ・・・それ」
北方剣士団の剣士1はソラを見て苦笑いしながらそう言った。
「聖職者たちが困ってるかもしれないじゃん!行こう!」
ソラは北方剣士団の剣士1を見て笑みながらそう言うと、軽い足取りで教会に向かい始めた。
子供を見るような目でソラを見て笑む北方剣士団の剣士たちはソラについていく。
烏輪の勇者ソラは万象教北燦雪連総本部で恩神である華千﨑 華に出会う
次回三章 烏輪の勇者、世界教皇に会う




