十二章 決着、天道の勇者対魅惑魔塊第七番眷属
(こいつ・・・何者だ?)
烏輪の剣技で回復するアイリアは滑りながら止まってファルフを見る。
「ただ振り、ただ斬る・・・その程度の剣技では私を斬ることはできない」
ファルフはそう言うと黒い炎を纏った闇の刀を握り込んで構えた。
「剣技、陽龍牙突」
ファルフはそう言うと黒い炎を纏った闇の刀で刺突の構えをとった。
その瞬間、黒い炎の龍が闇の刀から現れて地面を抉りながらこちらに迫ってきた。
「天道!十字炎翔!!」
アイリアは十字を描くように最上大業物日炎を振る。
すると、空中に炎の十字が現れた。
師匠は炎の十字を蹴って飛ばした。
炎の十字は螺旋状に回転しながら黒い炎の龍に近づく。
炎の十字と黒い炎の龍は激突すると同時に大爆発を起こして相殺された。
その時、最上大業物日炎を握り込んだ師匠が爆炎に飛び込んだ。
「・・・」
アイリアが振った最上大業物日炎がファルフの頬から鼻頭にかけてズバッと斬った。
「・・・」
ファルフは黒鞘でアイリアの腹部を突いて吹き飛ばした。
「・・・」
着地したアイリアは瞬時に最上大業物日炎を構えた。
「・・・これは・・・私の血液か?」
頬に触れたファルフは液状闇を見て驚きながらそう言った。
「天道!灼華炎冠!!」
最上大業物日炎を握ったアイリアはファルフに斬りかかった。
「・・・」
ファルフは目を見開いて液状闇を吐き出した。
今度は刀だけじゃない!胸まで斬った!
次の一撃で行ける!
(私は・・・なぜ刀を振るっていた・・・守るものは・・・もうないではないか・・・)
アイリアが最上大業物日炎を構えたその時、ファルフが闇の刀を落として崩れるように地面に両膝を突いた。
次の瞬間、魔塊眷属の足が灰になって崩れてそこから連鎖的に全身が崩れた。
私と師匠は驚き、困惑しながら灰になるファルフを見つめる。
飛び散った灰の中から出てきたのは、古びた神軍部隊長級柄の階級章だけだ。
「ドミニク様!天道大聖たちがもうリュスカの地に!」
慌てた魅惑魔塊三番眷属テルマソは跪いてそう言った。
「ちょっと早くない・・・?あんたの予想と全然違うんだけど」
甘幻眼、白髪ロングヘア、カラフルな飴玉がたくさん付けられた黒色のワンピースで身を包んだ乙女のような女性、第五魔塊魅惑は化粧をしながらそう言った。
「烏輪大聖の小娘があそこまで強力な回復術を有しているとは思っておらず・・・!」
冷や汗をかいたテルマソは魅惑魔塊を見てそう言った。
「言い訳なんて求めてないんだよ・・・雑魚」
化粧道具を置き、振り向いた魅惑はテルマソを見てそう言った。
「も、申し訳ございません!」
冷や汗を垂らすテルマソは必死にうつむいてそう言った。
「言われてやっと謝るのかよ・・・そんなだからずっと雑魚のままなんだよ・・・」
姿勢を戻した魅惑はそう言うと化粧をし始めた。
(自分だってあの風男から逃げた癖に・・・このババア・・・)
テルマソは魅惑の後姿を見た。
「今、なんて考えた?」
魅惑は化粧しながらそう言った。
「え?いや・・・別に何も・・・」
テルマソは魅惑を見て動揺しながらそう言った。
「心の言葉、全部聞こえてんだよ・・・」
魅惑はそう言うと振り向いた。
その瞬間、テルマソが弾け飛び部屋に液状闇が飛び散った。
化粧を終えた魅惑は立ち上がって歩いて部屋から出た。
ファルフを倒したソラとアイリアは北方剣士団の状況を確認する
次回
十三章 状況確認、そして、治療と休息