表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦場の紅蓮姫  作者: エル
フレスト砦編
95/247

第17話『砦の守り火』11

ロークの咆哮とともに、双剣が斬り裂く。

敵の隊長もそれに応じるように剣を振るい、再び激しい金属音が狭路に響く。


剣と剣がぶつかり、擦れ、押し合い――

二人の武器は互いの体を裂かんと、すれすれの距離で交錯を続けていた。


「っ……速い……!」


ノアが片膝をついたままその様子を見つめる。

すでに彼女の足にも深い切り傷が刻まれ、呼吸も荒い。

しかし、


「次っ……!」


ノアが低く息を吐き、斧兵との間合いを詰める。

足を引きずるように回り込み、低姿勢のまま――


「そこ!」


ガッ!


ノアの短剣が斧兵のふくらはぎへ突き刺さる。

体勢を崩した斧兵が呻いた次の瞬間――


クラウスの剣が重々しく振り下ろされ、斧兵の肩から深く入り込んだ。

叫びもなく、斧兵が崩れ落ちる。


その直後――


「うらぁ!!!」


ロークの双剣が、敵隊長の胴を左右から挟むように切り裂いた。


「っ……ぐ……」


隊長は一歩、二歩と下がったが――

ロークの最後の踏み込みが、その胸元へ深く短剣を突き刺す。


「これで……!」


振り抜かれた双剣が弧を描き、敵の剣が宙を舞う。


隊長は目を見開いたまま、前のめりに崩れ落ちた。


「はぁ……っ、終わった……か」


ロークは膝をつき、肩で荒く息をする。


その一方で――


「もうっ、氷鎌ひょうれん!」


ルネの氷魔法が、左の建物の魔法兵に襲いかかる。


「はぁはぁ、水槍すいそう!」


ラシエルの魔法が右の炎魔法を弾く。


そして次の瞬間――


魔法攻撃が止んだ。


魔法兵たちは、前衛の全滅を悟って逃走した。

通路に魔法が飛び交う気配は、ついに完全に消えた。


「……………追えませんからね」

最初に言葉を発したのはラシエルだった。


「……私も無理……」


ノアが呟き、地面に座り込む。

その足元には、斧兵の血が滲んでいる。


「はぁ……っ、っつ……」

クラウスも肩で息をしながら、剣を地面につき立てて支えにしていた。


ルネも、ラシエルと背中合わせに立ちながら魔法の準備を解く。


「まったく……心臓に悪いですね……」

「ほんと〜、全身だるい……休憩した〜い……」


煙と傷のにおいが立ち込める通路に、ようやく静寂が戻る。


ロークは空を見上げ、微かに笑った。


「……みんな、生きてるな……よかった……」


ボロボロのローク班――だが、確かに彼らは、この死地を突破した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ