第17話『砦の守り火』11
ロークの咆哮とともに、双剣が斬り裂く。
敵の隊長もそれに応じるように剣を振るい、再び激しい金属音が狭路に響く。
剣と剣がぶつかり、擦れ、押し合い――
二人の武器は互いの体を裂かんと、すれすれの距離で交錯を続けていた。
「っ……速い……!」
ノアが片膝をついたままその様子を見つめる。
すでに彼女の足にも深い切り傷が刻まれ、呼吸も荒い。
しかし、
「次っ……!」
ノアが低く息を吐き、斧兵との間合いを詰める。
足を引きずるように回り込み、低姿勢のまま――
「そこ!」
ガッ!
ノアの短剣が斧兵のふくらはぎへ突き刺さる。
体勢を崩した斧兵が呻いた次の瞬間――
クラウスの剣が重々しく振り下ろされ、斧兵の肩から深く入り込んだ。
叫びもなく、斧兵が崩れ落ちる。
その直後――
「うらぁ!!!」
ロークの双剣が、敵隊長の胴を左右から挟むように切り裂いた。
「っ……ぐ……」
隊長は一歩、二歩と下がったが――
ロークの最後の踏み込みが、その胸元へ深く短剣を突き刺す。
「これで……!」
振り抜かれた双剣が弧を描き、敵の剣が宙を舞う。
隊長は目を見開いたまま、前のめりに崩れ落ちた。
「はぁ……っ、終わった……か」
ロークは膝をつき、肩で荒く息をする。
その一方で――
「もうっ、氷鎌!」
ルネの氷魔法が、左の建物の魔法兵に襲いかかる。
「はぁはぁ、水槍!」
ラシエルの魔法が右の炎魔法を弾く。
そして次の瞬間――
魔法攻撃が止んだ。
魔法兵たちは、前衛の全滅を悟って逃走した。
通路に魔法が飛び交う気配は、ついに完全に消えた。
「……………追えませんからね」
最初に言葉を発したのはラシエルだった。
「……私も無理……」
ノアが呟き、地面に座り込む。
その足元には、斧兵の血が滲んでいる。
「はぁ……っ、っつ……」
クラウスも肩で息をしながら、剣を地面につき立てて支えにしていた。
ルネも、ラシエルと背中合わせに立ちながら魔法の準備を解く。
「まったく……心臓に悪いですね……」
「ほんと〜、全身だるい……休憩した〜い……」
煙と傷のにおいが立ち込める通路に、ようやく静寂が戻る。
ロークは空を見上げ、微かに笑った。
「……みんな、生きてるな……よかった……」
ボロボロのローク班――だが、確かに彼らは、この死地を突破した。




