第2話『剣を取る理由』5
「えっ……うん」
リリアナは全身怪我だらけだ。ガレンと会わなければ恐らく死んでいた。
「治すから少し動かないでね」
(え?)
リリアナは訳がわからず固まっている。
ミレイアは静かに手をかざした。
「癒しの風、風癒」
リリアナの全身を包み込むように、穏やかな風が吹いた。
その風は優しく傷口を撫で、血が止まり、痛みが和らいでいく。
「……すごい」
「戦うだけが魔法じゃないのよ」
ミレイアは微笑みながら手を下ろした。
「助けることもできる。だからこそ、私は魔法を学んだの。私は応急処置くらいしかできないけどね」
その言葉を聞いて、リリアナは真剣な顔になった。
「……ミレイア」
「何?」
「私はリリアナ。お願い……私に、魔法を教えてほしい」
ミレイアは少し驚いたように目を見開いた。
だが、すぐに静かに微笑む。
「どうして?」
「さっきの戦いで、私は何もできなかった。
ガレンや、あなたや、ハルドみたいに戦えなかった」
リリアナは拳を握りしめる。
「でも、もし私に魔法が使えたら……仲間を助けることも、敵を倒すこともできるようになるかもしれない」
「……なるほど」
ミレイアはしばらく考え込んだ後、ゆっくり頷いた。
「いいわ。あなたが本気で学ぶ気なら、私もそれなりに厳しくするけれど」
「それでも……やりたい」
リリアナの目に迷いはなかった。
「分かったわ」
ミレイアは静かに微笑んだ。
「じゃあ、魔法の基礎から教えてあげる」
リリアナは拳を強く握った。
「よろしくお願いします!」
こうして、リリアナの魔法修行が始まることとなった。