表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦場の紅蓮姫  作者: エル
ミルヴァン村編
73/247

第15話『軍の顔』2

「リリアナ。軍の“顔”って、誰だと思う?」


書類の束を前にしてうんざりしていたリリアナに、

ミレイアがふと問いかけた。


「え……将軍とか?」


「それもあるけど、最前線で見られるのは“小隊長”や“中隊長”よ。

あなたも、もうその一人」


 


リリアナは書きかけの申請書から顔を上げた。


「でも、私なんて……たった十人くらいの小隊でしょ?

ヴォルフみたいな中隊とは違うよ」


「違うのは“規模”だけ。

指揮官としての立場は、どちらもハウゼン将軍の指揮下で並んでいる。

あなたは、もう“部下”じゃない。部隊を預かる一人の指揮官よ」


 


その言葉に、リリアナは黙り込んだ。

ヴォルフと並ぶ、という現実に少しだけ身が引き締まる。


 


ミレイアは手元の地図を指しながら、静かに続ける。


「王国軍は、表向きは統一されてるけど……内部にはいくつかの“色”がある。

王直属の系統と、貴族派。

出世の仕方も、物資の優先順位も違う。時々、妙な緊張が走ることもある」


「……味方の中で?」


「ええ。

この砦にいるのは、王直属の部隊が中心だけど――

どこかであなたの昇格を面白く思わない人が出るかもしれない」


 


リリアナは思わず、机の上の部隊名簿を見つめた。

小隊の名前。

その下に並ぶ、仲間たちの名前。


(みんなで作った隊。やっと始まったばかりなのに……)


「……そんなことで敵になる人がいるなら、こっちはやることをやるだけだよ。

隊のために決めたことなら、何があっても貫く」


 


ミレイアの目がやわらかくなる。


「それでいい。

無理に誰かと比べなくていいの。

あなたは“小隊のリーダー”。

まずは、その隊を守ること。

その積み重ねが、指揮官としての信頼になる」


 


リリアナは深く頷いた。


「……わかった。

みんなと一緒に、少しずつ前に進むよ。

指揮官としても、ちゃんと」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ