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戦場の紅蓮姫  作者: エル
ミルヴァン村編
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第14話・番外(ある日の訓練後)

訓練がひと段落し、武具を手入れしていたリリアナに、ミレイアがふと声をかけた。


「リリアナ。少し気になってるかもしれないけど――杖を持つかどうかって、実は結構意味があるのよ」


「えっ……ああ、うん。たしかにマリアとラシエルは杖持ってるけど、私やセリスたちは持ってないよね。あれって、魔力の差なの?」


「違うわ。魔力量というより、魔法の“使い方”と“性質”の違いね。詳しく説明するわ」


ミレイアは手元の木の枝を杖に見立てて、簡単な図を描きながら言った。


---


■ リリアナ(炎属性・剣併用)


「リリアナ、あなたの場合は特殊。

魔力量が異常に多い上に、火の属性が“爆発・広がる”タイプだから、杖で制御するより手の感覚で直接放つ方が安定するのよ」


「なるほど……たしかに、剣を使うときも、炎を“持つ”感じで動いてる」


「そう。それに剣との併用が前提だから、杖を持つと戦いにくくなるのもあるわね」


---


■ セリス(雷属性・高火力)


「セリスは雷――直線・貫通・一撃が主軸。

一点に強く撃ち抜く系統の魔法だから、手で放つ方が早くて精密なの。

あの子の“天織あまおり”みたいな極大魔法も、むしろ杖があると制御できないくらい」


「そういえば、両手を前に出して雷を撃つとき、ほんとに自然だった……」


「セリスは感覚派。魔法を“導く”って考え方をしてるのよ。杖じゃなくて、自分の手で“雷と話す”感覚ね」


---


■ ルネ(氷属性・広範囲制御)


「ジークは氷。範囲系や滑り・視界妨害のような“環境干渉”が得意なの。

だから杖を使ってもいいんだけど……あの子、自由に動きながら魔法を流すから、杖が邪魔になるのよね」


「なんか、ジークっていつも手がフワフワしてるもんね」


「ええ、あれでちゃんと“氷の流れ”を作ってるのよ。妙に器用な子」


---


■ ミレイア(風属性+軽度治癒)


「私は風と治癒の両方を使うけど、風魔法は基本的に“流れと空間の支配”が主軸。

つまり、体全体で“空気を操る”ように動く必要があるから、杖は邪魔になるの。

治癒もできるけど、私は補助程度だから、杖なしでも問題ない」


---


■ マリア(治癒特化)


「マリアは杖を必要とする代表格ね。

命の糸を縫うような細やかな制御が必要だから、魔力の流れを安定させるために杖が必要なの。

あと、精神集中が難しいから、杖が“精神的な支え”にもなってるわね」


「マリアの回復って、触れただけで痛みが引く感じだった」


「治癒魔法って、本来は難しいのよ。回復量だけじゃなくて、回復対象の状態を読み取る力も要るから」


---


■ ラシエル(水属性・精密操作)


「ラシエルは精密な水操作が得意。

特に“細かく形を変える”とか“敵の動きを封じる”系の魔法が多い。

その分、細い流れや一点集中の威力を制御するために、杖を使ってるの」


「確かに、ラシエルって水を槍みたいに変形させたりしてた」


「ええ。あと……あの子は魔法を得意とする貴族の家系って話よ。

杖を持つのが“家柄の誇り”って意味もあるのかもしれないわね」


---


ミレイアは静かに言葉を締めくくった。


「要するに、“杖を持ってる=魔力が弱い”わけじゃないの。

それぞれの“魔法の向き合い方”と“自分のスタイル”に合ってるかどうか。」


リリアナが自分の手を見つめる。


「つまり杖は魔力の安定化、魔力を一定の流れにさせたり、

誤作動や暴走を防いで、精密操作をするための補助的な道具なの。

細かく考えながら魔力を操作する人が好んで使う傾向にあるわね。

リリアナ、あなたもそのままでいい。あなたの炎は、手で放つのが一番強い」


リリアナはしばらく黙ってから、小さく頷いた。


「……ありがとう。なんか、ちょっと自信出た」



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